How to see design
「How to see design」に関する記事
第8回 ファッションの視点で捉えたアートとプロダクト(2)
第8回 ファッションの視点で捉えたアートとプロダクト(2)Blessはファッション・ブランドにもかかわらず、つねにライフスタイルを取り巻く環境とアート性が感じられる。時に小スペースで生活するためのユニット家具を発表したり(No.22:永久的な家庭生活機関とよんでいる)、上等なミンクのファーで出来たハンモックを制作したり、通常のプロダクトデザイナーの固定概念からは超越したアプローチをしているのが興味深い。また、さらにインスタレーションを表現手段にしているところも、現代的なファッションデザイナーの傾向であるといえる。ファッションからインスタレーションへ1997年に活動を開始したBlessはそのアート性を買われ、98年にはマルタン・マルジェラのコレクション起用にはじまり、ズッカやリーバイス、パリのセレクトショップ「コレット」などのプロジェクトにかかわり、ファッション界でもその活動は注目されている。そしてこれまで多くのインスタレーションを手がけてきた。昨年の夏に青山のズッカで無数の額装され...
柳本浩市|第20回 根本崇史氏に「エンターテイメントとデザイン」をきく(前編)
第20回 根本崇史氏に 「エンターテイメントとデザイン」 をきく (前編)今回紹介するのは根本崇史さんです。最近とくに若いデザイナーのなかに、メーカーなどで働きながらフリーでも活躍する方に会う機会が多くなっていますが、根本さんもそのなかのひとりです。彼に影響を与えた幼少時代からの環境や企業とフリーの両立について聞いてみたいと思います。Text by 柳本浩市多大な影響を受けたマイケル・ジャクソン柳本 まずは根本さんがどのような幼少期を過ごしたかからお聞かせいただけますか?根本 父親がエンジニアだったこともあり、幼いころからポータブルな電気製品を身近に感じていて、玩具かわりにして遊んでいました。また母方の祖父が旋盤工で工場を経営していたので、そこに寄っては、鉄が削られていくようすをよく見にいっていましたね。そう考えると、「モノづくり」が身近にある環境でした。2歳になると、井深 大氏が私的に創立した幼児開発センタ―「EDA」に通うようになりました。幼稚園に上がるまで通っていたのですが、...
柳本浩市|第21回 根本崇史氏に「エンターテイメントとデザイン」をきく(後編)
第21回 根本崇史氏に「エンターテイメントとデザイン」をきく(後編)前回に引きつづき、根本崇史さんにお話しをおうかがいします。小さいモノからメーカー相手の仕事、そしてミラノサローネ出展にいたるまでの経緯を語っていただきました。Text by 柳本浩市メーカーとの仕事で学んだこと柳本 社会のプロセスを知る上でインハウスデザイナーになってみて、個人の活動への影響はありましたか?根本 まずはクオリティ管理。「こうすれば、ガタツキがなくなる」といった製品に落とし込むさいのこまかい配慮ですね。また個人の活動をすることで、メーカーという恵まれた環境で仕事をさせていただているのを実感しますね。また相互に作用しているのは「視点」です。メーカーで勤務している自分と「PORE」の自分がいるので。たまに会社でも「フリーの意見っぽい」と言われることもありますし。じつは個人の活動をはじめたとき、フリーのデザイナーによく見られる「作家性」に憧れていました。作ったモノ同士が線で繋がっている感じが格好良く思えて。...
第9回 デザインで見るオリンピック 前編
第9回 デザインでみるオリンピック 前編この夏を駆け抜けるような一大イベントだった北京オリンピックを記念して、こんかいのHow to see about designは特別編「デザインでみるオリンピック」を。4年に一度の祭典の変遷とそのデザインの歴史。前編ではオリンピックとデザインが共に転換期を迎えた「東京オリンピック」の話を中心に展開していきます。聞き手・構成=高橋猛志、武井正樹Photo by Jamandfixこんかいの「デザインでみるオリンピック」特集は東京、メキシコ、ミュンヘンを中心に取りあげようと思います。じつはこれらの三大会の流れに沿うように、現代の「デザイン」というものは確立されていきました。東京五輪から遡ること4年前、デザインの転換期と重なった重要な会議があり、その後のデザイン界に多大な影響を与えることになっていきます。まずはそのあたりの話から入っていきたいと思います。4年後を見据えたデザインの転換期1960年、「世界デザイン会議」が東京にて開催されました。世界じ...
