Amazing Tales of RAT HOLE
「Amazing Tales of RAT HOLE」に関する記事
第20回 アンデルス・ペーターセン写真展『Café Lehmitz』対談(2)
第20回 アンデルス・ペーターセン写真展『Café Lehmitz』アンデルス・ペーターセン×北村信彦 対談(その2)今回も、前回に引き続きアンデルス・ペーターセン氏との対談の模様をお伝えします。話は『カフェ リミッツ』という場所がもっていた魅力の本質へと迫っていきます。(北村信彦)Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)「カフェ リミッツ」は、みんなの家だった──アンデルスさんに2年以上も通い詰めて写真を撮らせた、この場所の魅力とはいったいなんだったんでしょう?アンデルス 答は非常にシンプルです。ここに集う人々に惹かれたからです。いまでも彼ら全員の名前を覚えています。まあ、いまの人の感覚からいえば、2年以上もおなじところで写真を撮るなんて変に思うかもしれませんが、僕にとってあの2年はけっして長くは感じませんでした。僕自身、ブルジョワ的なものに嫌気がさしていた時期でもありましたし、それまでの生活のなかで、な...
第19回 アンデルス・ペーターセン写真展『Café Lehmitz』対談(1)
第19回 アンデルス・ペーターセン写真展『Café Lehmitz』アンデルス・ペーターセン×北村信彦 対談(その1)現在ラットホールギャラリーでは、11月2日までの日程で、アンデルス・ペーターセン展『Café Lehmitz』を開催しています。そのオープニングに際し来日していたアンデルス氏とオウプナーズ編集部を交えた対談を行いましたので、今回から2回にわたり、そのときの模様をお伝えします。(北村信彦)Photo by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)あの写真は、この人の作品だったのか──まずは北村さんに、アンデルスさんの作品との出会いと、今回の展覧会を行うことになった経緯をおうかがいしたいのですが北村 アンデルスさんの作品については、1985年のトム・ウェイツのアルバム『RAIN DOGS』のジャケット写真で知ってはいましたが、当時はまだ誰が撮ったということではなく、いい写真だなと思っていました。一方、ラットホール...
スコットランド出身のアーティスト、アンドリュー・カーの日本初個展| RAT HOLE GALLERY
RAT HOLE GALLERY|ラットホールギャラリー具象でも抽象でもない独自のスタイルと色彩で生み出す世界観アンドリュー・カーの日本初個展を開催スコットランド出身のアーティスト、アンドリュー・カーによる日本初の個展『The gallery is beside a church, apartments and a small park with fountain』が、南青山のラットホールギャラリーで開催。9月6日(日)まで開かれている。Text by YANAKA Tomomi新作のペインティングを中心に展示アンドリュー・カーは1977年、スコットランド・グラスゴー生まれ。現在も地元を拠点に、ペインティングやファウンドオブジェ、そして紙からなる立体作品を生み出している。その作品は、彼の日常生活からのインスピレーションをもとに、親密さを感じさせる小ぶりなサイズが中心で、具象とも抽象ともちがう独自のスタイルと色彩をはなつ。ペインティングでは彩度を抑えたアクリル絵具を使用し、スタジオの...
第6回:ラットホールギャラリー第2弾は『荒木経惟展』
第6回ラットホールギャラリー第2弾は『荒木経惟展』「緊縛写巻」より。© NOBUYOSHI ARAKI天才、荒木経惟が、自らの写真にペイントで抜く!ラットホールギャラリーの記念すべき第1回イベント『森山大道展it』も、去る11月19日に無事終了し、22日からは、イベント第2弾となる『荒木経惟展』を開催しています。そこで今回からは、この展覧会についてと、僕にとっての荒木さんというテーマで話をしようと思います。今回メインとなるのは『緊縛写巻』というシリーズ。これはモノクロの、いわゆる縛りの写真の上に、荒木さんがペイントによって射精している、といった趣のもので、すごく瞬発的な作品です。完全に自分の写真で“抜いてる瞬間”といってもいいでしょう。そして写真というよりは、絵なんですよ。ヒステリックの写真集として『流石』を発表したときも、表紙は絵でしたが、僕はあれを見たときから、荒木さんの絵の才能というのは感じていました。写真集『流石』出会い、そして、両取りしていいのかな? という思い「花とヤモ...
