MINI|ミニ|第8回 (後編)|「新旧が似ているのは理の当然」
第8回 MINI(後編)
「新旧が似ているのは理の当然」
BMWが手がけたイギリスのアイコン「MINI」。2007年2月に上陸した2代目は、見かけこそ大きく変わらないが、あたらしく得たBMW製エンジンや熟成されたシャシーなど見所は多い。
文=下野康史写真=BMW
キティちゃんがモデルチェンジしたら困る
初代“BMW MINI”は、日本でも本格的なデリバリーが始まった2002年から、早くも1万台を超えるセールスを記録した。
ゼロからつくったニューモデルが初登場いきなり1万台超えとは、輸入市場初めてではなかろうか。
ヒットの理由は明らかである。40年以上続いた“クラシックMini”のキャラクターを見事にうまく利用したからだ。
おかげで、“BMW MINI”は最初から「キャラが立っていた」。
ハードはたしかにゼロから新設計でも、クルマを売るのにいまやいちばん大切な“ブランド力”をゼロから掘り起こす必要はなかったのである。
だから、新型の見た目や雰囲気が旧型とまったく変わっていないのも、理の当然だ。
キャラクターカーとして、キャラを変える必要はぜんぜんなかったからだ。ミッキーマウスやキティちゃんがモデルチェンジしたら困る。
でも、2007年2月に発売された新型(2代目BMW MINI)の中身は、かなり進化した。ステアリングを握ると、見違えるほど改良されたのが実感できる。
まず、エンジン。とくに「Cooper S」用の1.6リッター4気筒DOHCターボがおもしろい。BMWが開発した直噴ユニットだ。
ターボラグを抑えたツインスクロールターボのおかげで、ごく低い回転域からムリムリっと力が沸く。
そのまま6400rpmのレブリミットまで、ストレスなくまわって、“まわし甲斐”もある気持ちいいエンジンである。
少々ガサツで大味だったクライスラー製の旧型4気筒よりはるかに洗練されたし、加速性能は1.6リッタースーパーチャージャーの旧Cooper Sと比べても、目覚ましく向上した。
足まわりはさらによくなった。どのモデルも、旧型よりサスペンションがストロークするようになり、路面からの“当たり”が少しソフトになった。
ますます剛性感の高くなったボディを、よりフトコロの深くなった足まわりが支えている。
おかげで、新しいMINIの乗り味はワンランク、高級感が増した。
見たところ変わっていないが、乗ると、驚くほど進化している。いいことずくめの新型である。
とはいうものの、どんなによくなった中身も、このキャラクターをしのぐことはない。
もっともホットなCooper Sだって、オイル臭いクルマ談義が似合わない。
そんなふうに思うのは、ヒップホップなドラッグストアに放り込まれると、妙に居心地の悪さを感じるぼくだけだろうか。
しかし、これだけ“ガワ”の変化が小さいのなら、いっそのことクルマのどこかに通信回線を繋げ、ダウンロード一発でアップデイトできるようにしたらどうだろう。
さらなるあたらしさ求めて、MINIあたりは、そんなカッコいいモデルチェンジを真っ先に実現してもらいたい。
(おわり)
車両概要:MINI
BMWグループの一員となった新生「MINI」。ブランニューモデルの誕生は2001年だった。日本へは翌年の3月2日(ミニの日)に上陸を果たし、以後プレミアムコンパクトカーのセグメントで人気を博した。
2006年夏、先代と同じく「Cooper」「Cooper S」「One」そして欧州では欠くことのできないディーゼルバージョン「Diesel」をラインナップした2代目が本国で発表された。
このうち、Dieselを除く3種類が2007年にわが国にも導入された(コンバーチブル仕様は先代のまま)。
内外デザインは先代のイメージを崩すことなく踏襲。一方でエンジンやシャシーはほとんど新設計された。
日本仕様は、「Cooper」の1.6リッター直4(120ps、16.3kgm)、「Cooper S」の1.6リッター直4ターボ(175ps、24.5kgm)、そして「One」の1.4リッター直4(95ps、14.3kgm)がそろう。