クルマ魅力探究
「クルマ魅力探究」に関する記事
BMW 335iクーペ|ビーエムダブリュー|第1回 (前編)|「いいチェロというのは、いいエンジンと同じである」
第1回:BMW 335iクーペ(前編)「いいチェロというのは、いいエンジンと同じである」クルマの是と非を問う「ジドウシャ是是非非論」。第1回は、BMWの売れ筋「3シリーズ」に追加された2ドアクーペ「335iクーペ」をピックアップした。クルマを語るコラムなのに、なぜかチェロの話からスタート! 文=下野康史2006年9月に上陸した新しい3シリーズ・クーペ「BMW 335iクーペ」photo=BMWチェロ弾きは試弾会に通ってコンピュータのスピードが速くてイヤだという人がいるだろうか。いきなりクルマの話でなくて申し訳ないが、そんな人はいないと思う。通信速度が速すぎて、ついていけない、なんて。そういう人は、おそらくハナっからコンピュータを使っていないはずである。ぼくもヒドいコンピュータ音痴だが、このとおり、必要に迫られて使っている。ユビキタスの未来と、アナログの昔と、どちらがいいか、どちらが好きかと聞かれたら、いまでも後者のほうがいいし、好きだと答えるかもしれないが、そんな人間ですら、パソコ...
CITROEN C6|シトロエンC6|第4回 (後編)|「純度の高いデザイン」
CITROEN C6|シトロエン C6|第4回 (後編)「純度の高いデザイン」シトロエンならではの技術“ハイドロ・サス”を踏襲した最上級サルーン「C6」だが、下野康史がもっとも大きな美点としてあげたのは……。 文=下野康史写真=CITROEN65km/hで自動的にリアスポイラーがせり出し、125km/hでさらに高さがアップ。115km/hになると1段目に戻り、25km/hで完全にボディと一体化する。希薄になったアドバンテージサスペンションをコントロールする油圧を、ステアリングやブレーキのアシスト力にも使っていたCXのころは、地球外惑星のクルマのような強い個性(と違和感)があったものだが、89年に登場したXMからは、ハイドロ足も徐々にフツーになっていった。“アンチ・ロワリング”という制御が入って以来、エンジンを止めて一晩おいても、うずくまったように車高が下がることはなくなった。「このほうが、始動後すぐに走り出せるし、ムクムクっと車高が上がるのを気味悪がる人もなかにはいるのでね」という...
最新軽自動車ベスト3|第5回 (前編)|「軽は、脱税スレスレくらいにおトク」
第5回:最新軽自動車ベスト3(前編)「軽は、脱税スレスレくらいにおトク」自動車の国内販売が鈍化する昨今にあって好調なのが軽自動車。2006年の年間新車販売台数は202万3619台(前年比5.2%増)、3年連続のプラス成長となり、過去最高を記録した。このことは、自動車における格差の象徴なのか? 下野康史が最新の軽自動車について語る。文=下野康史写真=三菱自動車/ダイハツ工業2006年1月発売、三菱の力作「i (アイ)」。「リア・ミドシップレイアウト」なる凝ったプラットフォーム(車台)に、曲線を多用した斬新な意匠を被せた。クルマにお金をかけない人のクルマアメリカで高額宝クジに当たった人の多くは、その後、破産してしまうのだそうだ。身近な人が持ち込む投資話でたいてい失敗するのと、あとはきまって豪邸と高級車を買ってしまうからだという。豪邸も“豪車”も、買うときは高いが、値落ちが激しく、売るときは安い。「目に見える立派なモノ」に、実はその押し出しほどの価値はない、ということなのだろうか。軽自動...
MINI|ミニ|第7回 (前編)¥「マツキヨと“BMW MINI”の関連性」
第7回 MINI(前編)「マツキヨと“BMW MINI”の関連性」かのアレック・イシゴニスが1959年に生み出した「Mini」は、40年以上もの間生産され、世界で愛され続けてきた。そのイギリスのアイコンが、ドイツの巨人BMWの手にわたり、2001年に誕生した“BMW MINI”は、世界的なスマッシュヒットを記録。2006年11月にデビューした2代目にも期待がかかるところだ。文=下野康史写真=BMWドラッグストアは「カラダ・グッズ・ショップ」つくづくスゴイなあと思うのは、唐突だが、ドラッグストアである。ぼくが子どものころ、マツモトキヨシもサンドラッグもツルハドラッグも、ありゃしなかった。アメリカには、至るところにドラッグストアという店があって、それは直訳すると「薬屋」である、という話を聞いたのは、中学か高校のころだったと思う。でも、なんで薬屋がそんなにたくさんあるのか、首を傾げたものである。2001年のデビューから80万台以上が販売されたという初代“BMW MINI”。新型2代目のデ...