第7回:荒木経惟という写真家の本当のすごさ
第7回:荒木経惟という写真家の本当のすごさ「花とヤモリンスキー」より。© NOBUYOSHI ARAKIようやく気づいた荒木さんのすごさ前回から、いまラットホールギャラリーで展覧会をおこなっている荒木さんについてのお話をしていますが、実は荒木さんの写真を、僕が本当に理解できたのは、つい最近のことです。荒木さんというのは、作品の数も多いですし、さまざまなコンセプトで写真を撮る人。しかし一般的には、やっぱりエロスという部分がクローズアップされています。さらに、そこに本人のキャラクターも重なって、すごく異色な強さというものが前面に押し出されている作家だと思うんです。僕自身も、荒木さん=強烈なエロス、みたいな見方をしていたのは事実です。ところが、先日、両国の「江戸東京博物館」でおこなわれている荒木さんのエキシビション『東京人生』を見たら、全然違うんですよ。内容的には1962年からいまにいたるドキュメントで、エロスがマイナスされた荒木さんなんですが、それを見て、はじめて本当のすごさを感じまし...
第9回 荒木経惟氏×B.ミハイロフ氏トークショー (その1)
第10回 荒木経惟氏×B.ミハイロフ氏トークショーphoto by Jamandfix今回から2回にわたって、昨年12月の『荒木経惟展』の会期中におこなった荒木さんとウクライナの写真家ボリス・ミハイロフさんとのトークショーの模様をお伝えします。内容は、荒木さん自身による今回の展覧会の作品説明を中心に進んでいきますが、普段聞けないような話もたくさん飛び出し、僕自身これまで気づかなかった彼の写真の真髄に触れたような気がしました。(北村信彦)photo by Jamandfix花が枯れる直前。そこに強烈なエロスを感じるんだな(荒木)荒木●ボリスさんの写真を見ていると、俺のは絵に近いと思うね。ボリスさんには写真を感じるな。ボリス●僕の写真も絵ですよ。荒木●え(絵)ー!?(笑) ボリスさんは写真をとおして人生の小話というか、そういうのを楽しんでいるのかな?ボリス●うーん、どうかな。荒木さんはどうですか?荒木●俺のは小話にならないよ。俳句になっちゃうんだよね。ボリス●俳句はいいですね。荒木●俳...
第10回 荒木経惟氏×B.ミハイロフ氏トークショー (その2)
第10回 荒木経惟氏×B.ミハイロフ氏トークショーphoto by Jamandfix話はいよいよメインディッシュの『緊縛写巻』から荒木さんの色の原点へとつながって……。photo by Jamandfix思えばアタシの赤は、焼夷弾の赤なんだよね(荒木)荒木●じゃあ次は『緊縛写巻』の話を。これはご覧のとおり写真が全部つながってるんだけど、一度絵巻物というのをやりたくてさ。で、東海道五十三次にあやかって、わざと53枚にしたというわけ。最近自分で、死に近づいてる感覚が強くなってるんだ。だから原色に向かってるんだよね。でも、こうしてあらためて見てみると、中でも赤に惹かれているのがわかるね。photo by Jamandfixこれはやっぱり焼夷弾の赤なんだろうな。あれは5つか6つくらいの頃、「空襲!」といわれるとね、アタシたち子供はお寺に逃げたんだ。墓には爆弾落とさないといわれてね。でも本当に落とさないんだよね。で、周りが燃えてるのを見てる。もちろんそれ自体はひどいことだけど、その真っ赤な...
