JOHN LOBB|『ジョンロブ 丸の内店』店長の国本憲俊氏が指南するシューケアの心得
Fashion
2015年4月8日

JOHN LOBB|『ジョンロブ 丸の内店』店長の国本憲俊氏が指南するシューケアの心得


JOHN LOBB|ジョンロブ


こだわりをもった大人たちの密かな愉しみ


ジョンロブ流、シューケアの心得(1)


150年余の永い伝統と、職人の確かな技術に裏打ちされた最高級紳士靴メーカーJOHN LOBB(ジョンロブ)。その品質の高さと気品あふれる洗練されたスタイルは、目利きたちのため息を誘う美しさ。そんなブランドが靴づくりとおなじくこだわりつづけるのが、シューケアだ。最高の一足をより長く、よりよいコンディションで愉しめるよう開発されたアイテムが、ウェブショッピング「rumors」にて展開される。ここであらためて、シューケアの作法について、『ジョンロブ 丸の内店』店長の国本憲俊氏に指南いただこう。



Text by OPENERSPhoto by TAKADA Midzho





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いい状態に保つことで10年、またそれ以上履くことができる
――ジョンロブのシューズケアグッズは、ジョンロブのシューズ専用になりますか?






もちろん他ブランドさんの靴にも使用できますが、クリームはあまり変えない方がいいでしょう。おそらく成分などの問題だと思いますが、あれこれとちがうクリームを使用すると、ムラになったりする恐れがあります。

化粧品もそうですよね、毎日ちがうブランドのものを使っていたら肌が荒れてしまいます。シューケアは肌の手入れとおなじで、毎日のケア、そして月に一度はエステをするように、丁寧な手入れをしてあげるんです。




――シューケアはなぜ必要なのでしょう?

毎日のケアはホコリをとる程度でかまいませんが、月に一度はクリームを使って、じっくりと手入れをしてあげましょう。クリームを入れることで革もなじみやすく、やわらかくなって履き心地が変わってきますし、もちろん見た目にもツヤが出るなど、するのとしないのでは時間が経つほどに差が出てきます。

ジョンロブでは2種類、水溶性のデリケートクリームと、乳化性の色のついたクリームを使いますが、それぞれ役目が異なります。デリケートクリームは水分補給(保湿)、そして汚れをとる役目があります。もうひとつのクリームは、栄養である油分と補色の意味での色、あと革にツヤを出すロウが入っています。

人間の肌とおなじで、水分と油分が大事なんですね。クリームを入れ込まないと革はどんどん乾燥してしまい、とくにテンションのかかる部分がひび割れてきます。いずれはひび割れてくるものですが、手入れをしないとそれが早まってしまうんですね。ですからちゃんと手入れをしてあげて、アッパー部分をいい状態に保つことで10年、またそれ以上履いていただくことができるのです。

表面についたホコリをブラシでとり、最後にから拭きを


JOHN LOBB|毎日おこなうケア 01



――毎日おこなうケアはどういったものですか?

基本的には表面についたホコリをブラシでとり、最後にから拭きをしてあげましょう。デザインにパンチングがほどこしてあるものは穴のなかまで、またコバ部分はホコリがたまりやすいので、意識的に。頭の小さなウェルトブラシを使用することをお薦めします。

とくにコツというほどのものはありませんが、軽いタッチで、まんべんなくブラッシングしてあげてください。




JOHN LOBB|毎日おこなうケア 02



仕上げにシャイニンググローブで全体を磨くようにから拭きしておしまいです。靴をしまうさいは必ずシュートゥリーを入れてあげてください。シュートゥリーにはカタチを元にもどす役目と、水分を吸い出してあげるという大事な役割があります。履いたあとの靴は多少なりとも汗などの水分を吸いこみ、カタチが変わっています。ジョンロブの革は繊維が細かく絡み合っていますので、革自体が元のカタチに戻ろうとする性質が強く、そのまま置いておくと水分が抜け、乾燥するさいに革がそのカタチを覚えてしまうのです。



しっかり乾かしてから手入れをすることが重要


JOHN LOBB|毎日おこなうケア 03



――毎日のケアで気をつけるべき点はありますか?

あとはケースバイケースで、たとえば雨が降ったとき、状態がひどい場合は店舗にお持ちいただくこともありますが、そうでない限りはアッパーはもちろん、靴底も水分を吸っていますので、まず全体を拭いて、中に新聞紙などを詰め、下からも水分が逃げるようたてかけるように靴底を浮かせて置いて乾かします。そして完全に乾いてから、月に一度の手入れとおなじ工程をおこないます。



乾ききる前に、水を含んだ状態で油分のあるクリームなどを入れ込んでしまうと、水が閉じ込められ、場合によってはカビが生えたり、匂いが残ったりするので、しっかり乾かしてから手入れをすることが重要です。



JOHN LOBB|ジョンロブ


こだわりをもった大人たちの密かな愉しみ


ジョンロブ流、シューケアの心得(2)



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シワの部分はクリームがシワに入りこむよう、シワに沿って手を動かして




JOHN LOBB|月に一度の手入れ 01



――月に一度の手入れはどのように?

