ラットホールギャラリー|荒木経惟展 「センチメンタルな旅 春の旅」
LOUNGE / ART
2015年5月8日

ラットホールギャラリー|荒木経惟展 「センチメンタルな旅 春の旅」

RAT HOLE GALLERY│ラットホールギャラリー

荒木経惟展「センチメンタルな旅 春の旅」

ラットホールギャラリーでは、6月11日(金)から7月18日(日)までの期間中、写真家 荒木経惟展「センチメンタルな旅 春の旅」を開催する。最愛の妻 “ヨーコ”の死後、彼を支えつづけた愛猫“チロ”と過ごした最後の日々を綴った80点におよぶ作品群、そこに語られるのは孤独な男のどんな言葉だろうか。

Text by OPENERS

「チロちゃんは春日部のおばあちゃんとこから生後4ヵ月のときにヨーコがもらった」
──荒木経惟「愛しのチロ」(1990年)

それから22年という長い年月、荒木のモデルをつとめた愛猫チロが2010年3月2日に他界。人間の年齢で言えば105歳という大往生だった。「あんなにオレを愛してくれた女はいない」とチロのことを話す荒木にとって、チロは早世した妻ヨーコに代わり支えとなってくれた、かけがえのない存在であった。ヨーコが亡くなってから20年、ふたたび愛するものを失う悲しみに直面した荒木は、生と死のあいだを流れゆく日常は「人生という旅」であることを、写真をとおして語る。

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今回の展覧会で、荒木はチロの最後の数ヵ月を撮った作品80点を発表する。バルコニーを歩くチロ、ベッドに横たわるチロ、カメラをじっと見つめるチロ。写真に写るチロは、荒木のレンズをとおした写真にもかかわらず、まるで目の前で触れているような気にさせる。鳴いたり、甘えたり、寂しがったり……。表情豊かなチロと風景は、ラブストーリーのように流れ、荒木の深い愛情が伝わってくる。そして、チロが去ったあとの空や花の風景は、このうえなく愛しく切ないメロディーに聞こえてくるのだ。

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ラットホールギャラリーでは、今回の展覧会にあわせて写真集『センチメンタルな旅 春の旅』を刊行する。ヨーコとの最後の時間を描いた写真集『センチメンタルな旅 冬の旅』(1991年)から20年近くを経たいま、荒木は愛猫チロとの最後の時間を綴った写真集を制作した。「写真集は棺桶」であるという荒木にとって、今回の写真集は特別な意味をもつ。「センチメンタルな旅 春の旅」は、チロにとっての旅の終わりでもあり、またはじまりでもある。この世での最後を迎えるまで、荒木のためのモデルとしてつねに最高の表情をみせたチロは、荒木の唯一のミューズだったのではないだろうか。

荒木経惟展「センチメンタルな旅 春の旅」

会期|6月11日(金)~7月18日(日)
会場|RAT HOLE GALLERY
東京都港区南青山5-5-3 B1
Tel. 03-6419-3581
www.ratholegallery.com

『センチメンタルな旅 春の旅』

発売日|6月11日(金)
内容|作品80点(88ページ)
サイズ|253×182mm
価格|3990円
発行|RAT HOLE

           
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