プロダクトデザインの本質を探るトビラ
「プロダクトデザインの本質を探るトビラ」に関する記事
第35回 Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀対談(4・最終回)
第35回Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀「男の好きなモノ」……(4・最終回)インテリアデザイナー、Wonderwall 片山正通氏とプロダクトデザイナー、M.Y.LABEL 吉田眞紀氏の対談も、今回がいよいよ最終回。自分の好きなモノについて自由に語り合ってきたふたりですが、興味の対象にまっすぐなところはおなじでも、デザインへの取り組み方は、ずいぶんとちがうようです。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixデザインにこめる情念は希薄なほうがいい(片山)片山 眞紀さんは、アクセサリーを作るのはもういやだと思ったことなんてある? 僕はそういうことはあんまりないんだけど。仕事の進め方も常時30件くらいのデザインについて、その都度パッパッと切り替えながら、同時進行してるんだよね。吉田 いやだって思ったことは……ないかな。でも、片山くん、よくそういうスピードでやってて壊れないよね。その切り替えの速さはすごいな。片山 落ち着くと、かえってダメなんだよね。...
第46回 S.T.Dupont オリヴィエ・コクレル×M.Y.LABEL 吉田眞紀 対談(1)
第46回 S.T.Dupont オリヴィエ・コクレル×M.Y.LABEL 吉田眞紀「男性が装うことについて」(1)今回はフランスからのお客さま、「エス・テー・デュポン」のアーティスティック・ダイレクター、オリヴィエ・コクレル氏との対談が実現しました。国際的に活躍される超多忙なオリヴィエ氏は、この日も前日に香港から到着されたばかり。今日のフランスのファッション事情や、男性が装うということについて、またブランド「エス・テー・デュポン」の考えるファッション観についてもお話を伺いました。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixコンサバでありながら、遊び心も忘れない吉田眞紀 さっそくですが、一般的にフランス人の男性は「装う」ということについて、どのように考えていると思われますか?オリヴィエ・コクレル ひとことでいうと、フランス人男性は、ファションについては非常にコンサバティブ(保守的)だと思います。吉田 そうなんですか? 我々のイメージからすると、フランス人はファッショナブルで...
第47回 S.T.Dupont オリヴィエ・コクレル×M.Y.LABEL 吉田眞紀 対談(2)
第47回 S.T.Dupont オリヴィエ・コクレル×M.Y.LABEL 吉田眞紀「男性が装うことについて」(2)フランスからのお客さま、「エス・テー・デュポン」のアーティスティック・ダイレクター、オリヴィエ・コクレル氏をお迎えしての対談の第2回。随所にこだわりが感じられるプロダクトのお話から、日本人男性の着こなしにまで話題は広がって……。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix最新テクノロジーと伝統技術の融合吉田眞紀 それではプロダクトについて、ご説明いただけますか?オリヴィエ・コクレル ご存知のようにエス・テー・デュポン社は、1872年にシモン・ティソ・デュポンによって、外交官や実業家のためにブリーフケースやウォレットを専門につくる革製品のアトリエとして創業しました。その後も、贅たくな一点もののトラベルケースなど、細部までこだわり抜いた革製品を、熟練した職人によってつくってきました。吉田 エス・テー・デュポンといえば誰もが知っているのが、開くときにピーンと独特な音...
第48回 ファッションデザイナー RYUZO Nakata×M.Y.LABEL 吉田眞紀 対談(1)
第49回 ファッションデザイナー RYUZO Nakata×M.Y.LABEL 吉田眞紀「デザインは瞬発力?」(1)対談の第二弾は、フランス在住のファッションデザイナー、RYUZO Nakata氏です。スパンコールやスワロフスキーなどの装飾がほどこされた「ビジュー・デニム」(BIJOUX DENIM)のパイオニアでもあるRYUZO氏とは、パリでも東京でも、機会があれば一緒においしいお酒を飲み語り合う、気のおけない友人でもあります。今回は、RYUZO氏がファッションの道へ進むきっかけとなった、多感な幼少期のエピソードなど、はじめてうかがう話が満載の楽しい対談となりました。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix南仏ニースで生まれたRYUZO NAKATAの「ビジュー・デニム」吉田眞紀 お久しぶり。あいかわらず今日も半袖だ(笑)。RYUZO Nakata パリはオール・セントラルヒーティングで、室内はあったかいの。生まれ育った北海道の家もセントラルヒーティングだし。だから...
