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2020年6月26日
本気のものづくりで挑む、若槻千夏の新ブランドWCJ
本気のものづくりで挑む、若槻千夏の新ブランドWCJ
20代半ばで『WC』を立ち上げ、すぐさま人気ブランドへと成長させたタレントの若槻千夏。その後、契約満了によりデザイナー業からは離れていたが、結婚や産休を経て、『WCJ』という新たなブランドを自己資本でスタートさせた。生き馬の目を抜く芸能界で、2度の休業を経てもすぐに最前線へとカムバックしている才女。彼女はいま、ファッションビジネスにどんな眼差しを注いでいるのだろうか。
Text by TOMIYAMA Eizaburo | Photographs by SATO Yuki
バッグを中心に機能性を重視
ーー新たなブランド「WCJ」を2019年よりスタートしましたが、そのきっかけを教えてください。
「いつかまたブランドをやりたいとは思っていたんです。その後、結婚したり子どもを授かったりするなかで、これまでとは違う視点が生まれたことが大きいですね。『小さい子どもがいるママでも使いやすい』など、素材やデザインだけでなく、機能性にもこだわったバッグを作りたいと思ったんです」
ーーアパレルもやられていますが、あくまでもバッグが中心なんですね。
「そうですね、7:3でバッグのほうが多いです」
ーーレディスのバッグは世の中にたくさんありますが、それでもお気に入りを探すのは難しいんですね。
「かわいいバッグはたくさんありますけど、『外見』だけのものが多いんですよ。『映える』だけでなく、映えたあとに『本当に使いやすいよね!』というバッグを作り続けたくて」
ーーそれはメンズに近い考えかもしれないですね。
「そうなんです、だから参考になるのはいつもメンズブランドだったりします。男性の商品って、リュックに充電器が付いていたりするじゃないですか(笑)。この前、小銭が入るようにデニムジャケットにインポケットを付けたんです。それだけで、女の子からは『すごい発明家!』とかコメントを頂くのですが、元々はメンズ商品の便利さを参考にしているんです(笑)
ーーそう言われてみると、レディスは機能面が弱いですよね。ちなみに、現在の主な客層はどのあたりですか?
「『WC』時代のお客様が私と同じようにママになったり、30代になったりして、落ち着いてはきたけど小洒落たパンチのあるものが欲しいという感じ。残りの半分は新規のお客様ですね」
ーー『WCJ』は価格を抑えた展開をされていますよね。
「子どもにお金をかけることが多くなるママたちにとって、日常使いのバッグにどれくらいお金をかけられるかなと考えたとき、自分なら『1万円を超えるのはイヤだな』という思いがあったんですよね。でも、それ以上のクオリティになるよう頑張っています」
売れる商品しか作りたくない
ーータレントとしても活躍されているなかで、ものづくりというのは若槻さんにとってどのような位置付けにあるのでしょう。
「デザインに苦しんだことは一度もなくて、楽しみながらやっています。子どもの頃から、常に「なんでこうなんだろう?」っていう疑問が湧くクセがあって。それを解決できるものがものづくりなんです。ハイブランドの服を見ても、『なんでこうしなかったんだろう?』とか・・・・。『オマエ誰だよ!』って感じですけど(笑)。そうやって、『私ならこう作るのに』を実現させている感じです」
ーー商品を見ていると、若槻さんが本当に使っていそうなデザインが多い気がします。それくらい「自分の色」を出していると考えていいですか?
「う~ん、出しているつもりはないんです。でも、売れる商品しか作りたくないので。『これくらいでいい』というものを10型出すなら、『絶対にコレだ』というのを1型に絞りたい。そうすると、『絶対にコレ』というのは自分の好きなものになってしまうんです」
ーーでも、自分が好きなモノを追い求めると、売れる商品とかけ離れてしまうことは多々ありますよね?
「私はそこまでクリエーターになれないんです。自分のやりたいことはありますけど、お金に変わらなかったすぐに諦めて、違う道を考えるんです」
ーーおぉ、でもそこはすごく重要なポイントですよね。できそうで、意外にできない。
「歩合制でタレントを続けてきたゆえの、病気かもしれないですね(笑)。売り上げ = 自分の結果だと思っているので」
ーーあははは。
「芯のあるデザイナーさんであれば、売れなくても『世の中がついてきていない』『まだこれからだ』と、数年後を見ると思うんです。でも、私は目の前の反応だけを見ているので。そういう意味では、デザイナーよりも商売人の意識のほうが今は勝っているのかもしれません。
ーーその反応というのはもちろん「いいね」や「コメント」の数ではなく、売り上げということですよね。
「『いいね』や『コメント』はタダでできるので、気軽に反応してくれるんですよ。それと、一回きりのコラボならみんな買ってくれると思うんです。でも、ブランドを長く続けようとするならば、リピーターが増えるような、いいものを作らないといけない。『いいね』や『コメント』が多くても、商売につながらなければ違うと思うんです」
ーーそれは真実ですよね。一方で、そういう話を聞いたファンの人たちは、ショックを受けたりしないですかね。
「それを言い切れるくらい、満足して使っていただけるものを作っているので。ひとつの商品を作るのにものすごく考えていますし、試行錯誤していて、ひとつひとつに愛がありますから大丈夫です」
クリエーターに対しての憧れは強いが自分はそうではない
ーーご自身がプライベートで買い物をされるときは、どういう視点でチェックしていますか?
「リサーチもかねて、ハイブランドはすべて見ています。やっぱり、流行りのベースはそこから生まれると思うので。あと、「これ、誰が買うんだろう?」っていうぶっ飛んだものを買いますね。そういうデザイナーが減ってほしくないし、ずっと作り続けてほしいから。そこはいちファンであり続けたいと思っています。アレッサンドロ・ミケーレやジェレミー・スコット、ほかにもマーク・ジェイコブスは昔から好きですし、基本的にエッジの効いた人が好きなんですよ。彼らから影響を受けて、いかに一般に落とし込めるかをデザインしているつもりなんです」
ーークリエーターに対するリスペクトが強いんですね。
「『あそこまでぶっ飛んだらかっこいいよな』という、憧れはずっとあるんです。でも、目標はそこではないので、自分はちょうどいいところに落とし込もうと。我慢しているわけじゃなくて」
ーーそのバランス感覚は天性のものかも知れないですね。若槻さんから見て、『WC』をやっていた約10年前と現在で、消費者の傾向はどう変わったと思いますか?
「タレントブランドだから売れる時代ではなくなりましたね。また、芸能人が着れば売れる時代でもない。いろんなものがあり過ぎて目が肥えているというか、本当に商品を見ている気がします。また、あり過ぎるからこそ絞っているというか。だからこそ、彼女たちに気に入られるもの作りを続けていきたいし、そこはブレずにやっていきたいと思います」
ーーいまの目標はどこにあるのでしょうか?
「『何か使いやすいバッグない?』っていう会話のときに、『WCJのサイト見てみな』という人が増えることですかね。最近は流行りがなくなったというか、流行りがあっても乗っかる人が少なくなったというか。それよりも、『アレといえばコレ』みたいにシンプルな人が増えているので、『バッグに迷っているならWCJ』となれば嬉しいですね」
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