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2015年5月7日

第1章 “異質な国アメリカ”を改めて知る(第3回)

“異質な国アメリカ”を改めて知る(第3回)

文=今 静行

─独裁者排除の政治システム─

大統領3選禁止は、長期にわたる権力保持による、危険性の排除を目的にしたものといえます。専制、独裁への不信を徹底的に制度化したものにほかなりません。
アメリカの政治体制ほど、権力に対する抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)というメカニズムが働いている国は他に見ることができません。

ただ、このなかにあって大統領の権限の強大化は目を見張るものがあります。

アメリカの合衆国憲法は、1787年夏、フィラデルフィアの憲法制定会議で制定され、翌々年の1789年3月4日に発動しました。この憲法は、疑いもなくその時代の産物であり、18世紀的なものでした。
しかし、この7000語程度にまとめられた憲法という18世紀的文書が、部分改変はしばしばあるものの、今日まで230年経ても、なお活力を持ち続けているのです。

イギリス人が成文憲法を持っていないことを誇りとしているのと同じように、アメリカ人は世界で最も古い成文憲法を持っていることを誇りとしています。
異人種の複合体であるアメリカが、一つの大陸を開発し、強い国家をつくりあげ、世界最高の生活水準を達成するとともに、世界経済に圧倒的な影響力を持つ国際的リーダーになっているのは、この憲法に負うところが大きいといっても過言ではありません。

ところで、1789年発効の原憲法では、大統領の3選を禁止する条項がなく「任期は4年とし……」と任期だけが明文化されており、アメリカ大統領は3期立候補してはならないという伝統だけがありました。

しかし第2次大戦中という事情はあったものの、フランクリン・D・ルーズベルト大統領がこれを無視して3期当選したことがきっかけとなって、1951年に発効した修正22条では「何人も2回を超えて大統領の職に選任されてはならない」と、大統領の3選禁止が正式につけ加えられました。権力への警戒と不安の高まりが、3選禁止という形で具体化したのです。

大統領の任期が2期8年と憲法に明記されていることは、アメリカには「独裁者」が誕生しないことをあらわしています。これを裏返してみると、そのかわり大統領は期間中、自分の政策を思い切って存分にやってもいいということに直結します。

(続く)

           
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