プロダクトデザインの本質を探るトビラ
「プロダクトデザインの本質を探るトビラ」に関する記事
第16回 「衣」にまつわる話―マリッジリング編(1)
第16回「衣」 にまつわる話―マリッジリング編 (1)マリッジリングだからプラチナを、というセオリーに縛られる必要はない。吉田眞紀さんが考えるマリッジリングを選ぶための基準とは?Photo by Jamandfix左/オリエンタルシルバー×パラジウムのリング(Men's Narrow)9万7650円 右/プラチナ950×K18YGのリング(Women's Narrow)24万3600円 (ともにエム・ワイ・レーベル)マリッジリングはもっとも身近な装飾品6月から連想される言葉に、ジューンブライドというものがあります。なぜ6月という季節が結婚に結びつくのか、その理由は諸説あるようですが、いずれにせよヨーロッパに由来するもののようですね。新婦が心ときめかせるもの。それはウェディングドレスだけではありません。かつて給料の3ヶ月分と言われたエンゲージリングも依然、意識せずにはいられないプレミアムなアイテムでしょうし、ましてやこれから毎日身に着けるであろうマリッジリングは、もっと特別な存在でし...
第17回 「衣」にまつわる話―マリッジリング編(2)
第17回「衣」 にまつわる話―マリッジリング編 (2)それぞれが装飾と機能に満足する、一生身に着けていたいマリッジリングを選ぶには―。Photo by Jamandfix左/プラチナ950のリング (Men's) 22万7850円 右/プラチナ950×K18YGのリング (Women's) 23万3100円 (ともにエム・ワイ・レーベル)無理に同じものをするのはナンセンス前回で 「何が好きか」 を基準にマリッジリングを選んでもいいということを言いました。ただ、ここにひとつクリアしなければならない問題があります。それは新郎新婦で必ずしも好みが合わない、ということもあるということです。もし好みが割れてしまった場合、これまでは十中八九、男性が一歩引いていたことでしょう。するとしたくないものをしなきゃならないわけだから、まず愛着が湧きません。で、愛着が湧かないから飲み会だ何だのときにその辺に置いたっきりなくしちゃうケースが頻発。まあそれは冗談にしても、いいことは何もありません。結論をいうと...
第18回 「住」にまつわる話―照明編
第18回「住」にまつわる話―照明編いつでもどこでもあかるい、それって本当にいいコトなのでしょうか。オフのリラックスタイムくらい、照明をロウソクに切り換えてこころを鎮めませんか? Photo by Jamandfixあかりとは、影を愉しむもの!?隅々まであかるいのを良しとする照明観をもつ現代日本では、玄関でもリビングでも、トイレでも階段でもどこでも新聞を読むことができます。しかしヨーロッパでは、しかるべき照明のもとでないと暗くてとても読めません。家のなかにも、光と影のコントラストがあるのです。省エネの観点からすれば蛍光灯を用いたシーリングライトがもっとも効率のいい照明なのかもしれませんが、情緒的な観点からすると日本とヨーロッパ、どちらの照明観に美意識があるかは明白です。照明の役割は、なにも空間をあかるく照らすだけではありません。もし行きつけのバーに光々とあかりが灯っていたらどうでしょう。落ち着いてお酒を飲むことができませんよね。雰囲気も台無しでしょう。また、夜寝る前にあかりの強い場所...
第19回 「住」にまつわる話―喫煙グッズ編
第19回「住」にまつわる話―喫煙グッズ編銘柄それぞれのパッケージにはじまり、タバコを取り巻くプロダクトにはグッドデザインがいっぱい!?そこには、大人の嗜好品ならではの茶目っ気があふれていました。Photo by Jamandfixひとりに1コ、「オレ専用灰皿」の利便性日に日に喫煙者の肩身が狭くなる昨今ですが、今回はそんな現状は無視しつつ、タバコにまつわるプロダクトを紹介します。まずは僕が来客用にまとめ買いしたミニサイズのアッシュトレイについて。「オレ専用灰皿」なんてよんでいますが、タバコケースと同サイズというのがなんともカワいくて心惹かれました。タバコの吸い方にも人それぞれの個性があって、それは火の消し方にもあらわれます。グシャグシャと消すと灰が散らばってしまい、しかもしばしば火種が消えてなくて燃え移ってしまったり。これが許せない人には許せないんですね。オレ専用灰皿をそれぞれに配れば、そんな作法にいちいち気をもむ必要もないわけです。ちなみに商品パッケージの脇には「5mgPAPER ...
