クルマ魅力探究
「クルマ魅力探究」に関する記事
MAZDA DEMIO|マツダ・デミオ|第14回 (後編)|「デミオは、ベーシックなヨーロッパ車」
第14回 マツダ・デミオ(後編)「デミオは、ベーシックなヨーロッパ車」フォード・グループの一翼を担うマツダ。3代目「デミオ」の大変身も、グローバル戦略の一環とされる。見ちがえるほどよくなったと評判の新型は、“世界のコンパクトカー激戦区”を意識してつくられた。文=下野康史写真=マツダ軽量化による気もちよさ3代目「デミオ」の大きなテーマは「軽量化」である。開発段階からそれを心がけた結果、1.3リッター、1.5リッターいずれもほとんどのグレードが車重1000kg以下におさまる。おかげで、新車購入のとき払う重量税(3万7800円)は、白いナンバーでいちばん安い。「トヨタ・ヴィッツ」や「日産マーチ」や「ホンダ・フィット」は、ほとんどのモデルが1トン超だから、5万6700円になる。軽量化がもたらしたのは、そんな細かい現世御利益だけではない。車重だけでなく、乗っても軽いのが、ライバルに差をつけるデミオの大きな魅力である。最近のロードレーサー(自転車の話です)は、フレームにカーボンやアルミを採用し...
Mercedesbenz|メルセデス・ベンツ Cクラス ワゴン|第20回(後編)|「正しいステーションワゴンを問う」
第20回 メルセデス・ベンツCクラス ステーションワゴン(後編)「正しいステーションワゴンを問う」1990年代初頭に起きたワゴン・ブームは、バブル崩壊後のミニバンの勃興で歴史の1ページへと追いやられた。そしてときは2008年。メルセデス・ベンツの新型「Cクラス ステーションワゴン」に乗り、あらためてステーションワゴンの存在意義を問うてみた。文=下野康史Photo by Mercedes Benzセダンと変わらない軽快な操縦性能 1.8リッターにスーパーチャージャーを組み合わせた「C200コンプレッサー・アバンギャルド」に乗ってみると、とてもよかった。いちばん感心したのはハンドリング(操縦性)で、アジリティ(俊敏)を謳い文句に掲げてデビューしたセダンと、その点ではまったく遜色ない。ルーフを後ろまで延ばしたワゴンは、当然、セダンより車重が増える。Cクラスも同グレード比較でプラス60kg。大人ひとりぶん重い。カーゴルームの荷重を想定して、足まわりもセダンより硬めにチューンされる。にもかか...
TOYOTA iQ|トヨタ IQ|第26回 (後編)|もっともエコ・コンシャスなクルマの1台
第26回 TOYOTA iQ(後編)もっともエコ・コンシャスなクルマの1台「脱・石油」「離・石油」の時代に、トヨタがリリースしたマイクロカーiQ。新世代のプレミアムカーを謳う同車の走りやいかに。文=下野康史写真=トヨタ自動車高速道路でのすぐれたスタビリティ短いノーズに収まるエンジンは、ヴィッツやパッソに使われている1リッター3気筒DOHC。変速機もおなじみのCVTだ。停車していると、3気筒特有のかすかな振動はあるが、パワーは必要にして十分だ。遮音性の高いフロントガラスを採用するなどして、静粛性にも留意している。乗り心地はスマートより快適だ。ホイールベースが短いクルマにありがちな、ピョコピョコした揺れはない。寸詰まりでも、全幅はしっかり広くとられているので、操縦性は安定してる。横風に対する抵抗力など、高速道路でのスタビリティはリアエンジンのスマートよりすぐれる。狭い道でUターンしてみると、小回りもスマートよりきくので驚いた。ボディサイズは全長2985×全幅1680×全高1500mm。...
