Amazing Tales of RAT HOLE

第22回 綿谷 修 写真展『Rumor/Pond』インタビュー(2)

第22回 綿谷 修 写真展『Rumor/Pond』インタビュー(2)

第22回 綿谷 修 写真展『Rumor/Pond』インタビュー(その2)前回に引き続き今回も、綿谷 修氏へのインタビューの模様をお伝えします。今回の作品を撮ろうと思ったきっかけにはじまり、綿谷氏の写真家としての人生のターニング・ポイントや、あらゆる作品に共通するテーマ設定の方法など、写真家 綿谷 修の基本スタンスに迫ります。Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)森山大道さんの「やってみたら」のひと言から──今回の写真を撮ろうと思われたきっかけは、どういうところだったんですか?たいてい街を1回撮ると、もういいやという感じになるんですが、またしばらくすると、まだ撮れる、まだ撮るものがあると感じるんです。今回もそういうふうにして、また撮りはじめましたね。前回の街と今回の街のあいだに、横浜の寿町を撮ったりもしたんですが、いろんなことをやってるつもりはあまりなくて、方法論がちがうだけで、根本的にはおなじことをやって...
第23回 綿谷 修 写真展『Rumor/Pond』インタビュー(3)

第23回 綿谷 修 写真展『Rumor/Pond』インタビュー(3)

第23回 綿谷 修 写真展『Rumor/Pond』インタビュー(その3)綿谷 修氏へのインタビューも、今回が最終回。前回に引き続き、綿谷氏の写真観をうかがいながら、話は再び今回の作品へと。そして、ウクライナの子どもたちの素顔を捉えたもうひとつのシリーズ『Pond』の話へと展開していきます。Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)なるべく自分の姿を消して撮りたかった──綿谷さんは撮る場所などは、あらかじめ決めてから撮るんですか?決めるときもありますが、今回は決めませんでした。かといって、そんなに多くの場所で撮ったわけでもないんです。場所はたいてい、なんとなく時間や気分で決めます。1日ぶっとおしで長い時間撮るほうではないので、だいたい何時ぐらいにここに日が当たってるとか、そういう街の光の関係などで決めます。『Agenda』のときの方がいろんなとこで撮ってますね。──ホーム・グラウンド的に戻っちゃうような場所って...
アントワン・ダガタ展『SITUATIONS』開催中!

アントワン・ダガタ展『SITUATIONS』開催中!

アントワン・ダガタ展『SITUATIONS』開催中!スペシャルインタビューご期待ください現在ラットホールギャラリーでは、2008年2月1日までの日程(休廊:月曜、12月28日~1月6日)で、アントワン・ダガタ展『SITUATIONS』を開催しています。彼は1961年、フランス・マルセイユに生まれ、ニューヨークICP(国際写真センター)でナン・ゴールディンやラリー・クラークなどに写真を学んだ後、写真家としてのキャリアをスタートさせた人物。2001年に故郷マルセイユを撮影した『Home Town』でニエプス賞、2005年には『Insomnia』で第20回東川賞・海外作家賞を受賞しています。また、2004年よりマグナムに参加し、現在は準会員として定住地をもたず世界中を移動しながら活動しています。そして今回、このラットホールギャラリーでの個展のオープニングに際し、来日してくれたアントワン・ダガタ氏。そのさい、オウプナーズ編集部を交え、この展覧会に寄せる思いや、写真に対する姿勢をうかがいまし...
第24回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(1)

第24回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(1)

第24回 アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』インタビュー(その1)予告編でお伝えしたとおり今回からは、現在ラットホールギャラリーで個展『SITUASION』を開催中のアントワン・ダガタ氏へのインタビューの模様をお伝えします。(北村信彦)Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)テーマがあるとすれば、それは私自身の人生──まず、今回の写真展に発表された作品は、いつ頃撮られたものなんですか?ダガタ 1990年以降、つまり私が30歳で写真を撮りはじめてからすべての時期の作品ということです。いちばん新しい作品には、ことし撮影されたものも含まれています。──今回のセレクトに対するテーマは、どういうものだったのでしょうダガタ 基本的に私の写真展には、いつもテーマがありません。唯一あるとすれば私自身の人生です。ですが、今回見せ方としては、手前の壁には大きく見せるための絵画的作品を、真ん中の壁にはたくさんの小さ...
第25回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(2)

第25回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(2)

第25回 アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』インタビュー(その2)引き続き、アントワン・ダガタ氏へのインタビューのもようをお伝えします。世界中を旅しながら、まったく知らない土地で孤独にシャッターを切り続けるダガタ氏。話を進めるうちに、その真の意図と彼の作品の本質が垣間見えてくるような気がしました。(北村信彦)Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)恐怖、孤独、空虚感こそ写真を撮るモチベーション──北村さんは、ダガタさんの写真をはじめて見たとき、どんな印象をおもちになりましたか?北村 衝撃的でしたね。題材ももちろんそうですが、まずはその色使いに衝撃を受けました。そして、ひとつひとつの作品を見る以前に、集合体としてのパワーを感じましたね。展覧会の会場に入った瞬間、ファンになったって感じです。ダガタ 私のほうこそ、このギャラリーや日本の写真家たちのファンですよ。今回は、写真界に大きな影響を与える日本...
第26回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(3)