第20回 「衣」にまつわる話_リュックサック編
第20回「衣」にまつわる話_リュックサック編日に日に秋も深まり、もうすぐ紅葉が見ごろですね。僕はピクニックが好きなも ので、オフの日にはリュックサックを背負ってよく山へ出かけます。リュックの 中身はブランケットにサンドイッチ、そしてワインのボトルを1本……。秋の澄 んだ空気のなかで飲む一杯、これがまた格別なんですよ。──それはさておき、 今回はリュックサックについてあれこれしたためようと思います。 Photo by Jamandfix命を守るための機能をデザインする蛍光色に彩られた現行の登山バッグには、テクノロジーの進化が生んださまざまな機能を見ることができます。たとえば内蔵したボトルから、チューブを通して飲料を飲むことができるという機能。横着といえば横着かもしれませんが、何千メートルという山を登る過酷な状況からすると水を飲むというわずかな動作もわずらわしく、疲労につながるものなのでしょう。同様に、ウエストや胸を留めるベルト、室をギュッと縛って中身をより身体に近づけるための工夫など...
第21回 「住」にまつわる話_チェア編
第21回「住」にまつわる話_チェア編椅子に「座る」というごく基本的な所作にしても、「どう座る」かは目的や気分 によって変わります。ゆえにデザインの方向性も多種多様。椅子の世界はグッド デザインの宝庫なのです。 Photo by Jamandfix仕事に集中する椅子、ゆったり酒を飲むための椅子シェルチェアにアーロンチェア、アノニマスデザインとして有名なエメコチェアなどなど、椅子には名作と呼ばれるデザインが数多くあります。そんな膨大なデザインが存在する椅子をもし目的別に大別するのならば、「くつろぐ」ための椅子と「集中する」ための椅子のふたつに区分できるのではないでしょうか。ソファに埋もれて仕事をしたいとは思いませんし、OAチェアを前に酒を飲みたいとも思いませんよね。流線型のスポーツカーを見て速そうだと感じるように、椅子もその形状から座り心地やフィーリングが匂い立ってくるものです。写真上の椅子はイームズのデザインによるハーマンミラー社の定番オフィスチェア『アルミナムグループチェア』です。...
第26回 「住」にまつわる話_休日編
第26回「住」にまつわる話_休日編仕事のしがらみから離れ、ただリラックスするために過ごす理想の休日。 楽しみを豊かなものにするのにも、グッドデザインは重要な役割を果たします。――休日を過ごすにあたり、朝から夜までの間に僕が愛用するプロダクトたちを紹介します。Photo by Jamandfix7:00am~ ミルクティを一杯休日の醍醐味といえば朝寝坊、なのですが、最近は残念ながら6時半過ぎくらいに目が覚めてしまいます。無理に二度寝しようとしても寝られない。そこでムクリと起きて、私はミルクティを一杯飲むことにしています。写真はそのときに使うカップ。コーヒーカップなので英国文化に精通されている方には怒られそうですが、好きなように飲むのが一番気持ちいいと思うんですよね。いかにもな花柄のアンティーク調カップだと、なんだか小指が立ってしまいそうで(笑)。さておき、このカップ。レイモンド・ローウィというフランスに生まれ、アメリカで活躍したプロダクトデザイナーによるデザインです。タバコの銘柄「ピ...