第35回 荒木経惟個展『好色』(その1)
第35回 荒木経惟個展『好色』(その1)現在ラットホールギャラリーでは、12月7日(日)までの日程で、荒木経惟個展『好色』を開催しています。荒木さんに関しては、2006年11月からの『荒木経惟展』、2007年6月からの『愛の花』につづき、ラットホールでは3回目の開催となります。内容は、1回目の開催時から彼が取り組むペインティング作品。しかし今回は、これまでのような作品群としての見せ方ではなく、1点1点で完結する作品になっているところがポイントです。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by KITAHARA kaoruedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)失敗の許されない方法の中に見た、巨匠の凄まじい集中力じつは1回目の個展『荒木経惟展』が終わった時点ですでに、「次は1点1点で見せたいね」という話はしていました。だから今回の個展の方向性自体は、とても自然な流れで決まったんです。それでも、実際このサイズで見せられると、想像以上...
第36回 荒木経惟個展『好色』(その2)
第36回 荒木経惟個展『好色』(その2)前回からお伝えしています、荒木経惟個展『好色』の続編です。期間は12月7日(日)までですので、まだご覧になっていない人は、ぜひ足を運んでみてください。さて、今回はまず、僕が見た実際のペインティング風景から感じたことをお話します。北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by KITAHARA kaoruedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)計算し尽くされたペインティングは、荒木流の愛情表現かすでにご覧になった方ならおわかりだと思いますが、完成した作品を見ると、あのペインティングって、一見簡単にやっているようにも見えます。ですが、実際には1点1点かなり時間をかけてペイントしているところが印象的でした。なんの案内線もないところに一喝入れるわけですから、もちろん勢いも大切です。しかし、けっして思いつきでやっているのではなく、頭の中でちゃんと計算してから描いているんです。しかも、よく見るとけっこう...
ラットホールギャラリー|第46回 荒木経惟個展「POLART 6000」(前編)
RAT HOLE GALLERY│ラットホールギャラリー第46回 荒木経惟個展「POLART 6000」(前編)荒木さんが名づけた「POLART」の答えとはラットホールギャラリーでは、8月20日(木)まで、荒木経惟個展『POLART 6000』を開催しています。タイトルが示すように、この個展は約6000枚におよぶポラロイド写真から構成されています。ポラロイドフィルム自体は昨年夏に生産中止となりましたが、荒木さんは膨大な数のポラロイド作品を残し、また現在も生み出しつづけています。語り=北村信彦Photo by JamandfixEdit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)写真家で終わりたいのか、それともアーティストなのか今回の個展「POLART 6000」は、荒木さんのこれまでの作品にくわえ、この個展用に新たに撮り下ろしたものをまじえての展示となっています。これだけの量のポラロイド作品が一度に見られるのは、きっと最初で最後になるでしょう。そして、こ...
ラットホールギャラリー|第47回 荒木経惟個展『POLART 6000』(後編)
RAT HOLE GALLERY│ラットホールギャラリー第47回 荒木経惟個展「POLART 6000」(後編)天才は、いい意味で子どもである今回も前回に引きつづき、現在開催中の荒木経惟個展「POLART 6000」についての話をしましょう。語り=北村信彦Photo by JamandfixEdit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)見せ場はつくりながらも、それだけじゃない今回の個展「POLART 6000」は、会場に入った瞬間、圧倒されるような迫力を感じますが、これは単に量だけの問題ではなく、ポラロイドでしかできないことをやっているからだと思います。たとえば、この6000枚という写真は、10年、20年という時間が積み重なった結果ですが、ポラロイドの性格上、ノーマルの写真よりも時間の流れを感じづらい。そこには確実に“デジタル前夜”を感じます。そして、そんな写真独特の時間の流れみたいなものをシャットアウトすることによって、写真家としてではなく、アー...
ラットホールギャラリー|荒木経惟展 「センチメンタルな旅 春の旅」
RAT HOLE GALLERY│ラットホールギャラリー荒木経惟展「センチメンタルな旅 春の旅」ラットホールギャラリーでは、6月11日(金)から7月18日(日)までの期間中、写真家 荒木経惟展「センチメンタルな旅 春の旅」を開催する。最愛の妻 “ヨーコ”の死後、彼を支えつづけた愛猫“チロ”と過ごした最後の日々を綴った80点におよぶ作品群、そこに語られるのは孤独な男のどんな言葉だろうか。Text by OPENERS「チロちゃんは春日部のおばあちゃんとこから生後4ヵ月のときにヨーコがもらった」──荒木経惟「愛しのチロ」(1990年)それから22年という長い年月、荒木のモデルをつとめた愛猫チロが2010年3月2日に他界。人間の年齢で言えば105歳という大往生だった。「あんなにオレを愛してくれた女はいない」とチロのことを話す荒木にとって、チロは早世した妻ヨーコに代わり支えとなってくれた、かけがえのない存在であった。ヨーコが亡くなってから20年、ふたたび愛するものを失う悲しみに直面した荒木...
