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2025年6月17日
アルカンターラの次なる挑戦 ミラノデザインウィーク2025で見たラグジュアリー素材の革新
Alcantara|アルカンターラ
2025年4月、ミラノデザインウィーク。世界中からデザイン関係者が集まるこの期間に、フェラーリなどのプレミアムカーの内装でおなじみのイタリア製ラグジュアリー素材ブランド「アルカンターラ」は市内3箇所で展示を展開した。会長兼CEOのエウジェニオ・ロッリ氏の言葉からは、創業50年を迎えた企業の現在と未来への戦略が見えてきた。
Text by YAMAGUCHI Koichi
3つの展示が示すアルカンターラの現在地
2025年のミラノデザインウィークにおいて、アルカンターラは3つの異なる会場で展示を行った。それぞれが同社の技術的特徴や市場戦略の異なる側面を表現している。
最大規模となったのは、デザインプロダクト販売サイトを運営する「アーキプロダクツ」との3年連続コラボレーション「À.RIA. A MEDIUM FOR CONNECTION(アーリア・ア・ミディアム・フォー・コネクション/空気・つながりのための媒体)」だ。トルトーナ地区のアーキプロダクツ・ミラノショールームで展開されたこの展示は、ミラノの建築デザイン事務所「スタジオペペ」の監修により、空気をテーマとした空間演出を行っている。
展示空間では、熱と圧力を加えて平面素材を立体的に成形する3Dサーモフォーミング技術を活用した、アルカンターラによる立体的な壁面装飾が設置されている。成形技術の専門企業との協力により実現したこの「ブニャート(石の凹凸加工を施した壁面装飾)」は、アルカンターラの成形の可能性を具体的に示すものだ。
会場では、カーテン、パーティション、ソファなど多様な用途でアルカンターラが使用されており、同社が開発した革新的な製造技術の実例を見ることができる。光と影の演出により素材の質感の変化を見せる手法は、インテリア分野での新たな用途開拓を狙ったものと考えられる。
一方、ADIデザインミュージアムで開催された「カー・デザイン・アワード2025」の授賞式に合わせて開催された「レ・イコーネ」展では、アルカンターラの幅広い用途展開が紹介された。
展示品には、ストーンアイランドのジャケット「4100027 ALCANTARA_ストーンアイランド・ゴースト」、フェラーリスタイルの「ネロ・ザ・フェラーリ・ツールケース」、オランダの著名デザイナー、マルセル・ワンダース デザインの「チューリップ」チェア、マイクロソフトの「サーフェス・ラップトップ」、AIロボット「ティーシーエル・エーアイ・ミー(TCL Ai Me)」など、自動車以外の分野での採用事例が並んだ。
ロッリ氏は展示について説明する。
「アルカンターラは非常に多様性のあるマテリアルで、自動車の内装を常に新しく独特な方法でカスタマイズすることができます。その優れた感覚的特性—柔らかさ、高級感、スポーティーさ、創造性—が、軽量性、通気性、グリップなどの技術的特性と組み合わさり、比類のない体験を保証します」
ミラノデザインウィークの中心的イベントである「スーパーデザインショー2025」では、デザイン史を振り返る企画展「アンフォゲッタブル(忘れられない)」が開催された。
イタリアの家具デザイン界の重鎮ジュリオ・カッペリーニ氏とデザインライターのレオナルド・タラリコ氏がキュレーションを担当したこの展示では、過去25年間の象徴的な作品が一堂に会している。
その中で、日本を代表するデザインスタジオ「nendo」による「アルカンターラ-ウッド」が展示された。2015年に発表されたこの作品は、伝統的な指物師の技術を現代的に解釈したもので、異素材との組み合わせによる新たな表現可能性を探求している。
この作品は、日本の調和と構成の美学を通じて、新しいマテリアル表現を探求した作品として注目を集めた。
これらの展示を見る限り、アルカンターラは明らかに新たなステージに向かっている。そうした変化の背景には何があるのだろうか。
これらの展示を見る限り、アルカンターラは明らかに新たなステージに向かっている。そうした変化の背景には何があるのだろうか。