第26回 アントワン・ダガタ写真展『SITUATION』インタビュー(3)

第26回 アントワン・ダガタ 写真展『SITUATION』インタビュー(その3・最終回)アントワン・ダガタ氏へのインタビューの最終回。シャッターを切る瞬間はどのように訪れるのか、また、作品のなかにしばしば本人が登場する彼の作風の真意とは。そんな話を聞きながら、あらためて彼の写真を見ることで、作品への理解が深まると同時に、彼が写真を通して表現したいものの正体が、より鮮明に見えてくるようでした。(北村信彦)Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)直感で自分とおなじ感触をもった人を選ぶ──隣り合わせの空虚とエクスタシーを切り取る、とのお話でしたが、シャッターはどんな瞬間に切るんですか?ダガタ 感じたときに切る、としかいえないですね。だからいつでも小さなカメラを携帯しています。でも、結局撮るのは夜ばかりなんですけど(笑)。人を撮るときにも直感で自分とおなじニオイのする人を選んでいます。たぶん彼らも私同様、孤独感や空...
安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その1)

安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その1)

第27回 安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その1)現在ラットホールギャラリーでは、3月30日(日)まで、安楽寺えみさんの写真展『Snail Diary』を開催しています。安楽寺さんは武蔵野美術大学で油絵を学び、約10年間の闘病生活を送った後、93年より銅版画を始め、98年ごろより本格的な写真制作をはじめます。その作品は、人間のもつ根源的な生への欲望が、さまざまなメタファーに置き換えられて存在し、夢のような不思議な世界観を構築しています。今回は、そんな安楽寺さんと、この写真展のオープニングに際しておこなった対談の模様をお伝えしていきます。意外な告白も飛び出し、少々照れてしまいましたが……。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)じつは『犬の記憶・終章』(文庫版)のあとがきに惚れ込んでたんです安楽寺 ノブ社長(北村さん)にまず、ひとつお話ししたいことが...
安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その2)

安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その2)

第28回 安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その2)前回に引き続き、安楽寺えみさんとの対談の模様をお伝えしていきます。話は安楽寺さんの写真の原点へ、そこから今回の写真展のテーマへと移っていきます。彼女の言葉を聞くうちに、写真に写る表現の、さらにその奥にある深い部分を垣間見ることができた気がしました。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)6尺3寸の宇宙でできること北村 安楽寺さんの作品は、写真というカタチになるまでに、また別のコンセプトがありますよね。そういう意味では普通にいう写真家というカテゴリーに収まっていない気がします。もっと広い意味でのアーティストというんでしょうか。安楽寺 もともと私は油絵からはじまって、その後銅版画をやっていましたから。じゃあ、どうして写真にいったのかというと、やっぱり写真がおもしろかったんじゃないでしょうか。きっかけは、...
安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その3・最終回)

安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その3・最終回)

第29回 安楽寺えみ 写真展『Snail Diary』対談(その3・最終回)安楽寺えみさんとの対談も今回が最終回です。どこか微熱状態にも似た彼女の作品。その印象はいったいどこから来るのか。作品に向かう胸の内を赤裸々に語ってくれた今回の対談を通して、その核心に迫ることができた気がしました。僕自身、彼女の言葉を聞いてから再び作品に向かうことで、最初に見たときにはおぼろげだったその背景がより鮮明に見えてきました。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)もどってきたら少し違う次元にいた北村 女性だからということもあるんでしょうが、どの作品もアブノーマルなんだけどグロテスクじゃないですよね。エロティックとアブノーマルがいい意味で融合してるというか。安楽寺 さっきノブ社長もおっしゃいましたけど、要するに微熱状態なんですよ。北村 繰り返される微熱、みたいな感じですね。安楽寺 そう...
リー・フリードランダー写真展『桜狩』(その1)

リー・フリードランダー写真展『桜狩』(その1)

第30回 リー・フリードランダー写真展『桜狩 -Cherry Blossom Time in Japan-』(その1)ラットホールギャラリーでは現在、6月1日(日)までの日程でリー・フリンドランダー写真展『桜狩 -Cherry Blossom Time in Japan-』を開催しています。リーの個展といえば、昨年春の開催に続き2度目となりますが、今回はタイトルにもあるとおり、全点「桜」を撮った作品だけを集めた世界でも初めての写真展となります。さらに、この個展のオープニングにあたり、リー自身も来日してくれ、興味深い場面に遭遇することもできました。そこで本連載『ネズミの穴』では3回にわたり、今回の個展の見どころと、僕自身のリー・フリードランダー観などをお話ししてみたいと思います。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)彼の写真の第一印象は、都会人が切り取った路上の空気...
リー・フリードランダー写真展『桜狩』(その2)

