19世紀半ばより常に時計界のトップに君臨し続ける別格ブランド、パテック フィリップ。時計フリークが最後に行き着く高みと、崇敬の念を込めて呼ばれるこの世界最高峰のウオッチブランドは、時計に情熱を注いだ2人の人物によって創設された。 最初に礎を築いたのはボーランドからの亡命貴族、アントワーヌ・ド・パテック。彼は、帝政ロシアの圧制下にあった祖国ポーランドから、スイス時計産業の中心地であるジュネーブへと逃れる。そこで遭遇した地場産業の時計に興味を持ち、また時計師のフランソワ・チャペックとの出会いをきっかけにして、1839年に時計会社を設立する。 同社は順調に業績を伸ばしていくのだが、アントワーヌ・ド・パテックは、時計製造に対してさらなる可能性を求めていた。ちょうどその頃、フランスのパリで開かれていた万国博覧会を訪れた彼は、世界初のリューズ巻き式懐中時計を見つけて、大きな衝撃を受ける。 この時計を製作した人物こそ、時計師のジャン-アドレアン・フィリップ。アントワーヌ・ド・パテックは、フランソワ・チャペックの後任に彼を迎え入れる。この2人の出会いこそが、’46年の独立分針、’48年のフリーゼンマイなどの新機構開発に繋がっていくのだった。そして、ロンドン万博で金メダル受賞した1851年、現在の「パテック フィリップ」へと社名を変更したのである。 その後、パテック フィリップ社は、’89年に初の永久カレンダー機構を開発してから、複雑機構にも積極的に取り組み、なかでも1927年の「グレーブス・ウォッチ」は、24もの複雑機構を搭載する歴史的なコンプリケーションウォッチとして高い評価を得る。 さらに、1932年には現代もなお「ドレスウオッチのお手本」と称される、カラトラバを発表。腕時計の分野においても、確固たる地位を築き上げた。 こうして時計界を牽引する立場に立ったパテック フィリップは、21世紀に入ってからもシンプルウォッチからコンプリケーションまで数多くの佳作を手掛け続ける。スイス時計界の遺産を後世に伝えるべく伝統技術を継承するほか、さらに新たな可能性を自ら切り開くべく新技術・新素材の開発にも積極的にチェレンジしている。 【創業年】1839年 【創業地】スイス、ジュネーブ 【主なシリーズ名】カラトラバ、ゴンドーロ、グランド・コンプ...
PATEK PHILIPPE
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップ世界中どこでも現地時刻を音で知らせるまったく独創的なミニット・リピーターついにワールドタイムとミニット・リピーターの両機能がパテック フィリップによって統合された。これまでのミニット・リピーターは、あらかじめリュウズで合わせたホームタイム(出発地の時刻)しか鳴らすことができなかった。しかし、このモデルはタイムゾーンを変更した先のローカルタイムを鳴らすことができるのだ。Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)12時位置に表示された都市の時刻を音で知らせるこの素晴らしく美しく、希少で、価値がある腕時計を、実際に海外旅行時に持ち運ぶかはともかくとして(なんとゴージャズ!)、ミニット・リピーター機能がまたひとつ進化を遂げました。ワールドタイム機能と連動して、世界中どこにいても、現地時刻を音で知らせてくれるのです。しかもその音色が、ひと際、力強く、鮮明なものとなっています。理由は、2本のゴング(高音と低音)がムーブメ...
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップカジュアル・シックのコンテンポラリーなニューカラーSSケースにパヴェダイヤをあしらった「アクアノート・ルーチェ」は、2005年に誕生し、これまでさまざまなカラーバリエーションを生み出してきたが、2018年の新色は「ミスティー・ブルー」。グレートーンを帯びたブルーは、程よく彩度が抑えられ、現行ラインナップのなかでもひと際、大人びた表情に仕上がっている。Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)品のあるスポーティルックは、意外とありそうでないドレスウォッチだと大げさで、直球ダイバーズだとカジュアルすぎる。その落としどころで、時計ブランドはしのぎを削っています。これは本当に難しいところで、最も均整が取れているのはどれ? と、彼女に質問されても、なかなか簡単には応えられません。そんななかで、「アクアノート・ルーチェ」は、常に筆頭候補に上がるシリーズだと思います。老舗和菓子屋が作るケーキ、みたいに、スポーティルックでも...
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップトリプル・コンプリケーションに初のローズゴールドモデルがラインナップミニット・リピーター、クロノグラフ、永久カレンダーを搭載するRef.5208は、2011年に誕生。これまではPtケースにアントラサイト・ソレイユ・ダイアルの組み合わせだったが、このモデルが製造終了となり、代わりに18KRGケース×エボニー・ブラック・ソレイユダイアルの新仕様が登場した。Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)鳴り物人気をよそに、着実にモデル拡充を遂げる昨今、ミニット・リピーターがトレンドアイテムとなっています。まるで10年前のトゥールビヨン流行のような兆しが、今度はミニット・リピーターに見え隠れしているのです。しかし、このモデルはそうした流行訴求とは異なり、3大コンプリケーションをいかに実用的に、リアルな存在とするかで正統進化を遂げたもの。超絶機構を実用アイテムとして日常に使用するかはオーナーの自由として、あくまで実用性にこ...
