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2015年5月7日

第8章 生活を狂わす「錯誤」の恐さ

第8章 生活を狂わす「錯誤」の恐さ

文=今 静行

─気づいてほしい錯覚と誤解からの脱却─
─どんな時でも素朴な疑問を持つこと─

私たちの身の回りに錯覚と誤解つまり「錯誤」が多すぎると思います。無知のせいだと一口に決めつけたいところですが、そうとばかり言い切れない面もあります。
意識して私たちを錯誤に陥れようとする大きな力の動きがあることを見逃すわけにはいきません。大きな力とは国家権力を指します。いま起きている二、三の身近な例を取り上げてみましょう。心して読んでほしいと思います。

イラク問題です。現在、米英日本などイラクに30を超える国々が治安維持、復興支援などを理由に派兵しています。日本政府は声を大にして「日本が自衛隊を送って協力するのは世界の大勢であり当然だ」とアピールし続けています。
鵜呑みにしていいのでしょうか。じつは国連加盟国は191カ国(04年3月現在)です。イラクに軍隊を送り出している国は国連加盟国全体の2割にも満たないのです。ドイツ、フランス、ロシア、中国など世界の政治経済に大きな影響力を持つ8割以上が不参加なのです。
少数だからダメで、多数なら良いなどというつもりは毛頭ありません。イラク再生に果たす日本の役割の大きさを否定できません。問題なのは、世界の多くの国々が足並みをそろえてイラクに派兵しているような政府サイドのPRです。意図して私たちに情報操作しているのなら許せませんし、本当に大多数の国々が参加していると勘違いしているのなら何をかいわんやです。

それともう一つ。年金問題がいま国民の最大関心事になっていますが、高福祉の北欧諸国、とりわけスウェーデンの全国民を対象にした所得比例年金に一元化の年金方式を見習えとかベストとする動きが政党間に強く出てきています。スウェーデンの場合、年金改革は官僚でなく政治家が主役であり、徹底した情報公開が行われています。
しかし日本に横滑りさせようとしても無理です。なぜでしょうか。スウェーデンの人口はわずか880万人、人口密度(1km2につき)20人です。日本の人口1億2700万人、人口密度は342人です。神奈川県並みの人口のスウェーデンと、世界5位の人口大国日本とを比較させること自体無理があるのです。あくまで参考にするという程度のことにならざるを得ないのです。
似たようなケースは掃いて捨てるほどあります。どんなことに対しても素朴な疑問をいだく習性を身につけてほしいと思います。

           
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