錯誤の経済学
「錯誤の経済学」に関する記事
第42章 不況脱出の出口は遠のくばかり|急落の株価が景気への不安を深める
第42章 不況脱出の出口は遠のくばかり急落の株価が景気への不安を深める文=今 静行ダブルパンチの家計、企業経営原油の大幅な値上がり、穀物価格の上昇と世界中が物価上昇に悩まされています。当然のことですが景気のけん引力となる消費支出は低下しています。日本も例外でなくダブルパンチにあえいでいます。世界経済に最大の影響力を持つアメリカの実情は落日の一言で表現できます。日本をはじめとする他の先進諸国におカネを貸してくださいと助けを求めているのです。景気の動きをよく反映する株式市場でなにがおきているのか、数字をあげて冷静にその流れをみてみましょう。日経平均株価1万円割れ2008年10月初旬の日経平均株価は1万円を割ってしまいました。株の売買を専門とする市場関係者は、どんなに下がっても1万500円を下回ることはないといい続けてきたのに、あっさり1万円台を割ってしまいました。4年8ヶ月振りです。アメリカの大企業で構成するニューヨークダウ工業株平均も4年振りに1万ドルを割ってしまいました。もともと株...
第43章 なぜ「蟹工船」が売れているのか|いまの格差社会に直結
第43章 なぜ「蟹工船」が売れているのかいまの格差社会に直結文=今 静行80年前の作品に光が、どうしてなのか。「おい、地獄さ行(え)ぐんだで!」で始まるプロレタリア作家小林多喜二の「蟹工船」がよく売れており、大きな話題になっております。多くのマスメディアも取り上げております。「蟹工船」が発売されたのは1929年ですから約80年前です。著者の小林多喜二は小樽高商を卒業し銀行員(旧北海道拓殖銀行)になりますが、当時の軍国主義的、警察的国家に反対し、人民の窮乏ぶりを生命をかけて伝えようとプロレタリア作家になりました。労働運動にもはいりました。その生涯は悲惨なものでした。1933年に当時の特高警察に逮捕され築地署で拷問にあい殺されました。よく知らされていることです。現在の格差社会と重なり合う蟹工船・党生活者 (新潮文庫) 小林 多喜二したがって「蟹工船」の内容は暗さでおおわれています。ボロ船に乗せられ当時のソビエト領海のカムチャッカに出漁した労働者の非人間的な生活がやがて自然発生的に闘争に...
第44章 悪知恵の資本主義とサブプライムローン
第44章 悪知恵の資本主義とサブプライムローン文=今 静行サブプライムローンは“不動産向けサラ金”そのもの米国のサブプライムローンの焦げつきが発端となった金融危機は世界経済全体に広がりをみせ、いっこうに落ち着く気配はない。むしろ長期にわたって不安が増大するという見方がマトを射ていると思います。深刻そのものです。この社会に改めてサブプライムローンの実態を身近かに理解することが極めて大切だと思います。どこの国の金融機関も同じですが、個人や企業に融資する場合、融資先の所得、収入や担保物件を調べます。住宅向け融資のサブプライムローンはおカネを借りる資格もない低所得層を対象にアメリカの金融機関が競って融資するローンです。その代わり金利はベラ棒に高いのです。よく知ってほしい。要するに「不動産向けサラ金」そのものです。くどいようですがサブプライムローンは不動産を対象にしたサラ金なのです。住宅ブームのような状態が続いていたアメリカにとって貸す側の銀行も借りる側の個人、法人も不動産はいつまでも値上が...
