Levi’s® Vintage Clothing|「オレンジタブ」の復活イベントをLA現地取材
FASHION / FEATURES
2015年1月19日

Levi’s® Vintage Clothing|「オレンジタブ」の復活イベントをLA現地取材

Levi’s® Vintage Clothing|リーバイス® ビンテージ クロージング

LAでのローンチイベントを現地取材!

「オレンジタブ」が復活!(1)

去る8月17日、米カリフォルニア州ロサンゼルス西部のトパンガ・キャニオンにて、「オレンジタブ」のローンチパーティが行われた。リーバイス®のオレンジタブとは、1960~70年代にかけて登場した当時の若者向けライン。2013年秋冬、そのオレンジタブがリーバイス® ビンテージ クロージングから復刻したのである。仕掛け人であるクリエイティブ・ディレクターのマイルス・ジョンソンのインタビューと、そのパーティの模様をお届けする。現地で取材に当たったのは、ヴィンテージカルチャーの第一人者、田中凜太郎氏だ。

Photographs by INOUE MasaoText by TANAKA Rintarou

「オレンジタブ」ローンチ、背景の考察

2010年代に入ってから、世界がさらに大きく変わりだしたように感じます。なかでも大きな変化は20代のiPhone世代が社会の中核を担い始め、多くの企業が彼らからいかに“Empathy(共感)”を得られるかを、マーケティング戦略の主軸にシフトしていることです。

「リーバイス® ビンテージ クロージングが1970年代のオレンジタブを復活させる!」――このニュースはまさに、iPhone世代に向けたヴィンテージ・ファッション・リバイバルの新しい渦といえるかもしれません。なぜなら1970年代にオレンジタブを着た若者たち(=ベビーブーマー)の子供たちがすでに成人し、ファッションマーケットの世界においても中核を担おうとしているからです。1980年代以降に生まれた彼らがVintageについても見識があるのは、インターネットに加え、親からの影響が大きいのではないでしょうか。

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はたして“デニム業界のキング”リーバイス®が、なぜこのタイミングで今から40年前の、1972年頃のアメリカにイメージを重ね合わせ、新しいムーヴメントを仕掛けようとしているのか? その全容が去る8月16日、プレス向けに公表されました。場所は(カリフォルニア州)ハリウッドの丘に建つ築1920年代のオールドハウス、通称「Haus」(普段はリーバイス社がショールルームとして使用)。さっそく今回の「オレンジタブ復活!」プロジェクトに携わったクリエィティヴ・ディレクター、マイルス・ジョンソン氏に話をききました。

「“Made in USA”のラベルは大きな成果でした」

――まず『リーバイス® ビンテージ クロージング』というブランドは、アメリカ・サンフランシスコ本社のプロジェクトでありながら、オランダ・アムステルダムにメインオフィスを置いています。さらにあなたはイギリス人。世界のデニム業界は21世紀に入って急速に、ワールドワイドなネットワークがものすごく密になった気がします。

マイルス・ジョンソン(以下、MJ)「たしかにヨーロッパのファッション業界では、近年ほかの国(のブランド)に勤務する人が増えています。例えばアムステルダムはGスターなどが大成功した過去10年、ヨーロッパの一大デニム・ビジネスの発信源として脚光を浴びています。私の場合、平日はアムステルダムで働き、金曜日の夜は飛行機でイギリス中部のバーミンガムに戻ります。飛行機で1時間弱ですから、たいした距離ではありません。そこから1時間弱クルマでドライブした田舎町が私の地元です。私のようなライフスタイルのヨーロッパ人はすでに同業者で結構いますよ」

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――ヨーロッパでまた個性の違ったデニムファッションが盛り上がっている情報は、近年、日本にもどんどん届いています。ちなみにヨーロッパ人から見るヴィンテージやリーバイス®のイメージは、我々日本人と少し違うんですか?

MJ「いや、日本人の熱狂的なデニムファンたちと熱い気持ちはそんなに変わらないと思いますよ。ヨーロッパの若者だって“Made in USA”には弱いんですから(笑)。日本人でヴィンテージが大好きなあなたたちなら、その気持ちはよくわかるでしょう」

――イギリスでは第二次世界後間もなくにアメリカから救援物資として送られてきた中古のリーバイス501®XXがマーケットで売られるようになり、アメリカ以外でいち早く(古着の)リーバイス®が定着した国というイメージがあります。

