SIHH2016|ジュネーブサロン特集
「SIHH2016|ジュネーブサロン特集」に関する記事
啓蒙思想家ヴォルテールのスピリットを伝承|MANUFACTURE ROYALE
MANUFACTURE ROYALE|マニュファクチュール ロワイヤル啓蒙思想家ヴォルテールのスピリットを伝承世界史を学んでいれば、フランス革命へとつながる啓蒙思想家であるヴォルテールの名を思い出せるはずだ。この歴史上の人物は実業家でもあり、新興の技能者たちのために時計工房を設立し、革命の潮流に向かう市民を鼓舞した。そんな歴史的な逸話を蘇らせたのが、このマニュファクチュール ロワイヤルである。Text by KAWADA Akinori「剣よりも危険なペン」フランスの啓蒙思想家、ヴォルテールが1770年に設立した時計工房の名をリスペクトして継承したのが、このマニュファクチュール ロワイヤルというブランドである。彼は実業家でもあり、技能を持ちながら職のない職人たちを救済するため、この工房を設立し、王侯貴族に時計を販売した。そして、それを資金として、革命へと向かう貧困層を経済的にも助け、鼓舞したのである。そんな力強い精神に見せられ、ヴォルテールの業績を現代に引き継ごうというのが、この工...
H.モーザー|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|H.MOSER & CIE.
H.MOSER & CIE.|H.モーザーH.モーザーの豊かな発想力に注目(1)H.モーザーは、2014年に主要コレクションを3つに再編成。それぞれのラインナップの構築に取り組んできた。今年の新作は、これまでの新作とちょっと発想力が違った商品が次々に発表された。なかには、ユーモアの効いたスペシャルモデルも用意され、SIHHにおいてもその企画力と発想力が各国のジャーナリストから賞賛された。Text by KAWADA Akinoriブルーエナメルが美しい懐中時計H.モーザーは、これまではバーゼルワールド開催時に独自の会場で新作発表を行っていたが、2016年にSIHHに参加。少量生産の工房ブランドではあるが、今回から参加の9ブランドの中では、頭一つ抜けた存在である。シュトラウマン・ダブル・ヘアスプリング、インターチェンジャブル・エスケープメントといった看板機構は活かしながら、2014年から、トラディショナルな「エンデバー」、モダン・ヴィンテージを標榜する「ベンチャー」、アクティ...
ブルガリ|ジュネーブ新作発表会 速報|BVLGARI
BVLGARI|ブルガリブルガリ「オクト」究極の黒モデルを発表(1)SIHHの参加ブランドではないが、SIHHの会期中にプレバーゼルの会期中にジュネーブ市内で新作の発表会を独自に行うブランドは多い。ブルガリもその一つで、市内のホテルで新作のお披露目を行った。レディースモデルを中心に、絢爛たる世界を演出するブルガリ ウォッチの新作とこれからを、マネージングディレクター、グイド・テレーニ氏の話も交えながら、紹介したい。Text by KAWADA Akinoriジュエラーとして時計と宝飾の美今回のプレバーゼルの新作発表会で、ブルガリの新作の中心となったのはレディースコレクションである。「私たちはウォッチメーカーであると同時に、ジュエリーブランドでもあります。もとより、レディースコレクションは非常に大切ですし、アイコンモデルと言ってよい『セルペンティ』のセールスが、2015年は大変に好調でした。今年のプレバーゼルでは『セルペンティ』の新作を中心とするコレクションによって、あらためて私たち...
クリストフ・クラーレ|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|CHRISTOPHE CLARET
CHRISTOPHE CLARET|クリストフ・クラーレ機械式腕時計の限界と戦うクリストフ・クラーレ(1)ジュネーブサロンに新に9つのブランドが加わったが、そのなかでもクリストフ・クラーレは創造を絶する複雑なメカニズムを開発し続けるブランドとして知られている。これまで男性に向けた複雑なモデルを数多く発表してきたが、2014年に初めて女性に向けた「マルゴ」を発表。今回はその第2弾「マルグリット」を披露した。Text by KAWADA Akinoriすべてメカで動く贅沢な腕時計前作「マルゴ」はケース2時位置のボタンを押すと、中央の花びらがアトランダムに隠れ、同時に花占いをしているかのように、相手の恋愛レベルが文字盤に表現されるというものだった。前作「マルゴ」のプロモーションムービー新作「マルグリット」では2時位置のボタンを押すという点は同じだが、その後の動作が少し異なる。時刻インデックスが消え、「彼は私を熱烈に愛している」というメッセージが表示される。そしてボタンから指を離すと、元の...