MINI|ミニ|第8回 (後編)|「新旧が似ているのは理の当然」
第8回 MINI(後編)「新旧が似ているのは理の当然」BMWが手がけたイギリスのアイコン「MINI」。2007年2月に上陸した2代目は、見かけこそ大きく変わらないが、あたらしく得たBMW製エンジンや熟成されたシャシーなど見所は多い。文=下野康史写真=BMWキティちゃんがモデルチェンジしたら困る初代“BMW MINI”は、日本でも本格的なデリバリーが始まった2002年から、早くも1万台を超えるセールスを記録した。ゼロからつくったニューモデルが初登場いきなり1万台超えとは、輸入市場初めてではなかろうか。ヒットの理由は明らかである。40年以上続いた“クラシックMini”のキャラクターを見事にうまく利用したからだ。全長×全幅×全高=3715×1685×1430mm。新型になってじゃっかん(60mm)長くなった。おかげで、“BMW MINI”は最初から「キャラが立っていた」。ハードはたしかにゼロから新設計でも、クルマを売るのにいまやいちばん大切な“ブランド力”をゼロから掘り起こす必要はなかっ...
Audi |アウディ R8|第11回 (前編)|「疑念を一蹴するほどのカッコよさ」
第11回 アウディR8(前編)「疑念を一蹴するほどのカッコよさ」一時期、ほぼ息絶えたスポーツカーが、ここにきて相次いで復活を遂げている。ドイツのプレミアムブランド、アウディは、かつてルマン24時間耐久レースで連勝を飾ったマシンの名を与えた、同社初の本格ミドシップ・スポーツカー「R8」を誕生させた。文=下野康史Photo by Audiアウディとランボの「幸せな結婚」アウディがスーパーカー級のミドシップ・スポーツカーをつくっているというウワサをはじめて耳にしたとき、ぼくは耳を疑った。「耳にしたとき、耳を疑った」って表現は、耳がダブってしつこいゾ、と思われるかもしれないが、アウディのスーパーカー話にも、そういうしつこさを感じたのだ。だって、ランボがあるじゃないか、と。アウディ初の本格ミドシップ・スポーツ「R8」。1998年の電撃的な吸収劇以来、アウディはランボルギーニの親会社である。フォー・シルバー・リングスとファイティング・ブルとの合体には度肝を抜かれたが、しかし、よく考えてみれば、...
Audi|アウディR8|第12回 (後編)|「スーパーカーはまだまだイケる!」
第12回 アウディR8(後編)「スーパーカーはまだまだイケる!」スポーツカーとしてのカッコよさは抜群。走り出せば期待を裏切らない「アウディR8」。いままでにない、スポーツカーの未来を予感させるモデルだ。文=下野康史Photo by Audi男っぽさや汗臭さがないスポーツカー「アウディR8」は、走り出しても、外観の印象を裏切らない。真骨頂は、ミドシップの超高性能スポーツカーでありながら、男っぽさや汗臭さを見事に排除したことにある。300km/hを超す最高速をはじめとして、動力性能はスーパーカーそのものだが、「爆走」的な凶暴さはどこにも見られない。既存のアウディ・ユニットにドライサンプ化などの改良を加えた4.2リッターV型8気筒は、乗っていると、キャビンのすぐ後方にあるとは思えないほど静かである。操縦性に長けるミドシップ(エンジンを車両中央に搭載)レイアウト。ハッチゲートのグラス越しにエンジンを見ることができる。4.2リッターV8ユニットは、420psのパワーと43.8kgmのトルクを...
MAZDA DEMIO|マツダ・デミオ|第13回 (前編)|「ぼくはデミオに惚れた」
第13回 マツダ・デミオ(前編)「ぼくはデミオに惚れた」これまでの庶民の足グルマが、一気に垢抜けてスタイリッシュに大変身! マツダのコンパクトカー「デミオ」が、2007年7月に3代めへと進化した。年間何十台ものニューモデルを試す下野康史の“2007年イチオシの1台”。大胆なイメチェンの裏で、いったい何がおこったのか?文=下野康史写真=マツダ燃費対策として復活した「ミラーサイクルエンジン」。これにやはり燃費に有利なトランスミッション「CVT」を組み合わせたグレード「13C-V」(131万円)は、10・15モードで23.0km/リッターという燃費を記録する。そんなクルマには滅多に巡りあわない2007年に出た新車のなかで、いちばん気に入ったクルマが「マツダ・デミオ」だった。最初に乗ったのは、1.3リッターのミラーサイクル・エンジンを積むモデルである。「ミラーサイクル」なんて言葉、敷居が高くなるから使わなきゃいいのにと思うが、アメリカのミラーさんという技術者が考案した高効率燃焼システムを採...
