CAR /
FEATURES
2020年4月16日
いま乗ってみたい、メルセデス・ベンツのクラシックス10選|Mercedes-Benz
Mercedes-Benz|メルセデス・ベンツ
いま乗ってみたい、メルセデス・ベンツのクラシックス10選
CASE(Connected / Autonomous / Shared / Electric)という言葉が象徴するように、自動車をとりまく世界が100年に1度の大変革期にあるといわれる昨今。そんな時代だからこそ、あえて後ろを振り返り、若かりし頃に憧れた個性豊かな“ちょっと旧いクルマ”に注目しているクルマ好きも多いのではないか。ここでは、モータージャーナリストの小川フミオ氏が、いま乗ってみたいと考えるメルセデス・ベンツのクラシックモデル10台を紹介する。
Text by OGAWA Fumio
メルセデス・ベンツは日本におけるクラシックカーの王者
クラシックカーとはなにか。定義は定まっていないけれど、だいたい20年から45年前までのクルマを指すことが多い。その一方、年齢で判断することも。たとえば、もの心ついたとき、まだ運転免許がなくて持てなかった憧れのクルマを、マイクラシックス(クラシックカー)と呼んでもおかしくない。
日本だとクラシックカーの王者はメルセデス・ベンツだ。と、私は思っている。理由は、車種のバリエーションがそれなりに多くて、ファン層が広くて厚いところにある。
なので、これこそがクラシック・メルセデスの頂点だ、と断言するのはむずかしい。たとえば、スタイリングと雰囲気からいえば、1963年発表のSL(コード名W113)や71年の後継モデル(R107)はいまでも充分魅力的だ。
かつて、「英国人は、靴とメルセデスは古いほうがいいと言う」と聞いたことがある。ピカピカのものはカッコ悪いそうだ。むかしからずっとメルセデス・ベンツに乗っています、というスタイルこそよしとされる。ジョンロブやエドワードグリーンの靴だって、たしかにそうだ。長いこと手入れしながら履くのがよしとされる。
当然、メルセデス・ベンツは、耐久性に富んでいる。たとえば、コンパクトメルセデスと呼ばれた76年発表の「W123」(コード名)の想定走行距離は100万キロ以上だった。いまでも現役の車両が多いわけだ。
ただし、古いメルセデス・ベンツを持つためには、わりとひんぱんなメインテナンスを覚悟した方がいい。消耗部品は交換のインターバルを短めにして、所期性能を保つのがメルセデス・ベンツの考え方だからだ。
それでも、乗りこんでドアがガチャリと閉まる、えもいわれぬ音を聞いただけで、クラシック・メルセデスを選んだ甲斐があると感じるだろう。
コンパクトクラスだと、84年から89年のW124シリーズの第1世代までのシートも素晴らし出来だった。欧州の超高級家具に使われているパームロック(シュロと馬の毛で編んだクッション)をスプリングの上に置き、さらにシートの“うね”は職人がスポンジを入れて形成する。
79年登場のSクラス(W126)は私が大好きなモデルである。このクルマには、シートがベロア(ベルベット)地で覆われている仕様も。これはレザーよりはるかに高級だ。適度にソフトで肌触りもよく、路面のショックもよく吸収してくれる。
メルセデス・ベンツは世界に冠たる高級車を手がけてきただけに、他に類のない世界観を持つ。クラシックスでは、ある程度のメイテナンス費用が覚悟できれば、比較的安価で、いまではほとんどなくなった独特の味わいを楽しむことができるのだ。
というわけで、いまでも乗る価値のある古きよきメルセデス・ベンツ車を選ぶのは、どんな世界観を選ぶかに等しいため、一般論では難しい。そこで、私ならこれに乗りたいという10台をリストアップしてみた。
10)「600」(1963年〜81年)
手に入れるのは難しいが、圧倒的なパワーとボディの作りは圧巻。60年代はエリック・クラプトンやジョージ・ハリスンらがロングホイールベース版を自分で運転していた。
9)「W123T」(1973年〜84年)
コンパクトクラスのステーションワゴン。機能主義の権化のような車体はブサかっこよく、いまも人気が高い。40年前のモデルでもヤレが少なかったりするのは、さすがの高品質。リストの上位にしなくても人気に影響しないでしょう。
8)「ゲレンデワーゲン」(1979年〜2019年)
初期のモデルの方が、ブラウンの製品に通じる機能主義的デザインが各所に見られ、より好感が持てる。が、アクセルペダルは鬼のように重い。カブリオレか、ショートホイールベースの2ドアが特に雰囲気がある。
7)「SL」(1971年〜89年)
平べったいSLとも呼ばれるR107は、エレガントですてきだ。突き詰めるとボディ剛性に難があったかもしれないが、このスタイルならガマンしてもいいではないか。ロードスターはスタイリッシュであるべしという美学の具現化。
6)「Sクラス(W116)」(1972年〜79年)
「ダブルバンパー」と通称されるモデルで、このときからメルセデス・ベンツはS(スーパー=Super)クラスの名称を使い出した。ごっついけれど、作りは素晴らしい。クロームが多くて一時期はいなかくさかったが、いまは新鮮。
5)「300SEL 6.3」(1968年〜72年)
シャシーがエンジンより速い。というのが、変わらぬメルセデス・ベンツのポリシー。それを逆手にとって、シャシーが耐えられるかぎりパワフルなエンジンを搭載したモデルだ。通常は3リッターのモデルに6.3リッターV8載せた4ドアのスポーツカー。
4)「190E2.5-16」(1989年〜93年)
全長4.4メートル、全幅1.7メートル程度のコンパクトなサイズの190シリーズは衝撃的だった。2リッターの190Eは作りはいいけれど遅かったが、このスポーツモデルは画期的。ハンドリングがよく、このあたりからメルセデスにスポーティというイメージも加わった。
3)「W123Cシリーズ」(1977年〜85年)
個人的にスタイルで推したいのがこのクーペ。セダンをベースにしながらホイールベースと全長を85ミリも短くして軽快に。かつクロームがぐるりと取り巻くピラーレスのサイドウィンドウのグラフィクスも魅力的なのだ。中古車市場では稀少。そこもいい。
2)「W124シリーズ」(1984年〜95年)
クオリティ感でいうと、戦後のメルセデス・ベンツ車の高品質の作りを持った最後のモデル(とりわけ89年のシリーズ1まで)。ステーションワゴンの人気はいまも高いが、セダンもまた素晴らしいハンドリングを味わわせてくれる。狙い目かもしれない。ポルシェに生産を発注していた最高峰の500Eはマニア垂涎の的。
1)「Sクラス(W126)」(1979年〜91年)
個人的にはセダンのベストともいえる均整のとれたスタイリングが見事。足まわりが硬めで乗り心地がいまひとつだが、この世界観が手に入るなら(個人的には)ガマンできる。SECというクーペもスポーティな仕上げで好感度大。