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップラウンドとレクタンギュラー、双方の旨味を示す黄金率から生まれた不朽のフォルム(1)1968年に誕生した「ゴールデン・エリプス」は、今年、その誕生から50年を迎えることとなった。パテック フィリップではゴールデン・エリプスのアニバーサリーイヤーを祝すため、ふたつの新作を2018年のコレクションにラインナップ。なかでも注目は、レギュラーモデルとして登場した写真上のジャンボサイズモデルである。Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)気になる丸み。シンプルなのに癖があるそう、このモデル、非常にシンプルな形状をしているのに、なぜか気になるんですよ。スペックリッチな饒舌さをひけらかさない佇まいが、かえって潔さを感じます。薄型で2針のドレスウォッチゆえに、スーツやジャケットスタイルは当たり前に合いますが、謎の丸みが個性となって、カジュアルにも合わせたくなります。ちなみに“謎”とは最大の褒め言葉です。だって、そうじゃありま...
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップミニット・リピーター、トゥールビヨン、永久カレンダーを、わずか9.33mm厚のムーブメントに集約ミニット・リピーター、トゥールビヨン、瞬時日送り式窓表示永久カレンダーをともに搭載した現行コレクション唯一の複雑時計である。このモデルの登場により、既存の3タイプ(18KWGケース×カッパーダイアル、18KRGケース×ブラックダイアル、Ptケース×ブラウンダイアル)は製造終了となる。Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)ブルー・ソレイユ文字盤を備えたNEWフェイスブルー文字盤がトレンドとはいっても、こうしたグランド・コンプリケーションにまでブルー文字盤を載せてくるとは、さすがはパテック フィリップ。思いっ切り踏み切った行為です。超高額モデルともなれば、冒険せず定番カラーに落ち着くのが世の常。しかし、この美しい発色ならば、はなから殿堂入りかもしれません。太陽が降り注ぐ下の青空。その突き抜けた青さは、もはやエレガン...
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップ万年筆のインクのような、ニュアンスのある色彩を、PVD技術を用いて文字盤に表現曜日、日付、月を3つの表示窓で示す、年次カレンダー5205モデル。その18KWGバージョンが、2018年、新たに誕生したブルー・ブラック・グラデーション文字盤を搭載することになった。それにともない年次カレンダー18KWGケースのグレー文字盤、ブラック文字盤は製造終了となる。Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)これが、パテック フィリップのさらなる高みを目指す姿勢文字盤の外側に向かって色が濃くなり、18KWGとのカラーコントランストを明解なものとするブルー・ブラック・グラデーション文字盤。これまでのラッカー文字盤では出せなかった雰囲気です。そして、その効果は18KWGと合わせるのが一番。なぜなら純白の輝きを一層、引き立たせるからです。そこでパテック フィリップは18KWGモデルをこの1リファレンスに絞ることにしたのでしょう。これ...
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップ世界最高の時計をつくるために特集 パテック フィリップの不変と普遍を探る(1)「PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)」は、世界中の時計愛好家から羨望のまなざしを向けられ続けている。その理由のひとつが1839年の創業から今日に至るまで、製造したすべての時計の修理・修復を受けるというその姿勢にある。そしてもうひとつは意匠の継承である。パテック フィリップの変わることのない企業理念と、継承されるデザインを改めて見てみよう。Text by KOIZUMI Yoko創業からのすべての製品を修理・修復スイス・ジュネーブ市内にパテック フィリップが運営する時計博物館「パテック フィリップ・ミュージアム」がある。同社製品のみならず時計史を俯瞰できる所蔵品を多数揃えており、そのレベルの高さでマニア垂涎の存在となっている。その所蔵品のひとつに『顧客台帳』がある。ここには創業以来つくられた時計の、顧客名、販売年、材料費、担当者、価格といっ...
PATEK PHILIPPE|パテック フィリップスプリット秒針クロノグラフ 5370Pにみる特集 パテック フィリップが選ばれる理由「PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)」が放つ魅力とは、実用性と圧倒的に美しく丁寧なつくり、そして無理のない緻密な設計とデザインなのだろう。「スプリット秒針クロノグラフ5370P」を中心にその魅力に迫る。Text by OPENERS高度な信頼性と確かな精度を象徴するクロノグラフいの一番にその名が浮かぶラグジュアリーウォッチでありながら、他を凌駕する実用性をもつ「パテック フィリップ」の腕時計たち。「カラトラバ」などのシンプルなコレクションから、同社が世界ではじめて開発した「永久カレンダー」などのグランドコンプリケーション、さらに「ノーチラス」「アクアノート」といったスポーツエレガンスまで貫かれているそのクラフツマンシップは、愛好家からの絶大な信頼につながっている。パテック フィリップの時計たちは、圧倒的に美しく丁寧なつくりと実用性を...