第45章 日米経済の決定的違いは家計部門
第45章 日米経済の決定的違いは家計部門文=今 静行“自己責任”最優先の米国が巨額な公的資金注入アメリカ発の金融危機は世界的規模に広がり、いっこうに沈静化する気配はありません。危機回避のため米政府が75兆円規模の公的資金を拠出、金融機関の不良債権を買いはじめているのに先行きは不透明感でいっぱいです。何事も自己責任でやれ、自助努力がすべてといい続けているアメリカとしては税金をつかっての大手金融機関の救済に乗り出したのは、異例中の異例といえます。もっとも米市民の間からは“われわれの税金を使って大企業を救済することに絶対反対だ”という声もあがっています。“百年に一回あるかないかの大不況”と指摘する米国の学者、金融マンもいるほどです。景気を左右する消費支出と日米の違い見落とせないのは、景気のカギを握る家計の状態です。日本とアメリカでは個人金融資産の中味が全く違う点です。景気を左右する消費支出はアメリカでは国内総生産の70%を占めております。日本は60%弱です。家計がいっせいに消費に向えは景...
第46章 海外企業を買収したり巨額出資できる日本の金融機関|その背景を知る
第46章 海外企業を買収したり巨額出資できる日本の金融機関──その背景を知る文=今 静行資金豊かな背景わが国の銀行、生保など金融機関は海外の企業を買収したり、大口出資したりしていますが、今年にはいってからの投資資金はハンパな額ではなく驚くばかりです。ことし(2008年)1から9月間で海外企業の買収、出資額は5兆8000億円に達しました。これは民間の権威ある調査機関の調べによるものですが、去年の5倍に激増、調査開始以来はじめてのことです。大手銀行のなかには数千億円から八千億円を支出して外国の企業を買収したり、出資しております。とりわけアメリカの企業が目立って多く、全体の62%を占めております。日本も不況で貸ししぶりや貸しはがしが問題になっているだけにわが国の銀行にたっぷりの資金があることを教えてくれます。なぜでしょうか。仕入れ値タダ同様で商売する銀行の実態見落とせない決定的な理由のひとつは、12年以上も続いているゼロ同様の超低金利にあるのです。預金金利は現在でも0%台です。普通預金の...
第48章 輸出企業の雇用削減と過剰防衛|トヨタの場合を例に
第48章 輸出企業の雇用削減と過剰防衛──トヨタの場合を例に文=今 静行不況の拡がりと首切り昨年(2007年)秋のサブ・プライムローンの焦げ付き(一口で言えば不動産向けサラ金の焦げつきそのものです)をきっかけに世界的不況が拡大、日本経済も例外ではありません。 とりわけトヨタなど輸出向け大企業を中心に間髪を入れず雇用削減を実施しております。 大きな社会問題になっています。非正規社員が冬空に放り出されるばかりでなく正社員にも一時帰休を求めるなど深刻さは増大するばかりです。とりわけ日本を代表する世界の大企業であるトヨタの業績悪化は目を疑わせるものがあります。数学をあげてみましょう。2009年3月期(今期)の連結営業損益が1500億円の赤字に転落ということで大騒ぎになっているのです。トヨタを例にあげてみよう連結営業損益というのは、子会社を含むグループ全体の営業活動で稼ぎ出した損益のことです。連結売上高から原材料費や人件費などを差し引いて計算しています。ここで留意してほしいのは、一年前の20...
第48章 安易に子どもを産むべきでない|政府の少子化対策と現実
第48章 安易に子どもを産むべきでない──政府の少子化対策と現実文=今 静行今後50年足らずで日本の人口は一億人を切る日本の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの平均数)は2005年には過去最低の1.26にまで低下しました。このことはよく知られていることですが、その後、1.32とちょっぴり前年を上まわりましたが、極めて低水準であることには変わりないのです。ことの重大さに政府は児童手当の拡充、保育サービスの整備など少子化対策にいろいろな手をうっていますが、さっぱり赤ちゃんは増えません。日本の総人口は今後さらに減少していくことがはっきりしています。国立社会保障・人口問題研究所は、2055年の日本の総人口は一億人(2007年現在の総人口は一億2780万人)を切り、8993万人になると発表しています。50年間足らずでざっと30%も人口が減ってしまうのです。ショッキングな4歳女の子のホームレス驚くばかりです。人口の大減少はその国の経済基盤を決定的に弱めてしまいます。活力のない日本の将...
