NISSAN FAIRLADY Z|日産フェアレディZ|第27回 (後編)|走り出したとたん、うれしくなる
第27回 日産フェアレディZ(後編)
走り出したとたん、うれしくなる
1969年のデビュー以来、6代目となる新型フェアレディZ(Fairlady Z)。ホイールベースを10cm短縮するなど運動性能に磨きをかけて登場した同車の真価を、下野康史が確かめた。
文=下野康史写真=荒川正幸
2リッター車のように軽い身のこなし
新型Zは、走り出したとたん、うれしくなる種類のクルマだ。直近ではPDKのポルシェ911やアウディTTSクーペがそうだった。日本車では……、思い浮かばない。
走り出してすぐ「こりゃイイ」と思わせるのは、新型Zの場合、トータルな“走りの質感”である。いまや3.7リッターの大排気量車なのに、身のこなしは2リッター車のように軽い。なんというか、シャシーの“きれ”がいいのだ。さりとてボディや足まわりやステアリング系の剛性はきわめて高いから、軽くても、カルくはない。
白状すると、試乗会ではじめて乗ったとき、右左折で何度かワイパーを動かしてしまい、恥ずかしかった。国産車はウインカーレバーがハンドルの右側、ワイパーレバーが左側に付いている。ガイシャはそれが逆だ。Zを運転していると、しばしばガイシャと錯覚してワイパーを出しながら曲がってしまったのだ。ボケとみる向きもあるが、自分では職業病と理解している。それはともかく、新型Zのもつ高いガイシャ感の源は、軽いがカルくないシャシー/ボディにあると思う。見た目の印象どおり、旧型よりさらにいっそうカラダを絞った感じがするのである。
期待以上のシンクロ・レブコントロール
それに対して、エンジンはちょっと惜しい。スカイライン・クーペより3ps御祝儀をもらった336psのパワーに不満はないが、スポーツカーのエンジンならもうひとつ“華”がほしい。VQ37HRの“HR”とは「高回転」という意味である。たしかに7000rpmまできっちり回るけれど、回転フィールは全体にやや大味だ。バキューム・クリーナーのようなゾワーっというエンジンも興をそぐ。
期待のシンクロ・レブコントロールは、期待以上に有用で、しかもおもしろかった。電子制御の回転合わせはじつに正確で、クラッチペダルをもどして次のギアにつないでも、けっしてつんのめったり、せり出したりしない。そうとうな“MTづかい”でもこのレベルのギアチェンジはむずかしい。コンピュータの正しい使い方である。100km/h巡航中だと、2速まで落とせる。クラッチを踏み、セカンドへ入れようとシフトレバーに力を入れた瞬間、自動的に7000rpm近くまで吹き上がる。ただ、そういうときにも、もう少しスイートなエンジンならよかったのになあと思ってしまう。ちなみに、同じV6でも流体クラッチが介在するATモデルの場合、不満はほとんど感じなかった。7速でパドルシフトも付いたATモデルをお薦めする。
だが、マニアックな専用エンジンをもつ贅沢をあえてしてこなかったのは、フェアレディZのよき伝統ともいえる。そのおかげで「アフォーダブル(手頃)なスポーツカー」として昔から多くのアメリカ人に愛されてきたのである。300万円台で買えるオーバー300馬力のスポーツカーなんて、世界中探したってZだけなのだ。とはいえ、GT-Rのパワーユニットを移植した現代の“Z432”もちょっとみてみたい。
日産フェアレディ Z Version ST
ボディ|全長4250×全幅1845×全高1315mm
エンジン|V型6気筒DOHC
最高出力|247kW[336ps]/7000rpm
最大トルク|365Nm[37.2kgm]/5200rpm
駆動方式|FR
トランスミッション|6段MT/電子制御7段AT
価格|435万7500円(6段MT) 446万2500円(電子制御7段AT)
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