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2015年5月7日

第1章 “異質な国アメリカ”を改めて知る(第4回)

“異質な国アメリカ”を改めて知る(第4回)

文=今 静行

─任期中は思い切ったことができる大統領─

(1)なぜ、アメリカの大統領の任期は2期限りなのか(1期の任期は4年。3選禁止)
(2)なぜ、アメリカの閣僚は議席をもたない(現職議員は大臣になれない)ように規定されてるのか
(3)なぜ、アメリカの政党には党首がいないのか

この3つの疑問を解く手がかりは、アメリカが、日本やイギリスのような議院内閣制でなく、大統領制だということを知ることによってのみ可能となります。これが、アメリカの政治経済構造を知るうえで最も大切な面です。
ご存じのように議院内閣制は、議会の信任によって内閣が形成され、議会に責任を負い、議会の不信任によって総辞職します。イギリスで発達した議会政治の原則です。
議会政治を成立させている国は、政党政治という立場をとります。だからイギリスのような二大政党の場合には、次の選挙で反対党の党首が首相に就任することもあるので、事前に閣僚となる者の人選をあらかじめ決めておくことが多いのです。

これに対し大統領制は、文字通り大統領支配の政治形態をいいます。議会に依存し、いわば議会にがんじがらめの状態にされている議院内閣制とはまったく異質なアメリカ型の統治形態といえます。
アメリカの制度では、大統領は自分の党が弱体化しても選挙に敗北しても、その地位はいささかの変化もありません。
大統領は比較的冷静に、少し強い表現でいえば、傍観者のような姿勢で起きた事態を眺めることができます。それはなぜでしょうか。
自分自身の在職中の安全性が法律的に確保されているからです。アメリカの大統領制を「大統領君主制」と呼ぶ政治学者がいるのもうなずけると思います。

(次回は「市場は地球最大の心理学実験室」の稿に続く)

           
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