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2015年5月7日

第10章 グレイな今年の暮らし向き(その1)

第10章 グレイな今年の暮らし向き(その1)

文=今 静行

──“今ぐらいの状態なら御の字”の理由──

新しい年度を迎え、誰もが今年度の暮らし向きを気にするものです。いきなり厳しい表現になりますが、一口で言うならば次のようになります。

「07年度は私たちの暮らしにとって、値上げして品質やサービスを落とすという踏んだり蹴ったりの経済を実感する年になるだろう」。

どうしてでしょうか。第一の理由をあげます。
日本経済について政府サイドは過去最長のいざなぎ景気を上回る好調がつづいていると、ことあるごとに声を大きくしてPRしています。私たちの実感としては格差が拡がり、給与もボーナスも増えないし、それに増税が押し寄せてきていると厳しく受け止めています。

確かに大企業は徹底したリストラのあとも正社員を増やさず、コストの安いアルバイトや派遣社員を雇っています。人件費が大幅に減っています。
一方で、下請け企業を締め上げ、設備投資を極力抑え、節約にも努めています。利益が出るのは当たり前です。このように利益を出しているのは大企業だけです。大手のある自動車メーカーでは、一兆円にも上る利益を出しているのです。

資本金1千万円以下の中小零細企業は、四苦八苦しているというのが実情です。

資本金10億円以上の大企業の割合はわずか0.2%台

ここで国税庁調べによる主要企業の資本別割合を示しておきましょう。

日本の主要企業(法人)数は280万社あります。もっとも八百屋さんや蕎麦屋さんのような零細な法人組織を含めると数百万社にのぼります。この主要企業の中で資本金10億円以上の大企業は全体のわずか0.24%ぐらい。資本金1億円以上の法人を含めても1.4%ぐらいです。

参考までにあげておきますと、資本金1千万円以下の企業は約150万社で約56%となっています。資本金1千万円以上から1億円の企業は全体の40数%です。
要するに全体の1%強のシェアより少ない大手企業だけにスポットを当てて好況を誇示しているのです。

これらの大手企業は統計を整備しており、政府も統計を取りやすいのです。政府発表の数字だけをみて判断するのは明らかに間違いです。

その2に続く

           
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