毎日のケアと同様にブラシで全体をブラッシングし、ホコリをとっていきます。そしてまずはデリケートクリームを。これは水分補給の役目になるのですが、ある程度汚れもとってくれます。カットソーでもシャツ生地でもいいのですが、指先にケバ立たない布を巻いて頂いて、デリケートクリームを薄く、本当に薄くで結構ですので指先にとり、全体に円を描くようにくるくると滑らせるように入れ込んでいきます。




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シワの部分はクリームがシワに入りこむよう、シワに沿って手を動かして。クリームは多くつけすぎる必要はないんです。人間の肌とおなじで、入り込む量は決まっているので、塗れば塗るだけ入り込んでいく、というわけではありません。逆に多く塗ってしまうと堆積してしまうんですね。経済的にももったいないですし、革にも必要ありませんので、本当に少量で結構です。クリームを全体に伸ばし、この状態で10分ほど置きます。その間、水分が中に染み込んでいき、また古いクリームや汚れが浮いてきます。10分ほど置いたらおなじ布の面を変えて、全体をから拭きします。



なるべく革に近い色を入れてあげるといいでしょう




JOHN LOBB|月に一度の手入れ 03



浮いてきた古いクリームや汚れを拭き取っていきます。から拭きはゴシゴシやる必要はありません。ここまで、慣れてしまえば置く時間も含め30分もかからないでしょう。

つぎは革に必要な油などの栄養分、あとは補色の意味での色を入れ込んでいきましょう。今回rumorsではブラック、ダークブラウン、ニュートラル、バーガンディを用意していますが、ニュートラルというのはオールマイティといいますか、どんな色にも使えます。ただ、経年変化で少しずつ色が褪せてきますので、なるべく革に近い色を入れてあげるといいでしょう。




JOHN LOBB|月に一度の手入れ 04



デリケートクリームとおなじように、クリームをほんの少し指にとって、円を描くように全体にくるくると。足りなくなったらまたほんの少し指にとって……あくまで感覚ですが、滑りが悪くなったと感じたらクリームを足してください。一度にとる量はマッチの頭くらいでいいしょう。それを何回かにわけて塗り込んでいきます。シワはシワに沿って入れ込んでいきます。

全体にクリームがいきわたったら、ここで必ずブラッシングをしてください。ゴシゴシする必要はありません。軽く、ハードブラシという豚毛のブラシを使って全体を。



布に色がつかなくなるまで拭いてください




JOHN LOBB|月に一度の手入れ 05



こうすることでパンチングの穴やステッチのキワといった細かい部分にまでクリームがまんべんなく、均一にいきわたるんですね。また余分なクリームがとれ、あとのカラ拭きも楽になります。さらにウェルトブラシにほんの少しクリームをつけて、コバの部分をブラッシングします。先ほども言いましたが、コバの部分にはホコリがたまりやすく、そのためクリームが入り込みずらく、乾燥しやすいんです。ブラッシングが終わったら、今度は時間を置く必要はありませんので、おなじ布の面を変えて、から拭きします。




JOHN LOBB|月に一度の手入れ 06



拭き方によって仕上がりが変わるということはありませんが、布に色がつかなくなるまで拭いてください。クリームが残ったままだと革が呼吸できませんし、パンツの裾にも色がついてしまいますので、よく拭いてください。靴を触って、サラサラしていればオーケイです。ベトつくような、滑りが悪い状態だとクリームが残っているということなので、から拭きをつづけましょう。クリームが堆積していくと、変に黒光りするというか、表面をコーティングしたような感じになり、見え方が変わってしまいますので注意してください。





JOHN LOBB|ジョンロブ


こだわりをもった大人たちの密かな愉しみ


ジョンロブ流、シューケアの心得(3)



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重ねれば重ねるほど光り、鏡面のようになっていきます

――ワックスはやはりした方がいいのでしょうか?