第27回 M.Y.LABELのショップについて(前編)
第27回M.Y.LABELのショップについて(前編)どうしても欲しかったのは、大きなドロワー対談などもふくめると、この連載も25回をこえますが、2006年4月にオープンしたショップについては、まだきちんと紹介していませんでした。じつはこの連載に登場するプロダクトたちも、ショップのなかや外まわりで撮影しています。というわけで、今回は世界を股にかけて活躍中の、僕の友人・Wonderwall片山正通氏デザインの『M.Y.LABEL』ショップについてお話ししようと思います。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix最初から何か通じるものがあった僕が彼、片山正通氏を知ったのは、いまから4~5年前。雑誌でインタビューの記事を読み、「コイツは面白い!」と強烈なインパクトを受け、その後すぐ知人を介しての会談が実現しました。初対面にも関わらず、僕たちがおたがいのことを理解するのに要した時間はほんの数分。話は弾み、将来僕が自分のショップをもつことになったら、ぜひデザインをお願...
第28回 M.Y.LABELのショップについて(後編)
第28回M.Y.LABELのショップについて(後編)僕の大好きな空間前回につづいて、僕の友人のWonderwall・片山正通氏のデザインによる『M.Y.LABEL』ショップについてお話します。『ロレンツィ』のような大きなドロワーを備え、好きなモノを選ぶときのあのワクワク感を味わえる、そんな店にしようと心に決めて……語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix計算され尽くした絶妙なバランス僕のデザインは、金属・石・黒など、硬質かつシャープで冷ややかなイメージのものが多いので、ショップはあえて『やわらかい雰囲気で、黒い色は使わない』という希望を出しました。テイストの好き嫌いについては、木の温かさは好き。それも重厚ではなく軽やかな感じのするモノ。また、いかにも新品な感じは避けたい。などのリクエストを、雑談を交えながら何時間も語り合いました。最初のプレゼンテーションを、僕が心待ちにしていたのは言うまでもありません。一回目の打ち合わせでどこまで理想にちかづけるか、お手...
第29回 「?」にまつわる話_かたちのないモノ編
第29回「?」にまつわる話_かたちのないモノ編僕がデザインしているのは、実際に手で触れることのできるモノですが、それらは視界から消えてしまえば、やがては忘れ去られる宿命です。しかし音、匂い、味など ──「かたちのないモノ」は、かえって人の心に忘れられない印象を残しているのではないでしょうか。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix記憶のなかでこころに響く音、匂い、味僕は「水の音」が好きです。自然のなかで聞く川のせせらぎや、はるか遠くから聞こえてくる波の音は、遠い日の記憶を呼び覚ますのか、脳のなかの何かが反応します。また楽器のチューニングに使う「音叉」も好きな音です。あんなに澄んだ音を響かせながらも、機能がたったひとつで、フォルムも美しく、潔いですよね。また匂いは、一瞬でさまざまな情景までをも思い起こさせるチカラがあります。僕が好きなのは、うまく表現しにくいのですが「空気の匂い」。あぁ、春になったなぁとか、冬が来たなぁと感じるあの匂いです。ウインタースポー...
第30回 「衣」にまつわる話_カフリンクス編(前編)
第30回「衣」にまつわる話_カフリンクス編(前編)カフリンクス(cuff links)は、字のごとくシャツの袖口(カフ=cuff)のボタンホールを繋ぐ(リンク=linkする)留め具ですが、さりげなく個性を発揮できる、魅力的なアイテムです。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixアクセサリーは、もともと男性のためのモノカフリンクスの起源には諸説ありますが、17世紀のフランスで生まれたというのが有力です。そもそもアクセサリーは、男性の「富と権力の象徴」で、王や貴族が「クラス=階級」を誇示するために用いられていたようです。当時貴族のあいだでは、装飾的なボタンをつけることが一般的で、中世の絵画にはヒラヒラの襟や袖、金や宝石で飾られたボタンを身につけた男性がよく描かれていますよね。しかしシャツのカフスは洗濯が必要だったため、その装飾ボタンも今日のような取り外しが容易な、カフリンクスの形態となっていったと考えられます。19世紀に入ると、それまでファッションリーダーだ...