第50章 若々しいアメリカの年齢構成|日本老齢化は米国の二倍
第50章 若々しいアメリカの年齢構成──日本老齢化は米国の二倍文=今 静行リッチ層ほど子供を産まない。なぜか?世界的な一般傾向ですが、その国が発展するほど若年齢層の割合が低下し、逆に高齢層の比率が高くなっています。昔からある日本のことわざにある「貧乏人の子だくさん」がそっくり当てはまります。貧しいほど子供が多く、リッチな層ほど子供を産まなくなるのは世界共通の傾向です。恐らくリッチな層は、子供育てにテマヒマをかけて生きるより、より自分たちの生活をエンジョイしようという気持が強いためと説明するのが妥当でしょう。より自由、より豊かさを求めるお金持は子育てにエネルギーをさくより、自分たちが今日の生活を楽しむという行動が優先するといいかえることもできます。日本の高齢化はアメリカの二倍ところで日米の年齢構成を比較してみましょう。15~64歳までのいわゆる働きざかりの比率は日本65%、アメリカ67.1%とほぼ拮抗していますが65歳以上の高齢者層の比率になると様相が激変します。日本の21.5%に対...
第51章 興味深い日本記者クラブの10問アンケート
第51章 興味深い日本記者クラブの10問アンケート文=今 静行オバマの人気はすでに50%台に、誰が予想しただろう?日本のマスメディアの頂点にある日本記者クラブは恒例の「2009年予想アンケート」をまとめた。いつものように10問のアンケートのなかにはスポーツ・芸能という遊びもあり、座興として受け止めてほしいのだか、心あるひとたちにとっては極めて関心が高い。たとえば7問目のアンケートには、オバマ米大統領の支持率が50%を切ることが、「ある」か「ない」かと問いただしている。初の黒人大統領ということで就任時の人気は高く7割以上の圧倒的な支持を受けていたが、2009年3月末時点には支持率60%まで落ちている。日本記者クラブのアンケートでは50%を切ることもあると見ているのだろう。各自が軽い気持でアンケートに挑戦してみてほしい。決して無駄ではないと思う。日本記者クラブの10問アンケート2009年を予想して、次の設問に答えよ。1 2009年12月31日現在、わが国の首相は誰か。2 総選挙で民主党...
第52章 日本経済の強味、独自性を知る
第52章 日本経済の強味、独自性を知る文=今 静行総崩れの世界経済、日本も例外ではない無茶苦茶な話だ。返済能力のない人たちにサブプライムローンという安易な貸し付けが横行し、さらにそれを証券化した上、いい加減な格付けで多くの人たちを信用させ世界中に売りさばいてきた。要するに住宅向けサラ金そのものといい切れる。背景には土地や家屋は永久に上がり続けるという思い込みがあった。無限に上昇し続けるものなどあり得ない。イージーな貸し付けは焦げつき、すべての金融機関(銀行・証券会社など)がアッという間に破綻、倒産した。これがアメリカ発、世界金融危機である。投資より貯蓄を重視する日本人の国民性もあって、アメリカのうまい話に飛びつくようなことを余りしなかったので、比較的、被害は少なかった。しかし、世界的金融危機は不況をもたらしている。外需依存つまり輸出に精出している日本経済に対する影響は強く、日本も百年も一度といわれる不況のさなかに立たされているとみていい。他の諸外国とは違う日本の“良さ”とは……なに...
