第9回 荒木経惟氏×B.ミハイロフ氏トークショー (その1)
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2015年5月8日

第9回 荒木経惟氏×B.ミハイロフ氏トークショー (その1)

第10回 荒木経惟氏×B.ミハイロフ氏トークショー<その1>

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photo by Jamandfix

今回から2回にわたって、昨年12月の『荒木経惟展』の会期中におこなった荒木さんとウクライナの写真家ボリス・ミハイロフさんとのトークショーの模様をお伝えします。内容は、荒木さん自身による今回の展覧会の作品説明を中心に進んでいきますが、普段聞けないような話もたくさん飛び出し、僕自身これまで気づかなかった彼の写真の真髄に触れたような気がしました。(北村信彦)

photo by Jamandfix

花が枯れる直前。そこに強烈なエロスを感じるんだな(荒木)

荒木●ボリスさんの写真を見ていると、俺のは絵に近いと思うね。ボリスさんには写真を感じるな。

ボリス●僕の写真も絵ですよ。

荒木●え(絵)ー!?(笑) ボリスさんは写真をとおして人生の小話というか、そういうのを楽しんでいるのかな?

ボリス●うーん、どうかな。荒木さんはどうですか?

荒木●俺のは小話にならないよ。俳句になっちゃうんだよね。

ボリス●俳句はいいですね。

荒木●俳句には廃句、つまり句を引くというか言葉を棄てるという意味もあるんだよね。

会場内にて、ボリス・ミハイロフ氏。photo by Jamandfix

ボリス●なるほど。ところで今回の荒木さんの作品の説明を荒木さん自身から聞きたいですね。

荒木●困ったな、話作んなきゃな(笑)。じゃ、まず『花とヤモリンスキー』。花の写真というのは、アタシがずっと撮り続けているもののひとつなんだけど、考えてみると花のはじまりは、アタシの生まれ育った東京三ノ輪の浄閑寺に供えられた彼岸花なんだな。
彼岸花が枯れる直前、そこにエロスを感じる。それがアタシの花の写真のはじまり。今回はその花を白バックで撮ってみたという写真だ。しかし、ふと考えてみるとこのバックの白は、自分の中ではたぶん空なんだよね。そこでさらにアタシにとっての空とはなにかと考えてみると、妻が死んだ後、自宅のバルコニーから見る空なんだよ。

朝起きるとアタシは歯を磨くよりも先に空を撮ることによって目を磨くんだ。その空の白。まあ、花の方も彼岸花からはじまって、なんでこんなにもずっと、特にここ十数年ずーっと撮り続けているんだろうと考えてみると、これも妻の死に関係があった。実は妻が死ぬ直前、危篤の知らせを聞いて病院に行ったとき、アタシはまだつぼみのこぶしを抱えて行ったんだよね。そして10時間後、妻が息を引き取ったとき、枕元でそのこぶしの花がパッと開いた。
やっぱりアタシの花はあそこにつながっているんだろうな。ヤモリはアタシのオチンチンなんだけど、なぜヤモリかというと、ウチのチロちゃん(猫)がコイツを採ってはアタシのところにもってくる。生きてるうちは全然撮る気もしなかったけど、それがミイラになる直前、物体になる直前に惹かれたんだ。さっきの彼岸花もそうだけど、アタシはいつも死に際に惹かれるんだよね。ボリスさん、この花の写真どうですか?

photo by Jamandfix

ボリス●まさに俳句ですね。僕は昔から荒木さんの花の写真が好きだけど、荒木さん以上に花をうまく撮る人はいないんじゃないかと思っていますよ。

『LOVE by Leica』サイン入り写真集3名にプレゼント!

第9回 荒木経惟氏×B.ミハイロフ氏トークショー<その1>

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北村信彦さんのご厚意により、オウプナーズ読者に荒木経惟氏直筆サイン入り写真集『LOVE by Leica』を3名様にプレゼントいたします。ご希望の方は、openersトップページ下にある「ご意見ご要望はこちらへ」より、返信アドレスと「写真集希望」ならびにサイトに対するご意見ご要望をお書き添えの上ご応募ください。締切は1月31日(水曜)まで。抽選により、当選者には登録アドレスの方にご連絡いたします。どしどしご応募ください。(オウプナーズ編集室)

           
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