第10回 デザインで見るオリンピック 中編
第10回 デザインで見るオリンピック 中編How to see about design特別編「デザインでみるオリンピック」中編では、メキシコ五輪を紹介します。若干20代でメインデザイナーに起用されたランス・ワイマン、当時のメキシコの文化背景にも迫ります。いまではたいへん希少ともいえるグラフィックワークをお楽しみください。聞き手・構成=高橋猛志、武井正樹Photo by Jamandfix1968年のメキシコ五輪は、東京五輪の発展系。その当時のメキシコは後進国だったため、メキシコ文化を知らしめようという意図もあったようです。それを象徴するかのような色使いや、模様が導入されているのがビジュアルをみると読みとれます。プロデューサーはペドロ・ラミレス・バスケス。ロゴのデザインを手がけたのはアメリカのデザイナー、ランス・ワイマンです。当時20代でメインデザイナーに起用されました。彼はもともとミッドセンチュリーを代表するデザイナー、ジョージ・ネルソンの事務所「ジョージ・ネルソン アソシエイツ...
第11回 デザインで見るオリンピック 後編
第11回 デザインでみるオリンピック 後編How to see about design特別編「デザインでみるオリンピック」。東京、メキシコとつづきラストを飾るのは「ミュンヘン五輪」のデザイン。「デザインの極致」といわれたオトル・アイヒャーのグラフィックデザインを中心にお届けします。三大会のデザイン変遷から見えてきたオリンピックの未来の姿とは……。聞き手・構成=高橋猛志、武井正樹Photo by Jamandfix東京、メキシコときて、ミュンヘン五輪でオリンピックデザインは完成形を迎えたといえるでしょう。デザインを担当したのはオトル・アイヒャー。バウハウスの再建をもとに戦後設立されたウルム造形大学のグラフィック部門を統括したデザイナーです。左右共に駐車券。メキシコ大会まではデザインしたというレベルだったが、この大会からは一般の目に見えない部分にまで統一したデザインが踏襲されている。それもこの写真のように大会関係者、選手、一般観客など個別にデザインがわけられているミュンヘン大会の競技...
柳本浩市|第12回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(前編)
第12回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(前編)最近、80年代前後に生まれたデザイナーと仕事で絡むことが多くなっています。ただ、実際会うときは仕事の話が中心になるので、彼らが本来もっている顔をあまり理解していない部分があります。これから次世代を担うデザイナーたちと対話をしながら、彼らのパーソナリティを引き出していきたいと思います。Text by 柳本浩市よし、オランダへ行こう!まず一人目は、studio noteを主宰する寺山紀彦さんです。仕事でかかわわる若いデザイナーのなかでも、少し発想の起点が違っていて面白いのです。その発想はどこから生まれるのか? 彼に聞いてみたいと思います。柳本 寺山さんとはまだ個人的な話をしたことがなかったので、聞いてみたいことがたくさんありました。なぜプロダクトデザインを学ぼうと思ったのか、また留学先にオランダを選んだ理由を教えていただけますか?寺山 もともと東京で建築の勉強をしていましたが、建築の場合は模型だけで終わってしまうことの方が多く。それが...
