
トヨタ ヤリスクロス ハイブリッド Z
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2021年1月21日
なんちゃってSUVとはひと味違う──新型トヨタ ヤリスクロスのハイブリッドとガソリンモデルに試乗|TOYOTA
TOYOTA YARiS CROSS E-Four HYBRID Z|トヨタ ヤリスクロス イーフォー ハイブリッドZ
TOYOTA YARiS CROSS HYBRID Z|トヨタ ヤリスクロス ハイブリッドZ
TOYOTA YARiS CROSS G|トヨタ ヤリスクロス G
新型トヨタ ヤリスクロスのハイブリッドとガソリンモデルに試乗
2020年8月に発売したトヨタのコンパクトSUV「ヤリスクロス」。先にデビューしたコンパクトハッチのヤリスと同時開発したTNGA「GA-B」プラットフォームを採用し、デザイン、走りの楽しさ&低燃費、スペースユーティリティ、安心・安全性能といった全方位的な魅力を持つアーバン(都市型)SUVと謳われている。ハイブリッドとガソリンの4WDとFFに乗り、人気モデルの乗り味を試してみた。
Text & Photographs by HARA Akira
ハイブリッドのE-Four(4WD)とFFモデル
まず乗ったのは、ハイブリッドの4WDモデルであるE-Fourで、グレードは最上位の「Z」。こちらはシルバーメタリックにブラックルーフの2トーンボディで、内装は、ブラウンの合皮とツィード調のファブリックを組み合わせた渋目のカラーリングだ。






同じシャシーを共有するヤリスより240mm長い全長4,180mm、70mm広い全幅1,765mm、90mm高い全高1,590mmというボディに搭載するのは、91ps(67kW)/120Nmの1.5リッター3気筒「M15A-FXE」ダイナミックフォースエンジンと80ps(59kW)/141Nmのフロントモーター、そしてリアの5.3ps(3.9kW)/5.2Nmのモーターを組み合わせた電気式の4WDシステムだ。スタートすると、発進時にはリアモーターがアシストしてくれるので出だしが力強く、街中の走りも1,270kgという4WDとしては軽めのボディを生かしてスイスイと走り回れるのがいい。



最低地上高は170mmなので乗り込みに苦労することもなく、少し目線が高くなったドライバーズシートに収まると、ちょっと閉塞感を感じたヤリスよりウエストラインが低いので視界が広くなっているのが分かる。
シフトレバー下にはE-Four専用のモード切り替えダイヤルがあり、TRAILとSNOWの2つのモードが選択できる。TRAILモードは悪路でスタックした時の脱出用で、SNOWはもちろん雪道用だ。試乗用にトヨタが用意したバンクとモーグルというオフロードを模したコースでトライしてみると、一方のタイヤが宙に浮くような片輪走行になっても、もう一方の接地輪にトルクが伝わるシステムを生かして無事クリアできたので、なんちゃってSUVとは一味違う走破能力を備えていることを証明してくれた。




また4WDシステムは小型なので積載能力は変わらないし、ストップアンドゴーを繰り返した市街地での試乗中も燃費は20km/ℓ超えと優れている。となると、北海道など積雪が多く長距離移動が多いシチュエーションで使用するユーザーには、E-Fourがベストな選択になると思う。
一方、リアモーターを搭載しないハイブリッドのFFモデルは、正に都市型コンパクトSUVの王道といった感じ。こちらのカラーはホワイトパールクリスタルシャインのボディにブラックマイカのルーフという2トーンモデルだったので、つり目にちょっとアゴが出っ張ったような顔つきが映画の「スターウォーズ」に登場するストームトルーパーにそっくりだ、と思うのは筆者だけだろうか。




車重はE-Fourより80kgほど軽い1,190kgなので、それを生かしたスタート時の加速感や、一定速度からの再加速時もアクセルのつきがよく、街中での走りなら十分以上の動力性能だ。215/50R18という大径のタイヤは段差などでちょっとショックを伝えてくるけれども、ボディ剛性が高いので揺れが続く感じがない。ヤリスに比べると後席の足元が広くなっていて、これなら長時間乗っていてもパッセンジャーから不満は出なさそうだ。
ガソリンのFFと4WDモデル
次に乗ったガソリンモデルはFFの「G」グレード。シルバーの単色外装にシンプルなブラックのファブリックインテリア、双眼鏡のようなデザインのデジタルメーターという組み合わせで構成される。


搭載する1.5リッター3気筒「M15A-FKS」ダイナミックフォースエンジンは、120ps(88kW)/145Nmを発生し、ギア機構付きCVTで前輪を駆動する。発進時や加速時には3気筒エンジンの少し大きめの音が聞こえてくるけれども、巡航に入ると一気に静かになる。試乗中の燃費は15km/ℓ前後とガソリンモデルとしては及第点。ハイブリッドよりもさらに軽くなった1,120kgという車重が効いているのだろう。
また、ハイブリッドでも走ったオフロードコースで、ガソリン4WDモデルにも乗ってみた。こちらは上位モデルのRAV4と同じマルチテレインセレクトを搭載していて、路面状態に応じて「ノーマル」、岩場など凹凸の大きい場所用の「ROCK& DIRT」、砂浜や泥ねい地といった滑りやすい路面用の「MUD&SAND」という3つの設定ができる。


バンクやモーグルでは「ROCK& DIRT」、ローラーでは「MUD&SAND」を使用するよう指示され、その通りにするといずれもスタック状態からの脱出が可能になる。駆動の考え方としてはe-Fourと同じなのだが、やはりこちらはプロペラシャフトで前後の車軸を結ぶので(モニター上でもこれが見える)、4WDとしての能力はこちらの方が一枚上手という感じ。ヤリスクロスで行動範囲を広げたいユーザーにはガソリン4WDモデルがぴったりだ。
試乗を終え、ヤリスクロスの開発を担当したトヨタ自動車の末沢泰謙シーフエンジニアに話を聞くと、「ヤリスと並行開発したヤリスクロスは、平たく言うと上(ボディ)を変えただけ。パワーユニットは同じでこっちの方が100kgほど重いので、ファイナルのギア比だけは変えました。そのため燃費は少し落ちますが、ハイブリッドの2WDモデルだと30km/ℓを超えているので十分でしょう」とのこと。



さらに「今は市場全体がSUVに動いていて、まずプリウスとかアクアなどのセダン、ハッチバック、しかもHVの代替えとしてお客さまが来ています。全車速での追従運転ができますし、たくさんのものを積んで普段行けないところまで行ける。燃費もいいし値段も手頃。そんな目的が全長4メートルちょっとのヤリスクロスでできたので、ひょっとしたらこれぐらいのサイズが一番、と感じてもらえたら嬉しいです」と語ってくれた。
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