第36回 「衣」にまつわる話_ローファー編
第36回
「衣」にまつわる話_ローファー編
さあそろそろ夏も本番。近づくバカンスに胸を躍らせている人も多いのではないでしょうか。どうしても薄着になるこの時期は、足もとも少し軽やかに、靴はローファーを選びます。自分の足にぴったりとフィットしたローファーを、素足ではくときのなんと気もちのいいこと!
まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix
ローファーのはき心地は、ワイズで決まる
僕のローファー好きは中学1年生のときにはじまり、それこそ、いままで何足はいてきたかわかりません。ファッションに目覚めてからというもの、ローファーはいつも身近な存在で、おそらくはじめてのデートのときにも、はいて行ったにちがいありません(笑)。しかし、本当に自分の足にあう靴にたどり着くまでは、ずいぶんと苦労してきました……。
社会人になった23歳のころ、あらためてローファーが欲しいと思い、英国紳士靴専門店を訪れたときのことです。もちろん買う気満々で(笑)。しかし僕の足の幅(ワイズ=WIDTH)は極端に狭く、品ぞろえのきちんとした店でも、サイズのあうローファーを手に入れることができませんでした。
ご存知のとおり、ローファーに代表されるスリッポンタイプの靴は靴紐がないので、ジャストサイズでなければ、とても歩けたものではありません。
自分にはあう靴がない……と落胆していたその後、パリに行く機会があり、フランスの高級靴店といわれる店を訪れました。しかしそこは、ちょっと敷居の高い有名店。大人の仲間入りをした気分でドアを開けました。
店内には数脚の椅子と足を載せる台があるのみ。靴なんて一足も並んでいません。ウインドウに飾られた靴から好みのデザインを告げたら、あとはシューフィッターが足のサイズや幅を細かく測り、店の奥から数足の靴を選んで運んできます。そして一対一のやりとりのなか、いちばんあうサイズの靴を選んでくれるのです。
しかし、シューフィッターはサイズを測ってから、しばし考え込んでしまいました。「ひょっとしたら……。あなたの足にあう靴は、うちにはないかもしれない……」と。またか……と落胆しかけましたが、最終的にこの店の靴のなかでもっとも幅が狭い「ワイズB」の靴を試してみたら、これがピッタリ!
やっと、自分の足に吸いつくような、ジャストサイズのローファーが見つかりました。
それ以来、ちょっと浮気をしてほかの店でローファーを買っても、結局ははかなくなってしまい、僕にとってのローファーとは、この店の「ワイズB」で決まりとなったのです。
夏こそ素足でローファーを!
よい靴は、はき込むほど靴と足がまるで一体化したようにフィットして、じつに気もちのよいものです。また手入れさえすれば、驚くほど長もちします。いまでは3回ソールを張り替えたものを含め、ネイビー、キャメル、キャメルと白のコンビ、黒、茶のスウェードと、色ちがいで5足が活躍中です。
夏こそは足もともかろやかに、できればローファーもさらっと素足ではきたいものです。よく靴の中が臭くなると聞きますが、どんな靴でも1日はいたら、3日ほど風通しのよいところに置いて、そのつど乾燥させれば、臭うこともありません。人も靴もオーバーワークは禁物。とくに夏は適度な休息が必要ですよね。