RAT HOLE GALLERY|荒木経惟展「彼岸」ラットホールギャラリーで開催!
RAT HOLE GALLERY|ラットホールギャラリー
アラーキーの最新作が約450点
荒木経惟展「彼岸」
荒木経惟の最新作が一堂に会す展覧会が、ラットホールギャラリーで開催される。東京の街をタクシーの窓越しに撮影したモノクロ作品、東日本大震災直後に撮影されたカラー作品、花を怪獣のフィギュアとともに撮影した作品「楽園」など、約450点が展示される。
Text by YANAKA Tomomi
“失った時間”に対する荒木のさまざまな想いが染みわたる作品群
日本を代表する世界的な写真家 アラーキーこと荒木経惟氏の最新作品群450点あまりが一堂に会す、「彼岸」と名づけられた本展。つねに「生のなかの死」を敏感に感じとりながら、生のよろこびやノスタルジーを写真に見いだそうと試みる荒木経惟が本展で語るのは、センチメンタルな「彼岸」の世界。
壁面にグリッド状に展開される約400点のキャビネ判の写真は、荒木が前立腺がん治療を受けるなか、記録的猛暑となった2010年の夏の東京をタクシーの窓越しに撮影したものだ。
これまでも荒木は、「クルマド」シリーズとして同様の撮影を長年撮りつづけてきたが、今回展示される作品は200ミリ望遠レンズで撮影されており、街の日常的な光景に「喪失感」を重ねながら、彼岸を見つめるかのように、あるいは彼岸から見つめるかのように、荒木はさまざまな人びとの姿にレンズを向けている。
長年連れ添った愛猫チロの死──
震災後に撮影されはじめた作品が約40点、そして「楽園」シリーズの大型プリントは、10点展示。「現世そのものが彼岸。つまり、写真そのものが彼岸なんだ」と、3月11日以降、しきりに口にする荒木にとって、両作品は大地震以降のみずからの写真の在り方を示すものとなっている、といっても過言ではない。
色鮮やかで情熱的な花と、自宅のバルコニーに住む怪獣のフィギュアや人形が登場する作品には、「彼岸のなかにも楽園がある」と語る荒木ならではの、生死感のあらわれを見てとることができる。
本展の写真はすべてベストセラー『愛しのチロ』でも知られる、長年連れ添った愛猫チロが死を迎えた昨春以降に撮影されている。それぞれの写真には、“失った時間”に対する荒木のさまざまな想いが染みわたっていると言えるだろう。