第38回 「住」にまつわる話_筆記用具編(前編)
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2015年5月11日

第38回 「住」にまつわる話_筆記用具編(前編)

第39回「住」にまつわる話_筆記用具編(前編)

世の中には数多くの筆記用具が存在します。もっとも最近はパソコンさえあれば、ペンや鉛筆が必要ない人もいるでしょう。しかし少し古くさいともいえる鉛筆こそ、ありとあらゆる線が思いのままに描ける、とても優秀な筆記用具なんです。

まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix

太い線も細い線も無限に描き出せる万能筆記用具

誰もが小学生のときにお世話になったはずの鉛筆。しかしビジネスのシーンでは断然文字を記すことが多く、便利なシャープペンシルやボールペンがすっかり主流です。常に芯の先が尖った状態のシャープペンシルは、細かい字を書くのに確かに適していますよね。しかし、絵を描くのには向きません。

デザインに関わることにおいては、僕は今でもすべて鉛筆を使います。かなりのヘビーユーザー、根っからの鉛筆派(?!)で、鉛筆・鉛筆削り・消しゴムの3点セットが、仕事における三種の神器とでもいいましょうか。

鉛筆は握り方や筆圧の強弱で、太い線や細い線、あやふやな線やくっきりした線など、あらゆる線を描き分けることができます。また芯を尖らせれば繊細な線も引けますし、丸まった芯の鉛筆で色を塗るように描いたり、ぼかしたりと、さまざまなタッチが加えられます。
そして描いた線が気に入らなければ、いつでも消しゴムでかんたんに消すことができる、じつにフレキシブルで便利な筆記用具です。

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鉛筆が紙に触れているときの、均一さが素晴らしい

国産の鉛筆はもちろん、名だたる舶来メーカーの鉛筆も全部といっていいほど試してきましたが、20代の前半からずっと愛用してきて、これ以上の品はないと頼りにしているのが、日本製の「三菱Hi-uni」。
みなさんもきっとご存知の、エビ茶色ボディでおなじみの鉛筆です(Hi-uniは1966年発売。ひとつグレードが下のUniは1958年発売で、今年で発売50周年を迎える、共にロングセラー)。

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Hi-uniは、芯が紙に触れているときの均一感がとにかく素晴らしい。描きながら紙の上で芯がザラっとする感触や、鉛筆がスーッと滑ってしまうなどのストレスがありません。きっと芯の粒子が非常に微細で均一なのでしょう。
ちなみに愛用している芯の硬さはH。口ではなかなかうまく説明できませんが、書き味が抜群に滑らで気持ちいいのです。
たかが鉛筆ではありますが、このドローイングの滑らかさに感じるハイクォリティは、まさに世界に誇れるグッドデザインといえるでしょう。

Hi-uniとの付き合いは、かれこれ四半世紀近くになりますが、鉛筆はずっとこれひとすじ。さすがに日本の最高級鉛筆だけあって、値段の方も松竹梅の松クラス(笑)。しかし日本で最高の鉛筆を使っているという、ちょっとした高揚感も心地のいいものです。

図面も引けてドローイングもできて、しかも昔から変わらない存在感のあるデザイン。鉛筆は筆記用具の万能選手です。鉛筆の断面に正六角形のものが多いのは、3本の指で押さえるとき角が3の倍数だと持ちやすく、また製造過程でいちばん材木のムダが出ない形状だからだそうです。

料理好きのかたは気づかれたかと思いますが、普段鉛筆立てに使用しているのは、ポメリー社のマスタードの空き瓶。なんとも安っぽい感じがいいでしょう?(笑)。鉛筆やノギスなどの道具が入ったこの瓶をテーブルの上にドンと置けばすぐに、仕事机のセッティング完了です。

           
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