第4回 職人の手仕事
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2015年5月11日

第4回 職人の手仕事

第4回 職人の手仕事

アール・デコ期のプロダクト

あの頃のアレは良かった、なんて話をすると枯れかけたオヤジのようですが、僕は1920~30年代にかけての「アール・デコ」期のプロダクトが大好きです。この時代はちょうど産業の発展によって機械化が進み、プロダクトの大量生産が飛躍的に浸透した頃。アール・ヌーボー時代のデコラティブなデザインからは一転、当時は機械での大量生産が可能な、いわばデフォルメされたカタチが主流になったんですね。とはいえ今ほど精密な機械があったわけではなく、精度はマチマチ。そこで活躍したのはやはり「職人の手」だったわけです。

生産効率を第一とする現在においては、こうした職人の手仕事を感じるプロダクトに出会えることが少なくなってしまいました。機械の精度が上がったのだからいいじゃない、という意見も一理あるでしょう。しかし、我々が職人の手仕事を心地よく感じるのには、人の手の温もりといった詩情的なもの以上に、人間の目の精度が機械のそれを上回っているという根本的な理由があるような気がします。

人間の目は機械よりも正確

コンピューターを使ってどんなに精密にカタチをなぞり、機械でそれを削りだしたとしても、必ず微妙なズレが生まれるものです。
そしてそのズレは必ず、使う人に必ず違和感を感じさせる。写真で僕が手に持っているのは自分のブランドのボールペンですが(失礼)、この曲線ひとつとっても、機械だけで表現することは絶対にできません。なぜならコンピューターで引いた曲線は点と点とを曲線でつないだものであって、厳密にいえばそれ自体滑らかなものではないからです。その滑らかでない面を、熟練した職人は持ち前の勘で滑らかに磨いていく。使っていて心地よいものをつくろうとするのであれば、こうした人の手による仕上げを欠かすことはできないのです。当然コストには跳ね返りますが……。

といって、大量生産品を否定する気はありません(その時点で自分の暮らしも成り立たないわけで)。僕は手間がかかったモノが好きなのだから仕方がない。もしかすると脳ミソの構造が古くて、時代に対応しきれていないだけかもしれませんね。

           
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