第53章 長く続く超低金利政策とひずみ
第53章 長く続く超低金利政策とひずみ文=今 静行ゼロ金利の思い入れに要注意日本の超低金利政策(ゼロ金利政策)は十年以上もつづけている。要するに金利をゼロ水準並みの超低金利にすれば、住宅や企業の設備投資が活発になるし、企業は安い金利で融資をうけ生産を増やし輸出にも精出するという考え方である。なんだかいいことづくめのような気がしてならない。すべての事象に当てはまることだが、光だけでいっぱいとか影だけがすべてということはない。光があれば必ず影があり、影があれば必ず光がある。ゼロ金利政策でいえば、おカネを借りる側にとっては光そのものである。銀行もタダ同様で預金を集めるので光そのものである。一方、影の部分は預金者(家計、個人)である。預貯金者は貯蓄しても利息がつかないのだから、一国の経済活動にもっとも影響力をもつ個人消費支出が増えないのは当然である。ゼロ金利水準をこれだけ長期間にわたってつづけても景気は全然よくなってない。この事実を知るだけで十分だと思う。あれこれ改めて説明することもないだ...
今静行|第54章 アメリカの後進性
第54章 アメリカの後進性文=今 静行誰でも銃器を売買できる国アメリカアメリカを一口で表明するならピストルが歩いている国といえる。護身用にピストルを自由に売買できる。憲法で保障されている唯一の先進国がアメリカそのものである。日本では大型ナイフの持参さえも法律で規制している。アメリカとは天と地のちがいである。自分の身に危険を感じたらいきなりピストルの引き金を引く。アメリカの後進性そのものと言える。健康保険に入れないひとが4000万人もいる。先進国といえるだろうか。アメリカの総人口は3億人強(日本の総人口は1億7770万人)だが、このうち約4000万人が健康保険に入っていない。国民皆保険でない国、つまり後進国並みといえる。国民皆保険利用が当たり前の日本人には信じがたい。アメリカ人の思考として自助努力こそすべてであり、国家に依存すべきでないということなのだろう。自分で稼いで民間の医療保険に加入すべきで、それができない者は負け組だから仕方ないという割り切り方といえる。経済の拝金主義、成果主...
第47章 依然、白人大国アメリカの苦悩|初の黒人大統領誕生と変革の度合い
第47章 依然、白人大国アメリカの苦悩──初の黒人大統領誕生と変革の度合い文=今 静行オバマ黒人大統領就任と人種問題アメリカ建国以来233年にして初の黒人大統領が誕生しました。米国史上44代目のバラク・オバマ大統領です。自由と民主主義を掲げるアメリカですが、人種問題は別格でいつもノドにトゲが刺さったような暗い歩みをつづけてきました。わずか40年前までは、トイレもレストランも白人と黒人は区別されていた国です。日本では考えられないことでした。ところで若い学生たちに、人口3億人のアメリカで黒人の割合はどのくらいかと尋ねると、多くの若者たちは50%から60%と答えます。むろん、別に根拠あっての答えではなくあくまでも情緒的な見方そのものです。黒人の比率はわずか13.5%にすぎないじつはアメリカの人口構成をみると、黒人は4000万人強で、その比率はわずか13.5%に過ぎないのです。ヒスパニック系(スペイン語系)の4550万人、15.1%より少ないのです。参考までにあげておきますと最近、目立って...
第49章 米国債を買い続けていいのか?|ざっと70兆円の巨額にびっくり
第49章 米国債を買いつづけていいのか?──ざっと70兆円の巨額にびっくり文=今 静行米財政赤字の穴埋めと中国、日本の役割アメリカの財政赤字は2009年度に1兆ドル規模にふくれ上がることが必至となってきています。とどのつまり財政赤字で苦しむアメリカは米国債を外国に買いつづけてもらうより手立てがないのです。米国債の最大の購入先は中国で現在約6000億ドルに達し、日本はほぼ中国とおなじ水準で第2位の購入先となっています。2004年では日本の購入額は7000億ドルまでふくらみました。日本円に換算して70兆円という巨額です。最近のことですが中南米のある小国では国債の元本、利息が払えなくなり、国債という国家の借用証書が紙切れになってしまいました。国が破産したのです。アメリカの国債(借用証書)が紙くずになるようなことは考えられませんが、いささか気になるところです。一部換金して日本の財政赤字の足しに一方、日本の財政も赤字つづきで政府は予算のヤリクリに四苦八苦しています。こんな状態がこれからもなが...