第20回 「衣」にまつわる話_リュックサック編
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2015年5月11日

第20回 「衣」にまつわる話_リュックサック編

第20回
「衣」にまつわる話_リュックサック編

日に日に秋も深まり、もうすぐ紅葉が見ごろですね。僕はピクニックが好きなも ので、オフの日にはリュックサックを背負ってよく山へ出かけます。リュックの 中身はブランケットにサンドイッチ、そしてワインのボトルを1本……。秋の澄 んだ空気のなかで飲む一杯、これがまた格別なんですよ。──それはさておき、 今回はリュックサックについてあれこれしたためようと思います。

Photo by Jamandfix

命を守るための機能をデザインする

第20回<br>「衣」にまつわる話_リュックサック編

蛍光色に彩られた現行の登山バッグには、テクノロジーの進化が生んださまざまな機能を見ることができます。たとえば内蔵したボトルから、チューブを通して飲料を飲むことができるという機能。横着といえば横着かもしれませんが、何千メートルという山を登る過酷な状況からすると水を飲むというわずかな動作もわずらわしく、疲労につながるものなのでしょう。

同様に、ウエストや胸を留めるベルト、室をギュッと縛って中身をより身体に近づけるための工夫なども『いかに疲労を軽減するか』という目的のためのディテールといえます。ミリタリー用品とおなじく、登山バッグの機能は命を守るためのもの。そのため、プロダクトの開発にかける真剣さもひとしおです。

とはいえ、ピクニック程度の山登りにこのような本格機能を備えたバッグを背負っていくのは野暮? ギンギンの蛍光色バッグで存在をアピールするより、もっとナチュラルな風合いのそれで、自然との交わりを楽しみたいものです。

雪国の環境が生んだワザあり構造

さて上の写真は、いまはなきノルウェーのブランドのヴィンテージ品(年代不詳)。数年前に神田にあるディープな山屋『タマキスポーツ』にて、その素朴なデザインに一目惚れして購入したものです。ロゴにはスキーヤーの絵があしらわれていますが、そもそもスキーが移動手段である北欧では、スキーブランド=アウトドアブランドなんですね。

構造は至極シンプル。ただ、これがよくできている。背の湾曲した金属フレームの下部にはバンドが付いていて、背中がバッグに直接触れない構造になっています。これにより放熱、放湿するスペースを設けているのです。雪山で汗をかくということはまさに、命に関わる重大事。だからこそこんな構造が生まれたのでしょう。

セーターにツイードのトラウザーズ、そして帆布バッグ!!

続いて、これらは登山バッグの定番ブランド『ミレー』のレトロな帆布バッグです(写真上右はデッドストック品)。機能に特筆すべき点はありませんが、前述のように僕はアルピニストではないので、そこまで本格的な機能は必要ありません。ツイードのトラウザーズにクラシックなトレッキングシューズ、上着はセーターというスタイルにはこれくらいのカジュアルなバッグの方がしっくりとくるんですよね。情緒を優先するなら帆布のリュックが最適です。雨に弱いという点も、そもそも雨の日はお家でおとなしくしているので無問題です。

ちなみに軍モノの帆布バッグにもグッドデザインはたくさんあって、僕も一時期ハマっていたのですが、中古品だと弾痕があったり変なシミがついていたりとリアルすぎていまじゃコワくて手が出せません。みなさんも軍モノにはくれぐれもお気をつけを……。

現代的なナイロンバッグも、黒ならシック

最後のひとつは、スキーのトレーニング用に重宝している『ジェネラルリサーチ』のバッグ。スキー時にはゴアテックス等の現代的な素材のウェアを着るというのもあり、さすがに帆布バッグは合わせられません。だからといってコテコテの蛍光色リュックもイヤなので、シックな黒のリュックを選んだ次第です。ファッションブランドによるプロダクトながら、構造は本格的なアウトドアブランドのそれを踏襲しているので機能面には不満はありません。

スキーをするときにどうしてリュックを背負うのかというと、スキーのトレーニングではおなじコースを何度も何度も滑るために、最初に防寒着やワックスといった道具を頂上まで運んでおくと、必要に応じてすぐに取り出せるため便利なん
ですね。で、帰りに背負って降りてくるというわけです。以上、こぼれ話でした。

           
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