TOYOTA iQ|トヨタ IQ|第25回 (前編)|自動車のヒエラルキーを打破するクルマ
第25回 TOYOTA iQ(前編)自動車のヒエラルキーを打破するクルマ「脱・石油」「離・石油」の時代に、トヨタがリリースしたマイクロカーiQ。ボディやエンジンの大小を基準としたクルマ界のヒエラルキーに一石を投じる、新世代のプレミアムカーの真価とは。文=下野康史写真=トヨタ自動車軽自動車より40cmも短いボディお金持ちはデッカいクルマに乗る。これはまあ、“常識”と言ってもいいだろう。お金持ちは燃費の悪いクルマに乗る。これもまた必然的に常識とみなしていいだろう。デッカいクルマは燃費が悪いからだ。そもそもデッカいクルマが買えるお金持ちなら、燃料代に四の五の言わないはずである。それが証拠に、価格は3千万円するが、そのかわりガソリン1リットルで100キロ走れる高級セダン、なんてクルマは存在しない。やって出来ないことはなかったと思う。存在しなかったのは、およそ必要性がなかったからだ。抑揚のある面構成やシャープなウェストラインなど、優れたデザインが施されたボディは、軽自動車より40cm短いにこ...
Mercedesbenz|メルセデス・ベンツCクラス ワゴン|第19回 (前編)|「中身は同じ、違いは……」
第19回 メルセデス・ベンツCクラス ステーションワゴン(前編)「中身は同じ、違いは……」躍動するランドスケープデザインメルセデスのワゴンといえばアッパーミドル「Eクラス」が主役だったが、近頃はひとまわり小さい「Cワゴン」が頭角をあらわしている。7年ぶりにフルモデルチェンジし、4月に発売された新型Cクラス・ステーションワゴンに乗って、正しいワゴンの姿を考えてみた。文=下野康史Photo by Mercedes Benz「エレガンス」か「アバンギャルド」か新型「メルセデス・ベンツCクラス」の新趣向は、2種類のボディをそろえることである。控えめな「エレガンス」と、スポーティな「アバンギャルド」。“パッと見”いちばん違うのはフロントマスクで、セダンの落ち着きをもつエレガンスに対して、アバンギャルドの顔はメルセデス・ファミリーのなかでもスポーツカーやクーペの系統だ。フロントグリルに埋め込まれたスリー・ポインテッド・スターの“大きさ”で選ぶならアバンギャルド、ボンネット先端に立体エンブレムが...
Smart fortwo|スマート・フォーツー|第18回 (後編)|「Smart makes you smart」
第18回 スマート・フォーツー(後編)「Smart makes you smart」新型になり格段によくなったという「スマート」。ただカワイイだけではない、変わっているだけではない、本当の魅力はどこにあるのか? 2台のスマート(旧型)を乗り継いだオーナーが語る。文=下野康史Photo by Smart「フォーツーカブリオ」。センターコンソールにあるスイッチで屋根を自動開閉。左右のルーフフレームを手動で取りはずせば、ご覧のとおりフルオープンに。“ミニ・ポルシェ911”と思うほど初代「スマート・フォーツー」の最大の弱点だった変速機。マニュアルトランスミッションをベースにクラッチ操作を機械が行う「ソフタッチ」は、2代目に乗ってみると格段に進化して、いまや普通のオートマチックと大差ない。ターボキックがせせこましかった先代のエンジンも、自然吸気大排気量化によって、扱いやすくなった。サスペンションは相変わらず硬めだが、乗り心地はだいぶカドが取れて、荒れた路面でも直接的にガツンとくるショックはな...