柳本浩市|第13回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(中編)
第13回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(中編)studio noteを主宰する寺山紀彦さんの発想に迫る第2回は、彼が修行を積んだオランダデザインの巨匠、リチャード・ハッテンの事務所の話から――Text by 柳本浩市仕事は18時にきっちり終わり。仕事中はみな18時以降のことを考えているんです(笑)寺山 当時のリチャード・ハッテンの事務所は、リチャード以外ではスタッフがふたり、インターンがひとり。課題の与え方は、突然リチャードが僕に近づいてきて、「ちょっとこれ考えてみて。明日プレゼン」とかいきなりで(笑)。「ちょっと前に言ってほしかった……」と思いながら、いつも徹夜してつくっていましたね。それでOKもらったり、ダメだったり、厳しかったですね。柳本 リチャードのところでは、スキルを学んだ感じ?寺山 そうですね。僕は主にコンピュータ作業を担当していました。3Dをよくつくりました。考え方もスキルも学べて、なによりもリチャードをはじめスタッフが働いている様子を見ることができたのが大きか...
柳本浩市|第14回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(後編)
第14回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(後編)studio noteを主宰する寺山紀彦さんの発想に迫る第3回は、彼が在籍したアイントホーフェン(Design Academy Eindhoven)から、彼の代表作である「f,l,o,w,e,r,s」や「r,o,o,t」、さらに今秋の展覧会まで語ります。Text by 柳本浩市日本的なアプローチについてかんがえる柳本 寺山さんがアイントホーフェン(Design Academy Eindhoven)に在学中の校長先生はリー・エーデルコート(※1)ですか?寺山 そうですね。柳本 校長の影響力というのは、アイントホーフェンの校内に強くあるのですか? というのも、以前、オランダの著名なデザイナーたちに「影響を受けた人は?」と聞くと、出身校の校長の名前をあげる方が多かったので。寺山 校長先生は、審査や卒業制作の発表時に出てくるといった感じでしたね。たしかに影響力はあったと思いますが。校長といえば、僕が卒業制作でつくった「Pick your ...
連載・柳本浩市|第22回 橋詰 宗氏に「デザインと教育」をきく(前編)
第22回 橋詰 宗氏に 「デザインと教育」 をきく(前編)今回は、グラフィックデザイナーでは初のゲストとなる橋詰 宗(はしづめそう)さんです。橋詰さんはグラフィックにとどまらず、ブックデザイン、さらにはイベントなどを主催し、モノからコトを生み出しています。そういった今後のクリエイティブのあり方にとってスタンダードになりうる興味深い話を3回に渡って聞いてみたいと思います。Text by 柳本浩市武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科で試みたこと柳本 橋詰さんがグラフィックデザインに興味をもったきっかけから、日本での学生生活についてお話いただけますか?橋詰 もとをたどると音楽が好きだったことが、デザインに傾倒するきっかけでした。よくあるパターンですね(笑)。10代のころはレコード屋さんに行くのが日課で、音はもちろんのこと、店内の壁に掛けてあるレコードジャケットを見ては、視覚的なおもしろさに惹かれまして。その後、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科に入学しました。当時は、Webが産声をあげ、フラッ...
連載・柳本浩市|第23回 橋詰 宗氏に「デザインと教育」をきく(中編)
第23回 橋詰 宗氏に 「デザインと教育」 をきく(中編)今回は、グラフィックデザイナーの橋詰 宗(はしづめそう)さんをお迎えして、2年間のRCA(ロイヤルカレッジ・オブ・アート / ロンドン王立芸術学院)での学びから得たこと、考えたことなどを聞いてみたいと思います。文=柳本浩市論文のタイトル「エンプティネス オブ デザイン」にこめられた思い橋詰 論文のタイトルに「エンプティネス オブ デザイン」という言葉が頭に浮かんだとき、この思想そのものは、東洋的思想、たとえば禅や俳句などとコネクトしているのかという認識がありつつも、ヨーロッパ人であるチューターには「あなたの言っていることがわらない」と言われる始末で(笑)。だけども「エンプティネス」を自分から積極的にあたらしいものをつくりださないという仮定で考えていくと、Åbäke(ロンドンを拠点に活躍中のデザインスタジオ)のやっていることや、ロンドンで身をもって体験した生活にも、どこか繋がっているのではと思うようになりまして。そこでひたすら...