パルミジャーニ・フルリエ|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|PARMIGIANI FLEURIER
PARMIGIANI FLEURIER|パルミジャーニ・フルリエブランドの創立20周年を記念する新ムーブメントを発表(1)パルミジャーニ・フルリエでは20周年のメモリアルモデルとともに、まったく新しいムーブメントのプロトタイプが公開された。ゼンマイの駆動時間を伸ばす方法として多く用いられてきたのが、ゼンマイの強化が定説とされてきた。ところが、今回発表された新ムーブでは、まったく逆のアプローチで考えられているという。そんな新技術の最前線にもスポットを当てたい。文/河田昭則パワーリザーブを飛躍的に伸ばす新技術を公開ミシェル・パルミジャーニ氏が立ち上げたマニュファクチュール、パルミジャーニ・フルリエは創立20周年を迎える。この記念すべき年の新作発表で発表されたのは、従来のゼンマイを数週間に伸ばす研究開発中というムーブメントだった。エスペラント語で、“永遠”を意味する「センフィネ」と名付けられているという。航空宇宙産業で用いられる特殊な弾力素材により、あまねく脱進機のパーツを製造する。脱進...
ロジェ・デュブイ|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|ROGER DUBUIS for MEN
ROGER DUBUIS|ロジェ・デュブイ重いのが嫌なら「カーボン」があるロジェ・デュブイにとって、2015年は腕時計の内部機構を見て楽しめるスケルトンモデルが数多く発表された年だった。2016年はレディースモデルが数多く発表されるいっぽうで、メンズコレクションの「エクスカリバー」コレクションに軽量なカーボンケースモデルが登場した。「エクスカリバー 42 オートマティック」のスケルトン仕様特にこの「エクスカリバー 42 オートマティック スケルトン カーボン」は秀逸だ。モデル名にカーボンとあるように、ケースの素材をカーボンファイバーで製作し、その耐久性は太鼓判が押してあるようなものだ。ムーブメントのスケルトン加工は、極限まで地板や受け板に抜き加工をほどこしており、歯車などのパーツを、まさに骨格で支えていると表現するのがふさわしい。それでいて、ブリッジやマイクロローターには、星型のモチーフを抜いた部分を配しており、グラフィックにまで配慮しているのだから恐れ入る。カーボンファイバーを型...
ロジェ・デュブイ|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|ROGER DUBUIS for WOMEN
ROGER DUBUIS|ロジェ・デュブイ自立した女性へ捧ぐ「ベルベット」コレクション(1)今年のロジェ・デュブイのブースは、まるで撮影スタジオのように演出された空間となっていた。女性の持つさまざまな多様性を5つのテーマの「ベルベット」コレクションで華やかに展開した。Text by KAWADA Akinori自立した女性のためのモデル「ベルベッド」2012年に発表された「ベルベット」コレクションは、今年、メカニズムだけでなく、美しいエナメル装飾が施された文字盤など贅沢な作りのコレクションが発表された。こうした強いこだわりに触れる度にロジェ・デュブイが一級品のマニュファクチュールであることを思い知らされる。エナメルと宝飾により完成されたレディースモデル美しく着飾った女性には、美しい花が似合う。レディースモデル「ベルベット」でも、今回登場した「ブロッサム ベルベット ブルー」は、そんな思いを強くしてくれる時計である。まず、文字盤を埋め尽くす花に目を奪われてしまう。マザーオブパールの文...