MJ「例えば、私の子供の頃は父親のお古のリーバイス®を着ていたんです。いわゆるレッドタブの『501XX®』ですよ! しかし当時は父親のお古ということで、あまり『501®』が好きじゃなかったんですけどね。それから大人になってロンドンに行くようになって、『Flipper』という当時有名だった古着屋へ足繁く通うようになりました。そこでヴィンテージのことを学ぶようになったんです。その頃によく見かけたのが今回復活したオレンジタブです。当時は大半がデッドストックで、しかも安く売られていましたね(笑)。それを見つけた1980年代中期~後期のポスト・ニューウェーブ・バンド、例えばザ・キュアー(1978年に結成された英国出身のロックバンド)みたいなバンドが、オレンジタブのスーパースリムをよくはいていました」

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――そもそも「リーバイス® ビンテージ クロージング」はなぜオレンジタブをこのタイミングで復活させたのですか?

MJ「オレンジタブは1980年代に消滅し、30年近くマーケットから姿を消していました。つまり今の若い人たちは、オレンジタブを知らないんですよ! しかし彼らのライフスタイルを観察すると、なぜか1970年代のカルチャーが自然と身についています。つまりいまの若い人たちの空気感は、オレンジタブが流行った1970年代とよく似ている気がするんです。

そこで我々のチーム内でも『そろそろ復活させてもいい頃では』という声が上がりました。たしかに20代のiPhone世代が、ファッションマーケットの中核になりつつことも大きいと思います。彼らの体型ってすごくスリムじゃないですか。濃厚なインディゴ・ブルーのデニムよりも、1970年代のカリフォルニアで流行った、もっとカジュアルなデニムファションにトレンドが向いているような気がしますね。それがまさに、オレンジタブのラインではないかと思うんです」

――彼らの親たちがヒッピー世代ですので、幼少の頃から日常にヒッピー的な価値観やライフスタイルが身近に浸透しているでしょう。しかし今回の新作ジーンズ5モデル(うちメンズが3デザイン、レディスが2デザイン)のなかで『606』というスーパースリムをスタッフの人たちが愛用している印象を受けました。我々、同世代の記憶では、オレンジタブといえばカリフォルニアのヒッピー&ウエスタンなイメージがあります。そしてインディゴの色落ちがもっと淡いブルーでした。

MJ「たしかに我々のオレンジタブに対するイメージといえば、メンズはブーツカット、レディスならベルボトムを古着屋でよく見かけました。ただ歴史を辿ると、スーパースリムの方がベルボトムよりも数年早く発売されているんです。1960年代は大学生の間で501®をすこしスリムにはく、トラッド系ジーンズが流行りました。1960年代にオレンジタブが登場した際、スーパースリムが先に発売されたのは、その流れを受けたものだったと思います。今回のキャンペーンのコンセプトとなった1972年は、まさにそのオレンジタブがマスに浸透し、ベルボトムやブーツカットが一番売れた時期でした」

――はヴィンテージマニアの間でも見逃されがちな品番でした。しかしロールアップしてはくと、なぜか今のスタイリングにぴったりです。

MJ「近年、若い人たちの間でスーパースリムなジーンズが定着しましたからね。特に裾をまくってはくスタイリングには、スーパースリムの『606』がぴったりハマりますね。自分でも今回のプロジェクトを担当して、オレンジタブの意外性や魅力をたくさん発見しました。リーバイス®は歴史の長いブランドなので、我々が見逃してきた面白いアイテムがまだたくさんあるんでしょうね」

――しかも今回復刻されたオレンジタブは、すべて“Made in USA”なんですね!

MJ「まずデニムはコーンミルズ社の国産デニムを使用しました。そして縫製工場ですが、アメリカ国内は長年にわたる空洞化で、アメリカで作りたくても技術的、もしくは価格の面で作れないものがたくさんあります。ただ1970年代のオレンジタブは、そもそも従来のレットタブに対して生産工程を減らすことでコストダウンし、若者向けの、低めの価格に設定にしたという歴史があります。当時“ライン7”と呼んでいた縫製ラインですね。例えば、『501®』などにあるリベットがオレンジタブのアイテムでは省略されています。そのため、今回の復刻にあたり、アメリカの縫製工場でも普通に生産できることがわかったんです。“Made in USA”のラベルをつけてオレンジタブを復活できたことは、大きな成果だったと思います」

――最後に、今回の復活にあたって、昔の資料をいろいろと探したと思うのですが、1970年代に一番オレンジタブが似合っていたロックミュージシャンは誰でしたか?

