オートランス|SIHH 2016 ジュネーブサロン速報|HAUTLENCE
HAUTLENCE|オートランス
スイス時計の伝統の地で先進性に富んだ腕時計を開発(1)
2004年に誕生した新興勢力であるオートランスは、ユニークなコンプリケーションモデルを展開してきたが、2015年に発表したトゥールビヨンやユニークな計時方式の時計のラインナップを充実。ブランドの転換期とも言えるラインナップの強化が図られた。
Text by KAWADA Akinori
ブランド名は、スイス時計産業の拠点「ニューシャテル」に由来
ハイレベルな自動巻きトゥールビヨン
複雑な機構を搭載する腕時計は、手巻き式を採用することがほとんどだ。もし複雑な機械式腕時計に自動巻きを採用したとしても、より厚さが増すため、よりケースが厚くなるというデメリットが生じる可能性が高い。
オートランスが発表した新作は、3日間の駆動時間を確保し、自動巻きを採用している。近年の実用モデルの基本スペックを持ちあわせたトゥールビヨンというのは、非常に貴重である。しかも、12.4mmというケースの厚さは、複雑時計だったら抜群のスタイリングと形容したくなるくらいだ。
今回登場したオートランスの「トゥールビヨン02」「トゥールビヨン03」は、そんな高度なトゥールビヨンモデルとして2015年に登場した「トゥールビヨン01」のバリエーションである。
同じメイラン グループの傘下にあるH.モーザー製のトゥールビヨンムーブメントを搭載。6時位置にあるキャリッジは表、裏とも窓上に開け、裏面もフレーム状のブリッジで支えるスタイルを採用する。これにより機械式ならではの複雑機構をどちらの面からも余すことなく鑑賞できる。
さらに、この機構には、第2時間帯表示も装備されている。もう1本の小さな時針が配されていて、それで本国時間(第2時間帯)、独立して調整可能な時針で現地時間を表示する。本国にいる時には、2つの針はピッタリと重ねておけば、小針の存在はまったく気にならない。実用的で、デザイン的にも練られている。
今回は、2015年モデルとは文字盤のカラーリングを一新させた。ブラック文字盤が、メタリックなロジウム仕上げの文字盤となり、立体的な構造や装飾として施されたコート・ド・ジュネーブの美しい紋様が強調され、視覚的に映える。
ラウンドの古典的コンプリケーションを、オートランスらしい解釈を加えて仕立てる手腕は流石であり、独自のケース形状のみならず、オーソドックスなスタイリングの時計を見てみたいという気にさせてくれる。
トゥールビヨン02(写真左)
トゥールビヨン03(写真右)
ケース|グレード5チタン+ステンレススチール/写真左
グレード5チタン+18Kピンクゴールド/写真右
直径|44mm
厚さ|12.4mm
ムーブメント|自動巻き(Cal.HMC 802)
機能|トゥールビヨン、第2時間帯表示
ストラップ|アリゲーター
防水|3気圧
発売時期|2016年末予定
予価|1250万円/写真左、1400万円/写真右(税別)
Page02. 計時方式、脱進機も独創性を極める
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スイス時計の伝統の地で先進性に富んだ腕時計を開発(2)
計時方式も、脱進機も独創性を極める
ブランドの創業当初より計時機構の独創性を追求してきたのが、オートランスであり、2015年に登場した「ヴォルテックス」も、その例に漏れない。
まず、分は時計の中心に配された針で表示するが、扇型に針が動き、表示トラックの終端に針が到達すると、瞬時にゼロ位置に戻るレトログラードである。機構への負担が大きな仕組みであるため、分針に採用する例は少数派である。
このレトログラードがゼロ位置に戻って3秒ほどで、時計の本来なら8時半くらいの位置にある窓から覗いているアワーマーカーが送られる。アワーマーカーは時間を書いたプレートが、キャタピラのようなベルトに配されており、そのベルトを回す機構が、脱進機をセットしているモバイルブリッジである。60分が経過すると、脱進機ごとこのブリッジが垂直方向に60°回転する。そのブリッジの左端が、キャタピラを回し、時刻を表示していくのである。
レトログラードがゼロに戻り、一拍置いて脱進機がキリモミ状に運動。同時にアワーマーカーが送られるという、なかなかスペクタクルにあふれる光景が60分ごとに繰り返してゆく。稼働する複雑なメカニズムが時計の裏表から見られる醍醐味にあふれる、機械好きにはたまらないモデルだ。
ヴォルテックス02
ケース|18Kレッドゴールド
サイズ|縦52mm × 横50mm
厚さ|17.8mm
ムーブメント|自動巻き(Cal.HLR2.0)
機能|レトログラード分針、プレート式時刻表示、回転式モバイルブリッジ機構
ストラップ|アリゲーター
防水|3気圧
限定数|28本
発売時期|2016年7月予定
予価|3200万円(税別)
Page03. ステンドグラスによる芸術的表現
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スイス時計の伝統の地で先進性に富んだ腕時計を開発(3)
ステンドグラスによる芸術的表現
「ヴォルテックス」は、前ページにて解説したように、精密な複雑機構を連動させ、スペクタクル感いっぱいに時間を表示する時計である。そのスタイルは、非常に角張っており、ケーズの前後は、ほとんどサファイアクリスタルでシースルーになっているため、全面をガラス張りにした建築物の趣がある。
そのガラスが、ステンドグラスだったら?
コンテンポラリーで美的センスにあふれる、そんなアイデアを思いついたのは、オートランスのアンバサダーであるエリック・カントナだ。フランス・マルセイユ生まれで、ワールドカップ フランス代表選手として活躍。クラブでも最後に所属したマンチェスター・ユナイテッドでは、中心選手として4度のリーグ優勝(うち2度はFAカップとのダブルクラウン)にクラブを導いた。1997年に引退した後は映画俳優として多くの映画に出演しており、2010年には舞台俳優としてもデビューした経歴を持っている。
存在自体が生ける伝説と言ってよい彼のインスピレーションの鋭さをこの時計は物語っている。ステンドグラスの半透明なカラーガラスから、緻密な機構が動作する様子はブラックのケースカラーとコントラストをなし、現代建築の趣きがたっぷりだ。
「ヴォルテックス」というスペクタクル感のある機構だからこそ、このカラーの視覚効果が生きる。それだけに、ほかのブランドでは、真似できない貴重なモデルである。
ヴォルテックス プライマリー by エリック・カントナ
ケース|ブラックチタン
サイズ|縦52 ×横50mm
厚さ|17.8mm
ムーブメント|自動巻き(Cal.HLR2.0)
機能|レトログラード分針、プレート式時刻表示、回転式モバイルブリッジ機構
ストラップ|アリゲーター
防水|3気圧
限定数|18本
発売時期|2016年7月予定
予価|3000万円(税別)