オートランス|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|HAUTLENCE
HAUTLENCE|オートランススイス時計の伝統の地で先進性に富んだ腕時計を開発(1)2004年に誕生した新興勢力であるオートランスは、ユニークなコンプリケーションモデルを展開してきたが、2015年に発表したトゥールビヨンやユニークな計時方式の時計のラインナップを充実。ブランドの転換期とも言えるラインナップの強化が図られた。Text by KAWADA Akinoriブランド名は、スイス時計産業の拠点「ニューシャテル」に由来ハイレベルな自動巻きトゥールビヨン複雑な機構を搭載する腕時計は、手巻き式を採用することがほとんどだ。もし複雑な機械式腕時計に自動巻きを採用したとしても、より厚さが増すため、よりケースが厚くなるというデメリットが生じる可能性が高い。オートランスが発表した新作は、3日間の駆動時間を確保し、自動巻きを採用している。近年の実用モデルの基本スペックを持ちあわせたトゥールビヨンというのは、非常に貴重である。しかも、12.4mmというケースの厚さは、複雑時計だったら抜群のスタ...
エイチ・ワイ・ティー|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|HYT
HYT|エイチ・ワイ・ティーホワイトとブルーの液体によるレトログラード(1)液体を使って、往復運針するレトログラードのように計時を行う時計で、時計ファンにお馴染みになったHYT。“液体機械時計師”(ハイドロ・メカニカル・オロロジスト)を標榜して、驚きのアイデアを結実させた彼らのSIHHデビューを飾ったのは、ホワイトとブルーのツートーンが映える時計だった。Text by KAWADA Akinoriクラシック&モダンの融合HYTは、本当に不思議な腕時計ブランドだ。機械式腕時計の内部に水を通すシステムが発表されたのは、2012年。以来、このコンセプトを踏襲したユニークなモデルがスイスのバーゼルワールドで発表されてきた。ベローと呼ばれる着色された特殊な液体をを送り込むポンプによって、時刻が表示されるという。HYTが、SIHHに姿を現した。HYT最新作はカラーバリエーションの充実に力を入れており、ホワイトとブルーのツートーンカラーが眩しい時計を2本リリースした。1本は、これまでのHYTのイ...
ウルベルク|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|URWERK
URWERK|ウルベルクプロダクトデザインとメカニズムの面白さ(1)扇型のミニッツトラックによって、時刻を表示する機構が印象的なウルベルクがSIHHに初参加。ウルベルクといえば、得意なメカニズムとデザインだが、新たに考案された精度の自動測定機構や女性のために開発された新作が会場でも話題となった。Text by KAWADA Akinori独特の計時方式、新しい自動測定装置に目を見開かされるウルベルクは、時計師フェリックス・バウムガルトナー氏とデザイナーのマーティン・フレイ氏が設立。特にひと目見たら忘れられないユニークな時刻表示「アワーサテライト機構」は世界各国の時計愛好家の間で注目を集め、支持が広がるブランドだ。昨年発表された「UR-105TA」のプロモーション映像 この「アワーサテライト機構」は、バウムガルトナー氏が開発。世界でも希な回転ディスクによる時刻表示方法で、世界で高く評価された。その最新作では、4つの回転ディスクを使用した機構が登場。フレイ氏の製作にも手間がかかっており...
F.P.ジュルヌが挑んだ新たなデザイン方程式|F.P.JOURNE
F.P.JOURNE|F.P.ジュルヌ大型化で問われるF.P.ジュルヌのデザイン方程式(1)時計の愛好家に向けて年間に限られた数のタイムピースしか作らないというこだわりの時計ブランド、F.P.ジュルヌ。今年はひと回り大きいサイズの「オクタ・ディヴィーヌ 」とエレクトロメカニカル ムーブメントを搭載した「エレガント」の2モデルが発表された。Text by SANO Tomoko PERRET「オクタ・ディヴィーヌ」に42mmのモデルが登場オフセンターの文字盤で知られるF.P.ジュルヌだが、「オクタ・ディヴィーヌ」は、同ブランドで初めて時分針がセンターにデザインされたモデル。 今年は、従来ケース径が38.40mmだった「オクタ・ディヴィーヌ」のサイズアップが図られ、42mmのモデルが登場した。ケースの大型化に伴い、視認性も向上している。文字盤外周の「時」表示が大きく、日付を表示するビッグデイト、ムーンフェイズ、パワーリザーブはややコンパクトになって、すっきりと見やすくなっている。また従...