連載・柳本浩市|第24回 橋詰 宗氏に「デザインと教育」をきく(後編)
第24回 橋詰 宗氏に 「デザインと教育 」をきく (後編)グラフィックデザイナーの橋詰 宗(はしづめそう)さんをお迎えして、3回にわたった対談の最終回は、いまの時代のコミュニケーションと、今後の活動についてうかがいます。Text by 柳本浩市オープンソースの仕組みをつくりたい──柳本柳本 いきなりですが……、橋詰さんは「営業活動」はしていますか?橋詰 営業活動はとくにしていないですね。以前、Åbäke(ロンドンを拠点に活躍中のデザインスタジオ、橋詰氏RCA在籍時のチューター)が僕たちが企画したレクチャーのなかで「これまでかかわってきたプロジェクトの多くは、RCAをふくめてこれまでの長い時間で培われた関係性から派生してきている」と発言していたのですが、それに強い共感をもちました。と同時にいま「場」をつくることに念頭をおきながら活動をしているなかであたらしく出会ったひとたちとプロジェクトをおこなう機会が日に日に増えていることを考えると、日々の出会いがあたらしい仕事への架け橋になって...
第3回 Jaime Hayónの新地中海バロック(1)
第3回 Jaime Hayónの新地中海バロック(1)今年1月、パリでスペインの磁器メーカー『リヤドロ』の新作が発表され話題になった。テーマは『Re-Deco』。過去にリヤドロが制作した名作を現代風にアレンジしたタイトル通りの作品群である。この作品を手がけたのが2006年からリヤドロのアート・ディレクターに就任したJaime Hayón。これから2回にわたってリヤドロの作品とJaimeについて紹介します。Re-Deco 高級陶磁器の再解釈Jaime Hayón、スペイン読みでハイメ・アジョンという。30代前半のこの若いデザイナーが、高級磁器ブランドのディレクターに就任する話を聞いて僕は驚きを隠せなかった。スペインを代表するブランドが30代そこそこの数年前まで無名にちかかった若者を起用したからだ。ハイメはこれまで、BDバルセロナなど高級バス・トイレタリー用品を製造するメーカーから陶磁器の作品をリリースしており、当初はあの高級版にしかならないのではと僕は思っていた。その予想を1月の発表...
第1回 アートとデザインの急接近(1)
第1回 アートとデザインの急接近(1)このところ世界の動きを見ていると、アートとデザインが急接近しだしている。10年以上前までデザインは一部の愛好家のものでしかなかった。そして戦後のデザインはアートと呼べるものでもなかった気がする。その流れが10年前くらいからオークションなどにも取り上げられここ2、3年で美術品と同等の価値基準を持つまでにもなってきている。この流れはなぜ起こったのだろう。毎回、デザイン+アートの作家や作品を紹介しながら、この世の中の動きを捉えていきたいと思う。初回は2回に分けてこの現象を大まかに紹介してみたい。写真=Jamandfix すべてオークションカタログSOTHEBY'S "Design since 1935" LONDON Oct,1996CHRISTIE'S "modern design" SOUTH KENSINGTON July,1997Wright "modern design" CHICAGO March. 2002 デザイン・マニアか...
第2回 アートとデザインの急接近(2)
第1回 アートとデザインの急接近(2)10年ほど前からメジャーオークションで取り上げられるようになったモダンデザイン。当初は一部のマニアやコレクターを悦ばせるだけの存在だったが、一部のセレブの間でステイタスとなりはじめたのをきっかけに一般の富裕層にも飛び火。また、ebayなどの開かれたネットオークションの普及もあって、デザインオークションの入札者が劇的に変わってきている。彼らはモノの相場ではなく、自己満足の金額で落札し始めたことによって、今までの既成価値を遥かに超えたアートと同等の金額で売買されるようになってきている。写真=Jamandfix 表紙の椅子が1億円で落札されたもの。SOTHEBY'S "IMPORTANT 20TH CENTURY DESIGN" NEW YORK June,2006オークションカタログ MARK NEWSON展カタログ(発行:GAGOSIAN GALLERY) 2007 (資料協力:ELMO LEWIS) ビジネス化するデザイン+アート昨年夏、...