レース仕様直系の公道モデル ランボルギーニ「ウラカンSTO」 その開発に携わったキーパーソンにインタビュー|Lamborghini
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2021年2月2日

レース仕様直系の公道モデル ランボルギーニ「ウラカンSTO」 その開発に携わったキーパーソンにインタビュー|Lamborghini

Lamborghini|ランボルギーニ

ランボルギーニ ウラカンSTOの開発に携わった3人にインタビュー

ランボルギーニのレーシングモデル「スーパートロフェオ」からの技術やノウハウが注ぎ込まれた究極のロードモデル「ウラカン STO(スーパートロフェオ・オモロガータ)」。同モデルの開発に携わった3人のキーパーソンにオンラインで話を聞いた。

Text & Photographs by HARA Akira|Photographs by Lamborghini

サーキットでパフォーマンスを最大限に発揮でき、デイリーにも使えます
──最高技術責任者 マウリツィオ・レッジャーニ

アウトモビリ・ランボルギーニは2020年11月18日、スーパースポーツカー「ウラカン」の最新モデルとなるウラカンSTOを発表。20日には東京・六本木の「THE LOUNGE TOKYO」で実車を世界初公開した。
レーシングモデルのスーパートロフェオから技術やノウハウをフィードバックし、公道仕様として仕立て直したのがSTO。搭載する自然吸気のV10エンジンは、最高出力640ps、最大トルク565Nmを発生。車重は1,339kgと軽量で後輪駆動モデルとなる。パフォーマンスは0-100km/h加速3.0秒、0-200km/h加速9.0秒、最高速度310km/hで、価格は3,750万円と発表された。このモデルの開発に携わった3人の担当者に、オンラインで話を聞いてみた。
まずはランボルギーニの最高技術責任者となるマウリツィオ・レッジャーニ氏に話を聞いた。
──新モデルの名前についての確認なのですが、STOはスーパートロフェオオモロガータ、つまりウラカンのレース車両であるスーパートロフェオの公道仕様という理解でよかったでしょうか?
レッジャーニ「名前に関しては合っていると思いますが、STOはレースカーの単純に認証版といったことではなく、本当にいろんな使い方ができるクルマだと思っています。究極のサーキット走行を十分に楽しんでいただけるよう信頼性が非常に高く、サーキットでパフォーマンスを最大限に発揮できるクルマであり、デイリーに使っていただくことももちろんできます」
──このタイミングでSTOを出そうとした、きっかけや狙いを教えてください。
レッジャーニ「私たちは何年もかけてスーパートロフェオのワンメイクレースで成功を収めてきましたし、GT3も非常に成功しています。3年連続でデイトナ24時間レースでの勝利をつかんできました。そういったノウハウを市販車にも有効活用したいと思いました。
強力なレースカー、速いクルマを作るには2つから3つのパラメータが必要かと思っています。まずは速いコーナリング。それには空力と軽量化が必要となります。そしてパワーを最大限に出しながら、いかに軽量化し、ブレーキ性能を高めていく、そしてシャシーのコントロールを最大限に発揮していくといったところがとても大切かと思います。このSTOですが、空力性能を最大限にするため、私たちの最先端の技術を使っており、抵抗ドラッグもかなり軽減しています。コーナーでは非常に高いスピードを保ったままコーナリングしていただけます。
そして、今回初めてF1の技術を踏襲したCCM-Rというブレーキシステムを導入しました。これはカーボンファイバーのブレーキで、極めて軽量かつパワフルで最大限のパフォーマンスを発揮できます。そして、同じクルマ、同じドライバーでテストをしてみました。一方では通常のセラミックブレーキ、もう一方ではCCM-Rの新しいテクノロジーのブレーキでテストしたところ、CCM-Rの方が9%も速かったのです。つまり、パフォーマンスにも直結しますし、卓越したパフォーマンスになる、そして信頼性も高まる。このCCM-Rのブレーキによって、2時間運転し続けた後でも、フィーリングおよび信頼性の面で安定しています。一方で、日常でも十分に使うことができます。通常の道路、渋滞などしていても挙動は従来のブレーキシステムとまったく違いがなく、安定したブレーキ性能を楽しんでいただけます。
そしてもう一つの重要な柱ですが、パフォーマンスを上げるために、ウェイトの軽量化も図りました。乾燥重量で1339kgということで、かなりカーボンファイバーを採用しています。ボディパネルすべてがカーボンファイバーですし、私どものチェントロ・スティーレ(デザインセンター)のスタッフも、なるべく部品、コンポーネントを統合することによって軽量化、効率化し、一方で剛性も保つといったことも可能にしました。
──日常でも使えるクルマということですけれど、スーパートロフェオを公道仕様にするにあたってどこを変えたのでしょうか?
レッジャーニ「このSTOですが、ストリートホモロゲーテッド、ストリートバージョンということなので、パラメータを変えています。ドライブモードを選択することによっていろんな運転の仕方ができます。STOモード、トロフェオモード、ピアッジャモードがあり、STOモードだったら通常の柔らかい快適な乗り心地、そしてレースモードにしますと非常に反応が早い、加速も早い、そしてサスペンションやダンピングも剛性が高いようなモードとなります。ですので、ストラーダでは快適な走り、一方でレースモードを採用すれば非常に硬い、素早い俊敏な走りが楽しめ、日本では富士や鈴鹿のサーキットでも十分な能力を発揮します」
──STOの巨大なウィングが目につきますが、その性能というのはストリートバージョン用としてレース用のものと変更された点がありますか。
レッジャーニ「リアウィングについては、レースカーと今回のSTOでは全く違います。STOのものは独自のターゲットロードに合わせて設計・デザインしています。ユーザーは3つのポジションから選ぶことができて、それぞれバランスが違いますが、ロードディストリビューション、前後配分もそれで変わることになり、オーバーステアからアンダーステアという範囲の中からお客さまが選べます。ドラッグを減らすことによってダウンフォースも500kgから250kgまで変化し、ドラッグも、空力性能も優れているということです。
──ラップタイムなどはどうなっていますか。具体的なサーキットでの数字がありますか。
レッジャーニ「このクルマの開発を始めたときにエンジニアのチームにタスクを与えました。このSTOのラップタイムを比べるとしたらどういう風に比べたらいいのか、参考とするモデルはどうしたらいいのか、ということで、考えたのはV10でも最速を誇っていたペルフォルマンテと比べたらどうかとかいろいろと考えました。
シミュレーションを行い、サーキットはデイトナを選びました。なぜかというと3年連続してデイトナで勝ったという実績がありますし、24時間というのが私たちにとってもアイコン的なレースであったからです。昨年の予選のラップタイムは、STOはGT3のポールポジションを取った時のラップタイムよりも2秒遅かったという結果が出ました。これはスリップタイヤでした。
一方、ペルフォルマンテとスピードを比較してみると、それよりも3秒速いという結果を打ち出しました。それを聞いたときに、私は本当に信じられなかったんですが、実際私もサーキットで走行して、「ああこのクルマは速いんだ」と確信しましたし、プロだけではなく一般のドライバーが運転してもこの速さは出せると思いました。ミィティアもジョバンニも運転しましたが、3人共々同じく実感しています。
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