グルーベル・フォルセイ|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|GREUBEL FORSEY
GREUBEL FORSEY|グルーベル・フォルセイ高精度を目指す新しい方向を模索(1)グルーベル・フォルセイは、2人の独立時計師が創設したブランド。2004年の創業以来、2軸トゥールビヨンや高速回転トゥールビヨンのパイオニアとして、数々の賞を獲得してきた。2016年は、グルーベル・フォルセイが得意とするメカニズム「トゥールビヨン」ではなく新たに開発した複雑機構を発表した。Text by KAWADA Akinori名人が作る“シンプルでも高性能”な逸品2016年は複雑なハイエンド機構を得意とする独立時計ブランドが数多く参加したことで賑わいを見せたSIHHだが、グルーベル・フォルセイは、SIHH参加ブランドのなかでも独立職人系ブランドのパイオニアといってもよい。通常のトゥールビヨンよりもさらに複雑な2軸トゥールビヨンや高速回転トゥールビヨンという他のブランドでは真似できないような機構を武器に高級メゾンとしての地位を確立した。そんなグルーベル・フォルセイで興味深いのは、24秒で1回転...
ヴァン クリーフ&アーペル|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|VAN CLEEF & ARPEL
VAN CLEEF & ARPEL|ヴァン クリーフ&アーペル詩情のあふれる世界を文字盤に紡ぎ出す(1)ヴァン クリーフ&アーペルは、ハイジュエリーとポエティック コンプリケーションを柱として、新作を発表したが、やはり注目したいのはポエティック コンプリケーションである。2016年も、文字盤に詩心にあふれる世界が展開された。文/河田昭則モチーフの造形も見事で魅入られてしまうヴァン クリーフ&アーペルのポエティック コンプリケーションは、毎年の楽しみの一つである。ある時は宇宙の神秘を、ある時は情感あふれるストーリーを、文字盤に出現させ、文字通りに、時計を詩的な(ポエティック)なものに仕立て上げる。ジェムセッティングも、名立たるハイジュエラーらしい素晴らしさで、時計に華やな彩りと輝きを与える。2016年は、そんなポエティック コンプリケーションの充実ぶりが際立っている。ここで紹介するうちの2本は、美しく、独創的なことに加えて、メカニズムという点でも傑出した時計である。「レディ ...
ジャガー・ルクルト|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|JAEGER-LECOULTRE
JAEGER-LECOULTRE|ジャガー・ルクルト誕生85周年を迎え、定番「レベルソ」がリニューアル(1)ジュネーブサロン初日の夜を飾ったのは、スイス時計界を代表する角形時計「レベルソ」誕生85周年だった。その祝宴の場において、新しい「レベルソ」が発表され、多くの関係者に衝撃を与えた。Text by KAWADA Akinoriケースサイズは3タイプに統一ポロ競技中でも時計の風防を破損する心配のない腕時計という注文に応えて開発されたジャガー・ルクルトの角型モデル「レベルソ」が誕生から85年を迎えた。そのメモリアルイヤーを祝う席上で、ジャガー・ルクルトは「レベルソ」コレクションを大胆に再編成することを発表した。その詳細は関係者に衝撃的ニュースとして受けとめられた。「レベルソ」は定番中の定番であり、人気も高い。それ故に顧客の要望のあらゆる側面に応えてきた。それだけ、サイズや機能のバリエーションが多くなり、選択の幅も広くなるが、コレクションの性格付けや体系が見えにくくなるきらいもあった...
リシャール・ミル|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|RICHARD MILLE
RICHARD MILLE|リシャール・ミル先端の技術を極めながら、さらなるラグジュアリーを追求(1)時計のF1を目指すと標榜してきたリシャール・ミルは、その先端を行く時計作りにより、新しいラグジュアリーのスタイルを確立している。今回も、これまでのスポーツ関係とは異なるコラボレーションを行うなど、新しい試みにチャレンジしている。文/河田昭則新しいコラボでも先端技術を追い求める近年のリシャール・ミルは、テニスのラファエル・ナダル、ゴルフのバッバ・ワトソン、F1のロマン・グロージャンなど、多くのスポーツ選手とのコラボレーションを成功させてきた。技術を極めつつ、他では使用しない先端的素材の採用などによって、独自のラグジュアリー性と世界観を構築してきた。2016年のSIHHでは、新しいコラボレーションのパートナーとして、ラグジュアリーなコーポレートジェット(ビジネスジェット)を製造するACJ(エアバス コーポレート ジェット)とのコラボレーションモデルが発表された。そこでも、リシャール・ミ...