第7回:荒木経惟という写真家の本当のすごさ
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2015年5月8日

第7回:荒木経惟という写真家の本当のすごさ

第7回:荒木経惟という写真家の本当のすごさ

「花とヤモリンスキー」より。© NOBUYOSHI ARAKI

ようやく気づいた荒木さんのすごさ

前回から、いまラットホールギャラリーで展覧会をおこなっている荒木さんについてのお話をしていますが、実は荒木さんの写真を、僕が本当に理解できたのは、つい最近のことです。

荒木さんというのは、作品の数も多いですし、さまざまなコンセプトで写真を撮る人。しかし一般的には、やっぱりエロスという部分がクローズアップされています。さらに、そこに本人のキャラクターも重なって、すごく異色な強さというものが前面に押し出されている作家だと思うんです。僕自身も、荒木さん=強烈なエロス、みたいな見方をしていたのは事実です。

ところが、先日、両国の「江戸東京博物館」でおこなわれている荒木さんのエキシビション『東京人生』を見たら、全然違うんですよ。内容的には1962年からいまにいたるドキュメントで、エロスがマイナスされた荒木さんなんですが、それを見て、はじめて本当のすごさを感じました。

それはもう、真似のできないすごさです。当たり前の話なんですが、天才ですね。そして、ある意味これまでの僕は、あのタレント性ともいうべきアラキズムのフィルターを通して、作品を見ていたんだな、と思いました。

「緊縛写巻」より。© NOBUYOSHI ARAKI

現実的なロマンチズム

僕があらためて発見した荒木さんの写真は、とてもロマンチックでした。それも現実的なロマンチズム。

いわゆるいい写真というのは、こういう写真のことをいうのだと思います。森山大道さんの写真にもロマンチズムを感じますが、それは破壊されたエロティズムとでもいうべきものです。それに対し、荒木さんのは、もっとほのぼのしている。そういう意味では、彼らふたりは対極的。しかし、対極にいながら、それが裏返るどこか一点で共通するといった、関係性のおもしろさも、また感じます。でも、正直いって『東京人生』を見るまでは、そのことに気づいていませんでした。

僕としては、遅ればせながらも、いま気づくことができてよかったな、と思っています。

■荒木経惟作品展

日程:2006年11月22日(水)~12月27日(水)
時間:12:00~20:00(月曜定休)
場所:RAT HOLE GALLERY(ラットホール ギャラリー)
港区南青山5-5-3 HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
TEL:03-6419-3581

内容:本展は、「花とヤモリンスキー」、「LOVE」、「緊縛写巻」、「アラキネマ」の4つのシリーズによって構成されます。
同時に、「緊縛写巻」をモチーフにして制作された「アラキネマ」(アラーキー写真の映像版)の最新シリーズ「緊縛色淫」も初展観されます。
本展と同時に、作品集『LOVE by Leica』、および、描きおろし絵画によるTシャツなどが発売予定です。

RAT HALE GALLERY:http://www.ratholegallery.com
HYSTERIC GLAMOURオフィシャル:http://www.hystericglamour.jp
Bueno! Books:http://www.buenobooks.com

           
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