VOLVO|ボルボC30|第10回 (後編)|「いちばんオススメのボルボ」
第10回 ボルボC30(後編)「いちばんオススメのボルボ」ボルボにしてはカッコよすぎる?スポーティすぎる?いやいや、じつは「C30」は、歴史からしても走りからしても、とってもボルボなクルマなのである。文=下野康史Photo by Volvo Carsそれが大人のC30ボルボにしてはカッコよすぎる――「C30」を見てそう感じる人もいるだろうが、歴史を振り返ると、このデザインもナットクなのである。「P1800」プロトタイプ(1960年)1986年登場の3ドア・ハッチバック「480」、もっと遡って、1960年代に人気を博した2ドアクーペ「P1800」。いずれも「ボルボ=ワゴン」のイメージが強い日本では知る人ぞ知るスポーティ・ボルボ路線に、このC30は正しく乗っているのだ。純血時代は、とりわけゆっくりした時間の流れを刻んできた北欧メーカーが、昔からときどき思い出したようにつくってきた「カッコイイ系ボルボ」である。だから、初めてこのスタイルを見たとき、ぼくなんかむしろなつかしい気がした。ター...
VOLVO|ボルボC30|第9回 (前編)|「ボルボにしてはカッコよすぎる!?」
第9回 ボルボC30(前編)「ボルボにしてはカッコよすぎる!?」「ボルボといえばワゴン」、というイメージが定着しているわが国だが、セダンやSUV、そして今回紹介する新型「C30」のようなコンパクト・ハッチもある。個性的なスタイリングをもつこのニューモデルに乗り、下野康史が感じたこととは……。文=下野康史Photo by Volvo Cars北欧ボルボはフォード・ファミリーサッカーの三浦知良が、一時、クロアチアのザグレブでプレーしていたころ、たまたまボルボの試乗会があって、現地を訪れた。クロアチアの首都である。夜、飛行機で入る予定が、濃霧による空港閉鎖で急遽、変更になり、お隣オーストリアのグラーツに降りてから、バスで国境を越えた。陸路を揺られること300km、深夜、やっとのことでホテルに着く。お湯の出が悪いシャワーをあきらめて、そのままベッドでうたた寝をすると、明け方、つけっぱなしにしていたイギリスのテレビ局「BBC」で、ボルボのニュースが流れていた。クルマや工場の映像に、見覚えのあ...
NISSAN GT-R|日産GT-R|第22回 (後編)| 翻訳不可能な性能に、すべてを捧げるクルマづくり
第22回 日産GT-R(後編)翻訳不可能な性能に、すべてを捧げるクルマづくりコンピューターゲームめいて高級GTである「日産GT-R」だが、注釈もいる。始動後、エンジンが暖まるまでは、変速機や駆動系からメカノイズやショックがけっこう盛大に出る。このときばかりは、デートカーと呼ぶにはちょっと物騒だ。でも、水温計の針が上がると、ウソのように静かになるのが“機械馬”のようでまた愛しい。各部のオイルが暖まるまでは、音やギクシャクが出る旨、トリセツにもちゃんと明記されている。トヨタ車なら、ここまでのワイルドさは許されなかったはずだ。このレベルが役員会で通るのは、やはり長年にわたるスカイラインGT-Rの伝統があったればこそだろう。スピードメーターの目盛りが340km/hまで刻まれていても、ほかの国産車とおなじく、GT-Rも180km/hでスピードリミッターが作動する。だが、日本国内のサーキットやテストコースに着いて、車内で簡単な入力を行うと、その電子的足かせを解除することができる。カーナビの位置...
最新軽自動車ベスト3|第6回 (後編)|「安っぽくなく、オタクで、スポーティ」
第6回:最新軽自動車ベスト3(後編)「安っぽくなく、オタクで、スポーティ」長さ3.40m以下、幅1.48m以下、高さ2.00m以下、排気量660cc以下---軽自動車に課せられた制限をクリアしながらいかに魅力的な商品に仕立てるか、軽自動車メーカーの腕の見せ所である。下野康史があげた軽ベスト3。お薦めの所以とは……。文=下野康史写真=三菱自動車/ダイハツ工業一般的には車両前部に置かれるエンジンを、後輪車軸前にマウントした「三菱 i」。最近の軽にしては珍しいレイアウトで、広い車内や斬新なデザインを実現した。軽の安っぽさがない「i」「三菱 i」は、このところ、街でやたらと目につく。実際、よく売れているが、なにより個性的なカタチなので、1台で3台分くらい目立つ。珍しいRR(リアエンジン/リアドライブ)方式をとるこのクルマ、スマートと縁が深い。開発中、三菱はダイムラー・クライスラーと資本関係にあった。iのエンジンはNAとターボの2種類。トランスミッションは4段オートマチックのみ。後輪駆動と4...
