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2015年5月7日
第2章 市場は地上最大の心理学実験室
第2章 市場は地上最大の心理学実験室
文=今 静行
─市場を形成させるのは「心」の動き─
─「経済的要因」と「非経済的要員(心理的要因)」を足して2で割る習性を─
自然科学の分野では、何事も理論的に解明できます。たとえば人工衛星を打ち上げた場合、順調に進めば軌道に乗りますし、軌道を外れたときは、その欠陥理由がはっきり解明できます。つまり、計算どおりに事が運び、計算が間違っていれば間違った答えがはっきり出ます。
しかし、社会科学の分野では様相が違います。理論どおりにいかないのが当たり前となっているのです。その決定的理由は、心理的要因がからんでいるからです。「心」のすべてを科学的に分析し、つかむことはできません。
外国為替相場とか株式市場は、その最たるものです。
アメリカの著名なアナリストであり学者でもある専門家が「株式市場は、地球最大の心理学実験室である」と述べています。これはたいへん説得力のある言葉です。
「株価は先安感を懸念して大幅に下がった」などと報じられるのはその一例です。だから、株価の動きは群集心理の観点で眺めるのが、最も得るところが大きいようだという結論になるのです。
株式市場を経済活動と言い換えることもできます。心が影響するという点では、実質的に少しも変わることがないからです。もちろん経済動向は、経済成長率、国際収支、インフレ率、失業率など「経済的要因」を無視して論ずることはできません。しかし経済的要因にのみ重点を置くやり方では、的確な見通しは望めないのです。
くどいようですが、経済は「経済的要因」と「非経済的要因(心理的要因)」が混在して形成されていくことを、しっかり認識しなければなりません。二つの要因を足して2で割る習性を身につけてほしいものです。