第10章 グレイな今年の暮らし向き(その2)
第10章 グレイな今年の暮らし向き(その2)
文=今 静行
─過去の延長線上の好況と全く異質ないまの景気─
日本が高度成長を続けていたときは、大企業が潤うと下請けも孫請けも潤う時代でした。より平易にいえば、社長が潤えば社員もその家族もともに潤いました。
いまは全く異なり、大企業が中小下請けを締め上げて、利益を出しているのです。07年の経済は、あまり多くを期待できないと受け止めるべきでしょう。
もう一つつけ加えると、大都市と地方の経済格差が際立っている点です。
それでは視点を生活面に当ててみることにしましょう。社会保険や税金など間違いなく負担が増えてきます。赤字財政を少しでもプラスにしようという政策が弱者いじめに集中していきます。市民は早く気がつかなければいけないと思います。
定率減税も廃止、医療制度、介護保険制度もそうですし、高齢者、病人、介護保険受給者、生活保護受給者など経済的に弱い立場にある人たちの負担が疑いもなく多くなっていきます。
したがって景気を左右する消費支出も思うほど増えない、スロー気味の経済であり、大きく跳ね上がっていくという要素はほとんどないと見るべきです。
こう記するとひどく悲観的な感じがするでしょうか。やはり真実を知っておくことを最優先すべきです。
目を離せないアメリカ(外部的要因)の動向を日本の影響
アメリカは現在でも世界全体の消費の3分の1を占めるという世界最大の大国です。しかし、アメリカ国内には様々な問題があり、07年のアメリカ経済は停滞気味に推移していくと私は見ています。
一つは、アメリカの景気をここ3、4年支えてきた住宅投資の流れです。
ローンの仕組みが日本と異なり、住宅の含みを担保にしたエクイティホーム・ローンは、要するにローン支払い中の住宅を担保に金融機関などが融資をする仕組みです。
ローンはローンを呼んで住宅投資市場はさらに活況を続け、アメリカの景気を引っ張ってきたのですが、ここへきて壁にぶつかり停滞気味です。アメリカの景気の足を引っ張る状況になってきています。
もう一つは、イラク戦争の泥沼化です。戦争は経済学的に言うと政府の最大の消費支出です。使い捨て経済の最たるものです。無駄遣いそのものです。
03年3月のイラク戦争以来、日本円に換算して50兆円以上のお金を使っています。
この二つがアメリカ経済を日に日に弱くしているのですが、しかし依然としてアメリカが世界経済の牽引力になっていることも事実です。
もっとも日本にとってアメリカ経済の足踏みは懸念材料でありマイナス要因です。日本の景気の足を引っ張りかねないことも否定できないのです。
国内、国外の二つの心配される要因に目をつぶってはいけないのです。