MAZDA DEMIO|マツダ・デミオ|第14回 (後編)|「デミオは、ベーシックなヨーロッパ車」
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2015年4月8日

MAZDA DEMIO|マツダ・デミオ|第14回 (後編)|「デミオは、ベーシックなヨーロッパ車」

第14回 マツダ・デミオ(後編)

「デミオは、ベーシックなヨーロッパ車」

フォード・グループの一翼を担うマツダ。3代目「デミオ」の大変身も、グローバル戦略の一環とされる。見ちがえるほどよくなったと評判の新型は、“世界のコンパクトカー激戦区”を意識してつくられた。

文=下野康史写真=マツダ

軽量化による気もちよさ

3代目「デミオ」の大きなテーマは「軽量化」である。開発段階からそれを心がけた結果、1.3リッター、1.5リッターいずれもほとんどのグレードが車重1000kg以下におさまる。

そんなクルマには滅多に巡りあわない

おかげで、新車購入のとき払う重量税(3万7800円)は、白いナンバーでいちばん安い。「トヨタ・ヴィッツ」や「日産マーチ」や「ホンダ・フィット」は、ほとんどのモデルが1トン超だから、5万6700円になる。

軽量化がもたらしたのは、そんな細かい現世御利益だけではない。車重だけでなく、乗っても軽いのが、ライバルに差をつけるデミオの大きな魅力である。

最近のロードレーサー(自転車の話です)は、フレームにカーボンやアルミを採用して、軽さを謳うのが常識だが、不思議なことに、もった軽さと、乗った軽さは、必ずしも一致しない。軽くても、意外やこぐと重い自転車がある。その逆もある。

そんなクルマには滅多に巡りあわない

その点、デミオは車重の軽さが、走りの軽さに直結している。

ストローク感豊かなサスペンションと、軽量ボディという組み合わせが、かろやかで、なおかつしっとりした乗り心地をうんでいる。荷が軽いというか、重荷を背負っていないというか、なるほど軽量のおかげで、足まわりに“まだぜんぜん余裕がある”感じがする。

だから、べつにハンドリングコースで大入力を与える必要はない。そのへんのカドをゆっくり曲がっても、あるいは高速道路を流しているだけでも気もちいいのである。

なぜ、こんなによくなったのか

しかし、あまりパッとしなかった旧型から一転、デミオがなぜこんなによくなったのか。つまるところそれは、欧州市場に照準を絞ったからである。

ヴィッツやマーチは、いずれもヨーロッパで現地生産されている。ヴィッツはトヨタ・ヤリスとして、マーチはニッサン・マイクラの名で欧州の道を走っている。つまり2台とも、いわば日欧にそれぞれのチャンネルをもっている。

その点、デミオは「Mazda2」として販売される欧州向けも、メイド・イン・ジャパンである。

そのクルマが、開発の軸足をヨーロッパにおいた。イタ・フラ車っぽい、ベーシックな欧州小型車の香りががぜん強くなったのは、そのためだと思う。

デミオは、ヨーロッパのコンパクトカーにいちばん近い日本車なのである。「軽快でスムーズな5段マニュアルも設定しています」なんてカタログに書いてある国産コンパクトカーは、デミオだけである。

日本にも欧州の小型車がたくさん輸入されている。だが、安いクルマを安いまま売ったら、儲からない。どのクルマも、付加価値を高めるために豪華装備が施され、日本仕様は似て非なるクルマになっていることが多い。

素のままの、本当にベーシックなヨーロッパ車は、日本ではまず味わえない。

それを味わいたければ、「添加物なし」みたいに爽やかな乗り味のデミオがいちばん近いかも知れない。

(おわり)

車両概要|マツダ・デミオ

1996年に産声をあげたマツダのコンパクトカー「デミオ」。実用小型ワゴンとして人気を博し、以降2代目(2002-2007年)、そして3代目(2007年-)と代を重ねてきた。

最新の3代目は、内外ともに様がわりし、市場においては国内より国外、とくに欧州に軸足をおいたグローバルカーとして登場。全長3885mm×全幅1695mm×全高1475mmのボディは軽量化がはかられ、車重は1トン前後におさめられた。

そんなクルマには滅多に巡りあわない

エンジンラインナップは、従来どおり1.3リッター、1.5リッターだが、かつて「ユーノス800」で採用した「ミラーサイクルエンジン」の復活は話題のひとつ。

トランスミッションは4段オートマチック、5段マニュアル、そしてCVTの3種類。FFに加え一部車種で4WDも選べる。
価格は112万5000円から158万円まで。
http://www.demio.mazda.co.jp/

そんなクルマには滅多に巡りあわない

           
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