第1回 究極のデザインは自然?
第1回 究極のデザインは自然?
“SNOW FRAKE”(雪の結晶)
究極のデザインとは? 連載第一回目からまるで最終回のような大層な見出しを立ててしまいましたが、最初にお断りしておきたいのが、そもそもいちプロダクトデザイナーである僕に、究極を語るなど大それた気持ちはないということです。だからこの連載では、意見を押しつけることのないよう、自分が好きなものについてのアレコレを自由に語らせていただこうと思います。僕が言ったことは僕が言っているだけで、それが正しいかどうかはまた別の話。ですから、読んでくださる皆様には、どうかお気軽にお付き合いいただければ幸いです。では、まずは僕が大好きな“SNOW FRAKE”(雪の結晶)について。
同じカタチのものはひとつとてないという雪の結晶。温度と湿度の関係でその形が決まるらしいのですが、ではなぜ六角形になるのかといったことは現在でもわからないそうです。これってロマンがあると思いませんか? 僕は、究極のデザインとはこうした自然が創り出した造形物だと思っています。そして雪の結晶を見て感動するように、何かを見て純粋に「イイ!」と感じるか否かは、モノ選びにおいても重要なファクターであるように思っています。こと男性は熟練の職人がどうこうとか誰々がパターンを引いたとか、背景にある物語が好きなものですが、誤解を恐れずにいえば、それはモノの本質にいたるまでの単なる過程に過ぎません。もっともっと「イイ!」「好き!」という純粋な気持ちを大切にしたいものです。
“CONCORDE”(コンコルド)
もちろん、どんなモノ、デザインを「イイ!」と感じるかは人それぞれなのですが、僕の思う価値基準のひとつに「ムリのないカタチ」というものがあります。僕が飛行機を美しいと思うのもきっと、飛行機がいろんな意味で効率のいい、理にかなったカタチだからだと思うのです。もし飛行機のデザイナーが奇をてらって、翼をアシンメトリーにしようとしたらどうでしょうか。それは構造的にも叶わないし、叶ったとしても乗る人は不安な気持ちになってしまいますよね。それではプロダクトデザインとしては不適合でしょう。
写真は、僕が飛行機の中で最も美しいと思っている超音速旅客機「コンコルド」です。不幸な事故で過去のものとなってしまったのが残念ですが、まさに鳥そのものを想わせる姿には今でも完成された美を感じます。空を舞う鳥が長い進化の歴史の中で得たそのカタチを、人間がいじくろうなんて発想そのものが、浅はかなのかもしれませんね。