リー・フリードランダー写真展『桜狩』(その2)

第31回 リー・フリードランダー写真展『桜狩 -Cherry Blossom Time in Japan-』(その2)前回に引き続き、リー・フリードランダーについてのお話を。昨年の個展のときのような彼の作品しか知らない人にとって、今回の『桜狩』展はもしかしたら少々意外なかんじを受けるかもしれません。しかし実は、どんなに被写体が変ろうとも、そこにははっきりとリー・フリードランダーという写真家を感じることができるのです。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)印画紙に焼き付けられたリーという名の粒子前回の個展で展示された彼の写真は、ひとことでいえば日本で育った僕らにとっては一種の憧れの風景でした。それに対し今回の「桜」は、日本人にとって非常に見慣れた風景。だから、見た人の中には一見地味だと感じる人もいるかもしれません。しかし、彼の作品に共通する本当にすごい点は、テーマで...
リー・フリードランダー写真展『桜狩』(その3・最終回)

リー・フリードランダー写真展『桜狩』(その3・最終回)

第32回 リー・フリードランダー写真展『桜狩 -Cherry Blossom Time in Japan-』(その3・最終回)前回、前々回と、現在ラットホールギャラリーで個展を開催しているリー・フリードランダーについてのお話をしてきました。その中でも触れましたが、今回の個展では、4月11日のオープニングレセプションにリー本人が駆けつけてくれました。その際、普段なかなか目にすることのできない貴重な光景を見ることができましたので、今回はそのときの話をしようと思います。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)プロの写真家が、高校生のように目を輝かせていた今回のオープニングレセプションは、巨匠リー・フリードランダーの来日ということもあり、同業者である写真家の人たちがいつもよりたくさん来てくれました。みんな彼をひと目見ようと、まるで高校生みたいに目を輝かせていたのが印象的でし...
ロニ・ホーン写真展『This is Me, This is You』(その1)

ロニ・ホーン写真展『This is Me, This is You』(その1)

第33回 ロニ・ホーン写真展『This is Me, This is You』(その1)ニューヨークを拠点に活躍する現代美術作家ロニ・ホーン。ラットホールギャラリーでは6月20日~8月10日(日)の日程で、彼女の日本における初の個展『This is Me, This is You』を開催しています。彼女のことをあえて“現代美術作家”と呼んだのは、その表現が写真だけにとどまらず、立体作品やドローイング、インスタレーション、テキストと、非常に多岐にわたっているからです。実際、彼女のキャリアは、ミニマリズムに影響を受けたコンセプチュアルな立体作品からはじまっています。また今回の個展も表現手法そのものは写真ですが、そこには、かねてから「言葉を通じてヴィジュアルにたどり着く」と語る彼女にしか表現できない一種独特の世界が展開されているのです。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Write...
ロニ・ホーン写真展『This is Me, This is You』(その2)

ロニ・ホーン写真展『This is Me, This is You』(その2)

第34回 ロニ・ホーン写真展『This is Me, This is You』(その2)前回に引きつづき、現在ラットホールギャラリーで個展を開催中のロニ・ホーンについてのお話を。今回は、彼女の作品全体に共通する独特の世界観を、作品そのものや、彼女と交わした会話のなかから僕なりに分析し、この作品展の見方、そしてより深く楽しむためのちょっとしたアドバイスなどをお話ししようと思います。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)彼女にとっては、写真も表現のためのひとつの道具今回ラットホールに足を運んでくれるファンの人に対するアドバイスとしては、まず彼女を一写真家として見てしまうのはもったいない、ということがあります。個展開催中ラットホールでは、いままでの彼女の作品集なども置いていますので、過去の立体作品やドローイングなども見て、彼女の世界観を感じてほしいと思います。ふつう、自...
第37回 森山大道個展『北海道』(その1)

第37回 森山大道個展『北海道』(その1)

ラットホールギャラリー第37回 森山大道個展『北海道』(その1)ラットホールギャラリーでは、2009年2月8日(日)までの日程で、森山大道個展『北海道』を開催しています。今回の作品群は、今からちょうど30年前の1978年に撮られたものを中心とした未発表作品約70点から構成されています。当時森山さんは、日々の生活への一種の肉離れを起こし、次第に“ここではないどこか”へ逃れたいと感じるようになっていたといいます。そこで北海道行きを決意した彼は、札幌に3ヵ月間アパートを借り、北海道中を撮影してまわりました。しかし、そのとき撮影された膨大なネガはその後、ほとんどプリントされることなく眠りつづけていたのです。今回、そのネガをあらためて発掘、660ページを超える写真集『北海道』の出版とともに本個展の開催となりました。また、個展のオープニングに際し森山さん本人から、当時の思いや、いま発表することの意味など、興味深いお話の数かずを聞くことができました。「ネズミの穴」では、今回から4回にわたり、オウ...
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