MAZDA DEMIO|マツダ・デミオ|第13回 (前編)|「ぼくはデミオに惚れた」
第13回 マツダ・デミオ(前編)
「ぼくはデミオに惚れた」
これまでの庶民の足グルマが、一気に垢抜けてスタイリッシュに大変身! マツダのコンパクトカー「デミオ」が、2007年7月に3代めへと進化した。
年間何十台ものニューモデルを試す下野康史の“2007年イチオシの1台”。大胆なイメチェンの裏で、いったい何がおこったのか?
文=下野康史写真=マツダ
そんなクルマには滅多に巡りあわない
2007年に出た新車のなかで、いちばん気に入ったクルマが「マツダ・デミオ」だった。
最初に乗ったのは、1.3リッターのミラーサイクル・エンジンを積むモデルである。
「ミラーサイクル」なんて言葉、敷居が高くなるから使わなきゃいいのにと思うが、アメリカのミラーさんという技術者が考案した高効率燃焼システムを採用する、いわば燃費スペシャル・エンジンである。変速機も燃費に有利なCVT(無段変速機)が組み合わされる。
その「13C-V」で走り出した途端、ぼくはデミオに惚れた。こりゃエエわ、と思った。“肌があう”クルマだったのだ。
この仕事をしていても、そんなクルマには滅多に巡りあわない。巡りあったとすると、ぼくの場合、それはきまってイタリアかフランスの小さいクルマである。
はじめて乗った新型デミオは、1980年代後半の「シトロエンAX 14TRS」を彷彿させた。試乗の仕事で乗った途端に惚れて、すぐ買っちゃったクルマだ。
イッテンサンのマニュアルがサイコー!
つぎに乗ったデミオは、ミラーサイクルじゃない1.3リッターのマニュアルである。
某自動車専門誌の編集部にAという名物エディターがいる。むかし、自分でメキシコから買ってきた「アルピーヌA110」というレアなクルマをレストアして、いまでもアシに使っている。
ヨメももらわんと“エンスー道”を邁進している彼が、「今度のデミオはイッテンサンのマニュアルがサイコー!」といっていたので、乗ってみたら、たしかにサイコーだった。
デミオは、CVTでもオートマチックでもワルくないが、5段マニュアルは変速機そのものが気もちいいのである。
渋滞中、思わず無意味にシコシコやりたくなるほど小気味よいシフト・フィールは、おなじマツダのスポーツモデル「RX-8」や「ロードスター」の6段マニュアルよりずっとイイ。前述のAエディターとおなじく、ぼくも1.3リッターのマニュアルがベスト・デミオだと思う。
そのつぎに乗ったのは「SPORT」というマニュアルの1.5リッターモデルである。車名のとおり、シリーズきってのスポーティモデルだが、しかし、これは感心しなかった。
サスペンションが硬すぎて、せっかくのよさを台無しにしている。エンジンも、パワーはあるが、大味だ。新型デミオは、安いほうの1.3リッターモデルにかぎる。