ワックスは必ずしなくてはいけない、というものではありませんが、靴がより美しく、セクシーに見えますよね。光らせる部分は全体的なバランスもありますが、基本的にはトウとヒール部分。前と後ろを光らせることで全体のバランスがすごくきれいに見えるということと、歩いているときにテンションがかかるような場所にワックスをすると、パラパラとはがれてきてしまうので、中に芯が入っているトウとヒール部分が適しているんですね。

ワックスは手入れの最後、または毎日出かける前にささっと。コツを覚えるまで時間がかかるので、最初は練習が必要です。僕らでもたまに失敗します(笑)。


JOHN LOBB|ワックス仕上げ 01



ワックスにはケバ立たたず、あまり折りのないつるっとしたシャツ生地がお薦めです。布を指に巻くさいはたるんでしわが入らないよう、ぴんと張って巻いてください。

ジョンロブのワックスは水を数滴垂らし、乳化させて使用します。つける量は本当に少量で構いません。指にワックスをとったらくるくると円を描くように塗り込んでいきます。革の凹凸感をなくし、光がまっすぐ反射する状況を作っていきますので、すぐには光りません。ワックスが残るような感覚がある場合は水を数滴混ぜて乳化させてあげます。



失敗したときは、一度ワックスを全部とり除いてあげる




JOHN LOBB|ワックス仕上げ 02



こうしてくるくると塗り込んでいくうちにだんだん光ってきます。そうしたらまた水を数滴たらして乳化させたワックスを指先に少量とり、おなじようにくるくると重ねていきます。重ねれば重ねるほど光り、鏡面のようになっていきます。

失敗したときは、表面が光らなかったり、あらたに重ねたワックスがすでにあるワックスを削ってしまい、はがれてきます。失敗したときは一度ワックスを全部とり除いてあげる必要があります。




JOHN LOBB|ワックス仕上げ 03



リムーバーと呼ばれるアルコールでとる場合もありますが、僕らの場合は手入れのさいとおなじようにデリケートクリームで丹念に時間をかけてとっています。まれにとれない場合はブラシで叩いてあげるとワックスが割れますので、ワックスをはがしてからデリケートクリームを使って完全に素肌を出してあげて、またイチからはじめます。

遊びのあるデザインの靴でしたらかなり光らせてもいいかもしれませんが、ドレッシーな靴をあまり光らせすぎると、上品さが少し損なわれてしまうことも。



ただ、ワックスは慣れてくると物足りなく感じて、エスカレートしていきますから注意してください(笑)。



JOHN LOBB|ジョンロブ


こだわりをもった大人たちの密かな愉しみ


ジョンロブ流、シューケアの心得(4)



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クリームの色を変えることで自分だけの一足を育てる方も

――クリームの色はどう選べばいいでしょう?



「ダークブラウン」「バーガンディ」など、クリームの名前は基本的にジョンロブのレザーのカラー名です。当然ながらそれに合わせて作っていますので、その革の色味を参考に考えていただければと思います。


JOHN LOBB|シューケアグッズ使用の注意点 01



茶色のクリームには少し赤身の入った茶ですとか、微妙な色あいのものもありますが、 “ダークブラウン”“ミディアム”“ライトブラウン”というふうに、大きくわけて考えていただいて結構です。クリームを使うことで変色するわけではありませんので、たとえば明るい茶色の革にダークブラウンのクリームを入れ込むと、表面が少し濃くなって雰囲気が変わります。お客さまによってはシューズとクリームの色をわざと変えることでニュアンスを生み出し、自分だけの一足を育てることを愉しまれる方もいます。



ホコリを取るブラシとクリームを入れるブラシは必ずわけて




JOHN LOBB|シューケアグッズ使用の注意点 02



――ブラシは使いわけるべき?

ホコリをとったり、クリームを入れ込んだり、スエードの靴のホコリとりや、毛あしを揃えるときは豚毛のハードブラシを使います。そしてフィニッシングのさいに使用するのが山羊毛のソフトブラシです。ハードブラシでも構わないのですが、やわらかな山羊毛のブラシの使用感を好まれる方も多いですね。どちらを使っても仕上がりにちがいはありません。また、フィニッシングにはムートンのシャイニンググローブもお薦めです。




JOHN LOBB|シューケアアグッズ使用の注意点 03



自然の油分がふくまれているので、お出かけ前にからぶきするだけできれいなツヤが出せますし、クルクルと丸めてコンパクトにまとめられるので、出張や旅行にも気軽におもちいただける便利グッズです。

注意すべきは、ホコリを取るさいに使用するブラシとクリームを入れるさいに使用するブラシは必ずわけてください。一緒にしてしまうと使うとクリームもホコリも革に堆積してしまいます。また、色もわけたほうがいいでしょう。といっても、おおまかに黒と茶色とにわけていただければ大丈夫です。



わざわざ茶色を濃淡でわける必要はありません。ニュートラルカラーは茶色用のブラシで基本的には大丈夫ですが、白い靴や肌色のようなベージュなど、薄い色味の靴に使用する場合は、ブラシに茶色のクリームが残っていますから、それがついてしまう恐れがありますので、専用のブラシを用意していただいた方がいいでしょう。

――ありがとうございました。



ジョン ロブ ジャパン
Tel. 03-6267-6010
http://www.johnlobb.com/

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