BMW 335iクーペ| ビーエムダブリュー|第2回 (後編)|「ドライバーが感じるレスポンスの速さ」
第1回:BMW 335iクーペ(前編)「ドライバーが感じるレスポンスの速さ」いきなりチェロから始まった連載、2回目でようやく本題に。試弾しただけで「ワッ、すげェ!」と思わせるチェロに相通ずる、「335iクーペ」の魅力とは……。文=下野康史文=BMW335iクーペの心臓、306馬力を発生する直噴3リッター直6ツインターボ。写真下側、波打つエグゾーストパイプに埋もれるかたちで小型ターボ・チャージャーが備わる。大型1基ではなく、小さなターボを2基とすることで、レスポンスのよさを追求した。実用的で、速い「BMW 335iクーペ」は、まれにみる“速いクルマ”である。フル加速すると、静止状態から100km/hまで、わずか5.7秒で到達する。2ドアクーペでありながら、大人4人がちゃんと座れる。しかも、リアシートを倒してトランクと貫通させれば、前輪を外したロードレーサー(自転車)が1台積めるほどの実用性をもちながら、「ポルシェ・ケイマンS」並みの駿足を誇るのである。だが、ここで言う速さとは、単にそ...
NISSAN GT-R|日産GT-R|第21回 (前編)|世界一速い日本車の真価
第21回 日産GT-R(前編)世界一速い日本車の真価日本車のなかできわめて純度の高いジャパニーズ・カーはどれか? という問いに、下野康史は「GT-R」の名をあげる。2007年の東京モーターショーで華々しくデビューした“スカイラインGT-R”あらため“日産GT-R”。時としてポルシェをも凌駕するパフォーマンスの先にある、このクルマの本当の価値とは。文=下野康史写真=日産自動車世界一速い日本車発売から半年以上が経ち、首都圏の路上でも「GT-R」をたまに見かけるようになってきた。先日も、自動車メーカーの試乗車で高速道路の合流車線を加速して本線に入ったら、すぐ前を走っていたのがGT-Rだった。乗っていたのは中年のドライバーだ。この内容でこの価格は、ひょっとして世界一お買い得なクルマではないかと思うが、安いといったって、高い。ユーザーの平均年齢が高くなるのは仕方ないだろう。日産GT-Rは、世界一速い日本車である。3.5リッターV6ツインターボ・エンジンは、量産日本車史上最高の480馬力を発生...
PORSCHE|ポルシェ 911ターボ|第16回 (後編)|「まさに感動超大作」
第16回 ポルシェ911ターボ(後編)「まさに感動超大作」ポルシェの代名詞「911」のトップモデル「911ターボ」。その最新型“タイプ997”に試乗した。乗りはじめこそ芳しくなかった印象が、山道で走り出すと一転……。文=下野康史Photo by Porsche最初は退屈だった3.6リッター水平対向6気筒に新しいターボ・システムを搭載した最新型「911ターボ」は、480psを誇る。このくらいのパワーになると、左様ですかと思うだけで、ピンとこない。というよりも、混んだ都内を走りはじめたときのファーストコンタクトは、正直言ってあまり芳しくなかった。ティプトロニックS(マニュアルモードのついたオートマチック)のおかげで、なんの苦もなく転がせるが、渋滞に阻まれて回せないと、3.6リッター・ターボはむしろ退屈だ。低速域だと、アクセルの応答性はけっしてシャープではないし、アイドリング時の音や振動は、低くこもりがちで、どこか建設機械的だ。足まわりも、タウンスピードではひたすらズデンとしていて、大味...