第31回 「衣」にまつわる話_カフリンクス編(後編)
第31回「衣」にまつわる話_カフリンクス編(後編)さりげなく個性を発揮できるアイテム──カフリンクス。前編に引き続き、M.Y.LABELのプロダクトをご紹介します。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixおしゃれは、やせ我慢から?!お気づきの方もあるかもしれませんが、M.Y.LABELのカフリンクスは、裏側にバネのついた金具を使ったものはなく、一体型のモノか、もしくはスナップ式の金具で留めるクラシックなスタイルです。中世では、アクセサリーは「富と権力の象徴」とされ、靴やカフリンクスも自分の手によって身につけるものではなかったようです。この歴史を踏まえ、カフリンクスのトラディションと本来のスタイルを守り、多少着けにくいことがあっても、装飾性を優先したいと僕は考えるようになりました。もちろん僕自身、文明の利器にお世話になっているので、ものごとの合理化や簡便化を否定するつもりはありませんが、この片手でつけるにはちょっとやっかいな(!)、いえ少しだけ練習の必要な...
第36回 「衣」にまつわる話_ローファー編
第36回「衣」にまつわる話_ローファー編さあそろそろ夏も本番。近づくバカンスに胸を躍らせている人も多いのではないでしょうか。どうしても薄着になるこの時期は、足もとも少し軽やかに、靴はローファーを選びます。自分の足にぴったりとフィットしたローファーを、素足ではくときのなんと気もちのいいこと!まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixローファーのはき心地は、ワイズで決まる僕のローファー好きは中学1年生のときにはじまり、それこそ、いままで何足はいてきたかわかりません。ファッションに目覚めてからというもの、ローファーはいつも身近な存在で、おそらくはじめてのデートのときにも、はいて行ったにちがいありません(笑)。しかし、本当に自分の足にあう靴にたどり着くまでは、ずいぶんと苦労してきました……。社会人になった23歳のころ、あらためてローファーが欲しいと思い、英国紳士靴専門店を訪れたときのことです。もちろん買う気満々で(笑)。しかし僕の足の幅(ワイズ=WIDTH)は極端に狭く、品ぞろ...
第37回 「食」にまつわる話_暑さを乗り切るためのお酒編
第37回 「食」にまつわる話_暑さを乗り切るためのお酒編世界的な地球温暖化の影響からか、ここ数年日本の夏の暑さは、ますます厳しくなっているようです。しかし梅雨もあければ、照りつける太陽が夏の醍醐味。こんかいは暑い季節を乗り切るための、さわやかなお酒のお話です。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixラム酒の香りと、ミントの葉の爽快さ飲食が大好きな僕は、食前にまず一杯やりながらメニューを考えることが、非常にこころ躍る時間です。お酒は一般に、食前酒、食中酒、食後酒に分けられますが、いっしょに食べるものや、シチュエーションによっても、種々多様な選択肢があるのがまた魅力ですね。月並みではありますが、僕がこの時期、食後の口直しに好んで選ぶのは、ミントの葉がたっぷり入ったラムベースのカクテル「モヒート」。この飲物は見ためもじつにさわやかで美しく、まさに夏のお酒という雰囲気です。かのヘミングウエィが愛したことでも知られていますね。ミントの葉、ライム、砂糖、ラム酒、ソーダ、氷が基本の...
第38回 「住」にまつわる話_筆記用具編(前編)
第39回「住」にまつわる話_筆記用具編(前編)世の中には数多くの筆記用具が存在します。もっとも最近はパソコンさえあれば、ペンや鉛筆が必要ない人もいるでしょう。しかし少し古くさいともいえる鉛筆こそ、ありとあらゆる線が思いのままに描ける、とても優秀な筆記用具なんです。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix太い線も細い線も無限に描き出せる万能筆記用具誰もが小学生のときにお世話になったはずの鉛筆。しかしビジネスのシーンでは断然文字を記すことが多く、便利なシャープペンシルやボールペンがすっかり主流です。常に芯の先が尖った状態のシャープペンシルは、細かい字を書くのに確かに適していますよね。しかし、絵を描くのには向きません。デザインに関わることにおいては、僕は今でもすべて鉛筆を使います。かなりのヘビーユーザー、根っからの鉛筆派(?!)で、鉛筆・鉛筆削り・消しゴムの3点セットが、仕事における三種の神器とでもいいましょうか。鉛筆は握り方や筆圧の強弱で、太い線や細い線、あやふやな線やく...