Smart fortwo|スマート・フォーツー|第17回 (前編)|「都市のクルマ、スマート」
第17回 スマート・フォーツー(前編)「都市のクルマ、スマート」大都会のなかでうごめく小さな移動体──全長3メートル以下、軽自動車よりはるかにコンパクトな2人乗り「スマート」の最新2代目が、日本の道でも姿をあらわしはじめた。「都市のクルマ」という新しいジャンルを開拓する、メルセデス・ベンツの意欲作のニューモデルはいかに?文=下野康史Photo by Smart“カボチャ顔”は街の景色の一部に仕事でヨーロッパに行くと、そのたびにスマートが増えていて、うれしくなる。とくにイタリアとフランスが目立つ。ミラノやパリなどは、“ハロウィンのカボチャ顔”がすっかり街の景色の一部になっている。海外ニュースで現地からの中継が流れると、背景に映っていたり、走りすぎたりすることも多い。たったいまも、中国のチベット政策に反対する自由主義勢力に反対する中国人(ややこしい)のデモがパリで行われているというニュースが流れた。五星紅旗を振りかざした在仏中国人が乗っていたのが、黒い「スマート・フォーツーカブリオ」だ...
BMW M3 M DCT Drivelogic|ビーエムダブリューM3 M DCT Drivelogic|第23回 (前編)|あのスーパーカーと同門の最新モデル
第23回 BMW M3 M DCT Drivelogic(前編)あのスーパーカーと同門の最新モデルBMWの高性能スポーツモデルの称号「M」。最新型「M3」に搭載される新型トランスミッション「M DCT Drivelogic」は、新しい時代のスポーツカーのあり方を示唆している。それはつまり、スポーツ走行にはマニュアルトランスミッションに限る、という時代の終焉なのかもしれない。文=下野康史Photo by BMWBMW M11万6200台の“M”ワタクシゴトながら、2008年は自動車マスコミ在籍30周年である。学校を出て、自動車専門誌の編集部に入ったのは1978年。スーパーカー・ブームは去っていたが、まだ余熱はあった。駆け出しの編集記者小僧時代にも、「フェラーリ308」「ランボルギーニ・ジャルパ」「ポルシェ911ターボ」「ロータス・エスプリ」といった華々しいスーパーカーに接近遭遇するチャンスは少なくなかった。運がいいと、ステアリングを握らせてもらうチャンスもあった。そのなかで、当時、も...
NISSAN FAIRLADY Z|日産フェアレディZ|第27回 (前編)|スポーツカーを愛する社長が率いる自動車メーカーならでは
第27回 日産フェアレディZ(前編)スポーツカーを愛する社長が率いる自動車メーカーならでは今年、生誕40年を迎えたジャパニーズスポーツカーの草分け、フェアレディZ。6代目にあたる新型は、ホイールベースを10cm短縮し、約100kgの軽量化を果たすなど、スポーツカーとしての基本性能により磨きをかけて登場した。文=下野康史写真=荒川正幸100年に一度の経済危機を敵に回しての船出今度のフェアレディZは通算6代目だ。初代が登場したのは1969年。今年は生誕40年にあたる。それでもまだ6世代目ということは、4年でモデルチェンジするのが相場だった日本車にあって、かなりライフスパンが長い。思い返せば、先代モデルが出る前には2年にわたる不在の時代もあった。業績不振の日産に大ナタをふるうべくやってきた助っ人、カルロス・ゴーンの肝煎りで復活したZが、2002年の5代目だった。先代に比して全長で65mm、ホイールベースで100mm短縮された新型Z。ロングノーズがより強調されたフォルムが印象的。続く6代目...