MJ「それはやはりブルース・スプリングスティーンでしょう。彼は『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』のレコードジャケットのイメージで、ヴィンテージの『501®XX』をはいていた印象があります。しかし1970年代の初期のステージ写真を見ると、よくオレンジタブのリーバイス®を着ているんですよ。ぜひ、注意深く昔の写真をチェックしてみてください。その過程で、きっとオレンジタブの意外な魅力も発見できますよ」


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www.levisvintageclothing.com

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Tel. 03-6418-5501

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LAでのローンチイベントを現地取材!

「オレンジタブ」が復活!(2)

Photographs by INOUE MasaoText by TANAKA Rintarou

トパンガ・キャニオンでミニ・ウッドストックを開催!?

翌日8月17日は、ハリウッドから場所を変えて、トパンガ・キャニオンにマイクロバスで大移動。舗装道路が終わり砂利道を数分歩くと……渓谷に囲まれた40エーカー(約16万平方メートル)の大農場が出現! 実はここが今回のシークレットパーティの会場で、中央に組まれたステージではすでにバンド演奏がスタートしていました。

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サンタモニカとマリブビーチに挟まれたトパンガ・キャニオンは、近年でこそ高級住宅街として有名になりましたが、1970年代は「南カリフォルニアのヒッピーのメッカ」として、たくさんのコミューンがあったそうです。今でもその面影が少し残っており、「1972年頃のカリフォルニアでよく開かれていたシークレットパーティを、リアルに再現する」という、リーバイス®・チームのリサーチの綿密さや気合いにまず感心しました。

さっそく、今回のパーティ「Party In Your Pants」のプロモーションを企画した、マーケティング・ディレクターのジョシュア・キャッツ氏に話を聞いてみました。

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――今回のイベントはずいぶんと手が込んでいますね。

ジョッシュア・キャッツ氏(以下、JK)「うまくパロディしてるでしょ!?(笑)」

――ここまで大きなプロモーションとなると、仕込みにも時間がかかったでしょう。

JK「半年前後かな。フェンダーやジャックダニエルといったスポンサーがスムーズに決まって、短い時間でなんとか準備ができた感じです」

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――ご出身は(南カリフォルニアの)オレンジカウンティで、リーバイス®の前は某有名ビーチブランドで働いていたそうですね。

JK「もう昔の話ですけど、僕は若い時に地元の良い先輩たち、例えば(クイックシルバーの)ボブ・マックナイトみたいな師匠に、たくさん恵まれました。そして小さなビーチブランドが株式を公開するまで、成功への長いプロセスを現場でリアルに体験することができました。その後、リーバイス®へ移ったんです。僕はどうも大きい会社の方が向いているみたいで、リーバイス®にいると世界規模でネットワークが広がっていきます。東京にも出張に行けるしね!」

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――たしかに今回のパーティは、リーバイス®じゃないとできないスケール感があります。ここだけの話、けっこうお金がかかっていますね!

JK「(笑)。近年はインターネットや携帯電話の普及によって、ファッションブランドのプロモーション戦略も大きく変わりつつあります。つまり同じプロモーション費をかけるなら今回の『Party In Your Pants』のように、ファンの人たちと一緒にカルチャーを盛り上げていくような企画が、もっとあっていいと思いますね。実際にリーバイス®全体の規模で考えると、今回のプロジェクトは決して大きい部類ではありません。例えば来月は、レッドタブの方でニューヨークからサンフランシスコまで列車を貸し切る、大陸横断プロモーションを企画しています。そっちはもっと規模が大きいです」

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――「リーバイス® ビンテージ クロージング」というブランドは、歴史を重視しながらも、ファッションをカルチャーの視点からアプローチしている気がします。しかもよりマスの若者たちを意識しているというか……。

JK「それもやはりリーバイス®が大きな会社だからでしょう。マニアックなことをやる場 合でも、マスを見ることが要求されます。その分、他のデニムブランドとは少し違う方向からアプローチできる。まさに今回のオレンジタブのプロモーションがよい例です。これもリーバイス®だからできる、楽しさですね」

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陽が暮れ始めた夕方5時頃には、1970年代ファッションを纏ったリーバイス®のファンが800人以上集まり、盛り上がりはピークに。トパンガ・キャニオンが夕陽で真っ赤に染まり、会場全体がすっかり1972年のアメリカにタイムトリップしたような気分になってきました。

改めて2日間を振り返ると、まず、アメリカ、ヨーロッパ、日本の国際チームによる、巨大なプロジェクトへの緻密な取り組みに感動。たしかにかに「リーバイス®だからできる」キャンペーンではありましたが、ここまでチームワークが整っていたイベントも近年珍しかったように思えます。今後も彼らが仕掛ける“ヴィンテージ・ムーヴメント”が、世界中の若者にどんどん広がっていくことを期待したいですね。

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