ラットホールギャラリー|第46回 荒木経惟個展「POLART 6000」(前編)
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第46回 荒木経惟個展「POLART 6000」(前編)
荒木さんが名づけた「POLART」の答えとは
ラットホールギャラリーでは、8月20日(木)まで、荒木経惟個展『POLART 6000』を開催しています。タイトルが示すように、この個展は約6000枚におよぶポラロイド写真から構成されています。
ポラロイドフィルム自体は昨年夏に生産中止となりましたが、荒木さんは膨大な数のポラロイド作品を残し、また現在も生み出しつづけています。
語り=北村信彦Photo by JamandfixEdit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)
写真家で終わりたいのか、それともアーティストなのか
今回の個展「POLART 6000」は、荒木さんのこれまでの作品にくわえ、この個展用に新たに撮り下ろしたものをまじえての展示となっています。
これだけの量のポラロイド作品が一度に見られるのは、きっと最初で最後になるでしょう。そして、こうやって眺めてみると、明らかに“蓄積によって見えてくるもの”を感じます。それは、確実に“写真”を超越したものです。
写真家・荒木経惟ではなく、もっと大きい意味でアーティストとしての荒木さんが見えてくる。もちろん写真家もアーティストではありますが、写真家自身はつねに両者のちがいを意識しているところがあります。その垣根があるとしたら、それを超越できるかできないかは大きな問題です。
写真家で終わりたいのか、それともアーティストで終わりたいのか。今回の展示は、その答えがすごくいいカタチで出た作品群だと思います。
写真を超えたパーソナルな表現としてのポラロイド
これまでも、さまざまな写真家によってポラロイド展自体はたくさん開催されてきました。しかし、今回の展示は、通常のポラロイド展とはまったく印象が異なります。これは現段階での荒木さんの最終兵器といえると思いますが、それがポラだったというのは、僕にとってはちょっと意外でした。しかし、実際に作品と対峙すると、荒木経惟というアーティストのパーソナルな部分がより鮮明に見えてきたのも事実です。
個展に合わせて写真集も出したんですが、本で見るのと会場で見るのとでは全然ちがう。本の場合、やっぱり一枚一枚の写真として見ますが、この空間に入ると、まさに彼が名づけた「POLART」の答え、つまり写真を超えた表現が見えてくるんです。
偶然と必然がすべてリンクしてひとつの世界をつくっている
もちろん、全体を構成する一枚一枚の写真についても、独自の試みが感じられます。
たとえば、ポラロイドってそもそも撮ったその場で結果が見えるというものなのに、そこにあえて時間差を感じさせることをしていたり、像が映っていないポラロイドにペイントだけをほどこしてみたり。しかし、被写体ではなく色味だけで並べるとか、テーマで分類したと思うと、一方ではまったく未分類だったりとか、さらなる遊び心を掛け合わせて展示している。
つまり、個と全体、偶然と必然が全部リンクして、ひとつの世界がかたちづくられているんです。
荒木経惟個展「POLART 6000」
2009年8月20日(木)まで開催中
ラットホールギャラリー
12:00-20:00(月曜休)
RAT HOLE GALLERY & BOOKS
東京都港区南青山5-5-3-B1
Tel. 03-6419-3581
http://www.ratholegallery.com