NISSAN FAIRLADY Z|日産フェアレディZ|第27回 (後編)|走り出したとたん、うれしくなる
第27回 日産フェアレディZ(後編)走り出したとたん、うれしくなる1969年のデビュー以来、6代目となる新型フェアレディZ(Fairlady Z)。ホイールベースを10cm短縮するなど運動性能に磨きをかけて登場した同車の真価を、下野康史が確かめた。文=下野康史写真=荒川正幸2リッター車のように軽い身のこなし新型Zは、走り出したとたん、うれしくなる種類のクルマだ。直近ではPDKのポルシェ911やアウディTTSクーペがそうだった。日本車では……、思い浮かばない。走り出してすぐ「こりゃイイ」と思わせるのは、新型Zの場合、トータルな“走りの質感”である。いまや3.7リッターの大排気量車なのに、身のこなしは2リッター車のように軽い。なんというか、シャシーの“きれ”がいいのだ。さりとてボディや足まわりやステアリング系の剛性はきわめて高いから、軽くても、カルくはない。左右2本だしのエキゾーストパイプが印象的なリアビュー。タイヤサイズはフロントが245/40R19、リアが275/35R19となる(...
PORSCHE| ポルシェ 911ターボ|第15回 (前編)|「ポルシェ・ターボの真骨頂」
第15回 ポルシェ911ターボ(前編)「ポルシェ・ターボの真骨頂」スポーツカーといえばポルシェ。ポルシェといえば「911」。その頂点に君臨するモデルが「911ターボ」だ。0-100km/h加速=3.7秒を誇る最新型ハイパフォーマンスカーを前に、思いは30年前へとフラッシュバックした。文=下野康史Photo by Porsche昔のポルシェは、いまのポルシェなんてもんじゃなかった「ポルシェ911」、なかでも「ターボ」についてとなると、どうしても昔話からはじめないわけにはいかない。スーパーカー世代にとっても、“ポルシェ・ターボ”といえば、格別になつかしい響きをもつはずだ。1970年代後半のハイエンド911、「930ターボ」である。“タイプ930”とよばれる911ターボ(写真のモデルイヤーは1977年)東京12チャンネルの『対決!スーパーカークイズ』が小中学生に大人気だったころ、すでに大学生だったぼくは、その後、自動車専門誌の編集部に入ってすぐ、新車の930ターボに触らせてもらったことが...
BMW M3 M DCT Drivelogic|ビーエムダブリューM3 M DCT Drivelogic|第24回 (後編)|マニュアルトランスミッションに勝ち目はないのか
第24回 BMW M3 M DCT Drivelogic(後編)マニュアルトランスミッションに勝ち目はないのか人間の左足のかわりに機械がクラッチを操作するダブルクラッチ式2ペダル・ギアボックスを前に、自称“マニュアル保存会 会長”の下野康史すらこう思った。「もう勝ち目ないな」と。文=下野康史Photo by BMW変速ロボットのほうが素早い「BMW M3」に追加設定された新型ギアボックス「M DCT Drivelogic」は、期待を上回るデキである。とくに変速の滑らかさは、フォルクスワーゲンの「DSG」、「日産GT-R」の「デュアル・クラッチ・トランスミッション」、「三菱ランサーエボリューションX」の「ツインクラッチSST」といった先発モデルをしのいでいる。ガチャガチャしたメカメカしさが見事にない。これらのツインクラッチ式2ペダル・ギアボックスは、マニュアル変速機(MT)よりも多才なスポーツ性能が売りだが、日本市場で問われるのはなにより快適性だろう。つまり、どこまで一般的なトルコン...
CITROEN C6|シトロエンC6|第4回 (前編)|「久々に涙モノのシトロエン」
CITROEN C6|シトロエンC6|第4回 (前編)「久々に涙モノのシトロエン」斬新さを身上とするブランド、シトロエン。そのフラッグシップサルーン「C6」には、他車にはない独自の魅力が感じられるという。文=下野康史写真/ILLUSTRATION=CITOROEN一目で“他とは違う”とわかる奇抜な衣を纏ったシトロエンの旗艦「C6」。久々のビッグ・シトロエンは、2006年10月に日本上陸を果たした。シトロエンを読んで泣いた中島らもの『健脚行----43号線の怪』という小説に、シトロエンが登場する。『油圧式の気むずかしいクルマ』と、わざわざ主人公に説明させているから、ハイドロ・ニューマチック・サスペンションの大型シトロエン、おそらくは「CX」と思われる。ホラー小説集『人体模型の夜』で初めてこの短編を読んだのは、らもがまだ元気で、八面六臂の活躍をしていたころである。エッセイでも小説でも、この作家がクルマをフィーチャーするのはたいへん珍しい。というか、ぼくが知る限り、この作品が初めてである...