RAT HOLE GALLERY|荒木経惟展「彼岸」ラットホールギャラリーで開催!
RAT HOLE GALLERY|ラットホールギャラリーアラーキーの最新作が約450点荒木経惟展「彼岸」荒木経惟の最新作が一堂に会す展覧会が、ラットホールギャラリーで開催される。東京の街をタクシーの窓越しに撮影したモノクロ作品、東日本大震災直後に撮影されたカラー作品、花を怪獣のフィギュアとともに撮影した作品「楽園」など、約450点が展示される。Text by YANAKA Tomomi“失った時間”に対する荒木のさまざまな想いが染みわたる作品群日本を代表する世界的な写真家 アラーキーこと荒木経惟氏の最新作品群450点あまりが一堂に会す、「彼岸」と名づけられた本展。つねに「生のなかの死」を敏感に感じとりながら、生のよろこびやノスタルジーを写真に見いだそうと試みる荒木経惟が本展で語るのは、センチメンタルな「彼岸」の世界。壁面にグリッド状に展開される約400点のキャビネ判の写真は、荒木が前立腺がん治療を受けるなか、記録的猛暑となった2010年の夏の東京をタクシーの窓越しに撮影したものだ。...
RAT HOLE GALLERY|荒木経惟展「センチメンタルな空」
空とバルコニーで愛の物語を描く荒木経惟展「センチメンタルな空」写真家 荒木経惟による個展「センチメンタルな空」が8月24日(金)から10月7日(日)まで南青山のRAT HOLE GALLERY(ラットホールギャラリー)で開催される。Text by YANAKA Tomomi個展に合わせて写真集も刊行 1990年に愛妻のヨーコが亡くなって以降、空の写真を撮影することが日課となったアラーキー。写真そのものが私小説である彼にとっては、空とは自分の心を映す鏡であり、空の写真はほかの誰のものでもない「自分の空」なのだ。映像作品「三千空(さんぜんくう)」では、自宅バルコニーから撮影された3000枚もの空がモンタージュされ、4時間にわたって大型スクリーンに投影。雲ひとつない青空、からみ合う飛行機雲、暮れゆく夕空など、表情豊かな空が見る者を包み込み、電柱や電線、家々の屋根、木々もまた荒木の“空”から切り離せない存在として表情の一部をなしている。 このほかにも、ヨーコや愛猫のチロらとさまざま...
ART|荒木経惟展『人妻ノ写真』をラットホールギャラリーにて開催
ART│15年にわたり撮影してきた人妻!のモノクロ写真700点が並ぶ荒木経惟展『人妻ノ写真』をラットホールギャラリーにて開催写真家荒木経惟(あらき・のぶよし)が15年にわたり撮影してきた“人妻”の写真。これら700点がずらりと展示される『人妻ノ写真』が、11月8日(金)から2014年1月19日(日)まで港区・南青山のラットホールギャラリーで開かれる。 Text by YANAKA Tomomi アラーキーの手により施された7色のペインティング荒木経惟のライフワークとしても知られる「人妻エロス」は、雑誌『週刊大衆』(双葉社)の連載企画として1998年にスタート。誌面を見て応募してきた人妻たちの赤裸々な姿が撮り下ろされてきた。連載開始から15年。彼が撮影してきた数百人もの人妻たちのカラー写真はこれまで連載のほか写真集などとしても発表されている。荒木がそれらのカラー写真と、並行して撮影してきた未発表の日付入りの写真を初披露する本展では、35ミリ判カメラで撮影された700点のキャビネ判写真...