第7章 改めて知る“経済ってなんだろう”
第7章 改めて知る“経済ってなんだろう”
文=今 静行
─「家計」が経済の出発点─
─心すべき福沢諭吉のことば─
「詩を作るより田を作れ」という昔の言葉があります。
風流にふけるのはあとまわしにして、私たちの暮らしはまず衣食住を整えることから出発せよという意味です。
本当は田を作り、詩も作る生活が最も望ましいことであるのは言うまでもありませんが、もし仮にどちらを優先させるべきかということになると、多くの人たちは「まず収入を得て、衣食住を充実させ健全な家計づくりに励む」と答えるでしょう。
経済は、田で食物を作り、収穫し、収入を得、衣食住(消費)を整えるといった毎日の生活に関するものであり、非常に身近なものです。
経済の語源は「家の管理」
ここで、経済という言葉の意味するものを少し考えてみましょう。
よく知っていると思いますが、「経済」を英語では「エコノミー(economy)」といいます。エコノミーはもともと「無駄のない。理にかなった営み」という意味を持っています。
雑学用語に出てくるエコノミーは「天の配剤・摂理」と訳されています。
またeconomy of plant(植物)という言葉がありますが、これは葉が出て、花が咲き、実を付け、やがて葉が落ちていく植物の「整然とした自然の営み」のことを言い表しています。
さらに興味深いのは、エコノミーの語源が、ギリシャ語の「家の世話」「家の管理」という言葉から出ていることです。
経済、暮らしの概念というか、底に流れているものを何となく理解できると思います。
私たちの毎日の暮らしは、いうまでもなく広く社会とのかかわりをもっていますが、家計をきちっと整えることが経済の出発点なのです。
その意味では、明治時代の思想家で西洋文化を広めた福沢諭吉が、「独立の気力なき者は、国を思うこと深切ならず」といい、個人の暮らしの独立を、文明人の理想としました。深切とは、深くはなはだしいという意味です。
味わうべき考え方があり、一世紀以上経った今日でも、揺るぎない指針として生きています。
参考までに記しておきますと、エコノミーは、ギリシャ語の「oikos」(=家)と「nomia」(=管理・法)という意味の語を合わせたものです。