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2015年5月8日
RAT HOLE GALLERY|荒木経惟展「センチメンタルな空」
空とバルコニーで愛の物語を描く
荒木経惟展「センチメンタルな空」
写真家 荒木経惟による個展「センチメンタルな空」が8月24日(金)から10月7日(日)まで南青山のRAT HOLE GALLERY(ラットホールギャラリー)で開催される。
Text by YANAKA Tomomi
個展に合わせて写真集も刊行
1990年に愛妻のヨーコが亡くなって以降、空の写真を撮影することが日課となったアラーキー。写真そのものが私小説である彼にとっては、空とは自分の心を映す鏡であり、空の写真はほかの誰のものでもない「自分の空」なのだ。
映像作品「三千空(さんぜんくう)」では、自宅バルコニーから撮影された3000枚もの空がモンタージュされ、4時間にわたって大型スクリーンに投影。雲ひとつない青空、からみ合う飛行機雲、暮れゆく夕空など、表情豊かな空が見る者を包み込み、電柱や電線、家々の屋根、木々もまた荒木の“空”から切り離せない存在として表情の一部をなしている。
このほかにも、ヨーコや愛猫のチロらとさまざまな愛を刻んできた自宅バルコニーを1983年から2011年まで記録した「愛のバルコニー」から写真20点、そしてヨーコを描いたシルクスクリーン3点も展示されるという。また、この展覧会に合わせて写真集『センチメンタルな空』も刊行される。
これまでも数々の作品に登場し、特別な場所であったバルコニーのある自宅を、昨年去ることとなった荒木。ヨーコとの最後の日々を記録した写真集『センチメンタルな旅 冬の旅』(1991年)、そしてチロとの別れを綴った写真集『センチメンタルな旅 春の旅』(2010年)につづいて、今回の「センチメンタルな空」でもまた、ひとつの愛の物語の幕が描かれている。