第49回 ファッションデザイナー RYUZO Nakata×M.Y.LABEL 吉田眞紀 対談(2)
第49回 ファッションデザイナー RYUZO Nakata×M.Y.LABEL 吉田眞紀「デザインは瞬発力?」(2)「ビジュー・デニム」(BIJOUX DENIM)の生みの親、フランス在住のファッションデザイナー、RYUZO Nakata氏との対談の第2回。柔らかくて着心地がよい、RYUZO氏デザインのジャケットやデニムに縫いつけられたスパンコールやパールは、すべて手縫いによるもの。今回は、RYUZO氏が洋服をデザインするときのこだわりも語られて……。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix大事にしているのは、柔らかくて気持ちがいい素材感吉田 「RYUZO Nakata」のブランドをつくって、活動をはじめてからはどのくらい経つの?RYUZO 5年目かな。吉田 ほんと、RYUZO君は「ビジュー・デニム」の走りも走り。生みの親だもんね。コレクションは毎回見せてもらっています。どれもよくて羽織ってみたりするんだけど、これを着るのに勇気いるなっていうか……、まだ僕には着られな...
吉田眞紀 第51回 「食」にまつわる話_春の豆編(後編)
第51回 「食」にまつわる話_春の豆編(後編)莢(さや)が天に向かって上向きに実るため「空豆」とも、また莢の形が蚕に似ていることから「蚕豆」とも書かれる、ぷっくりとした形が特徴的な「ソラマメ」。今回は、一度つまみ出すと「やめられない止まらない」状態に陥ってしまう、じつに魅惑的なこの豆についてお話しようと思います。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix季節を待って食べる空豆の旨さそれにしても、空豆はどうしてあんなに旨いのでしょうか?(笑)。食すたびにそう思うのは、きっと僕だけではないでしょう。軽く塩茹でにしただけなのに、食した人を思わず微笑ませてしまう、不思議な魅力があります。塩茹では、余分なものを排出して旨味がちょうどよく残るので、塩梅がいいといいますか、非常に旨い、一番好きな食し方です。翡翠色とも称される美しいグリーン。茹でたてを口に入れたときの、あのふわっと広がる独特の風味と微かな甘み。もうビールと空豆さえあれば、それだけで至福のひとときが約束され...
吉田眞紀 第52回 「衣」にまつわる話_花のかたち編
第52回 「衣」にまつわる話_花のかたち編春から初夏にかけては、花屋の店頭が一気にはなやぐ季節ですね。とくに贈るあてがなくても、つい買ってみたくなるものです。殺風景な部屋も花が一輪あるだけで、空気が澄んでいるような気がする……。花にはそんな不思議な力があります。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixすらっとした造形と、はかなさが美しいとても個人的な話になりますが、僕は鉢植えの花があまり好みではなく、なかでも蘭の花がどうも苦手です。蘭は高貴な花のひとつとされ、愛好者も多く世界中で珍重されていますが、なにか自己主張が強すぎて、部屋にあっても和むことができません。そのフォルムもどこか人間っぽく、こちらが見ているのではなく、蘭の方からじっと見られているような気がしてしまい、どうしても食虫植物を連想させてしまいます。僕の花の好みは、蘭のように大げさなものではなく、かといってかわいらしすぎる小花でもなく、どちらかというと「カッコイイ」感じがする、すらっとして造形の...
吉田眞紀|第53回 「住」にまつわる話_本の魅力編
第53回 「住」にまつわる話_本の魅力編たとえ飛行機の重量超過料金を払うことになろうと、腕がちぎれそうな思いで電車に乗ることになろうと「これはいいな!」と思ったら、そうそう我慢できないのが“本を買うこと”です。本との出会いは瞬間のインスピレーション。偶然のなかにも必然が存在している気がしてなりません。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix世界中どこへ行っても欠かせない本屋めぐりたとえばリングをデザインするとき、ほかのリングはまったく見ないでつくる ── ということを、以前にもこのコラムで書きました。僕の場合、デザインのアイディアソースになるのは、つくるモノとはまったく関係のないジャンルのモノ。たとえば、かつて見た映画のワンシーンや、本の1ページなどです。いろいろなジャンルの本を眺めていると、それらの刺激が自然と脳裏に焼きつき、ずいぶん経ってからひとつのアイディアとなって出現するわけです。なかでも手に取ることが多いのが、情報量も豊富でクオリティも高い洋書...
第15回 「食」にまつわる話 ソムリエナイフ編(3)
第15回「食」にまつわる話 ソムリエナイフ編(3)Photo by Jamandfix温もりあるモノとそうでないモノ連載第4回で 「アール・デコ期のプロダクトには職人の手の温もりがあった」 という主旨のことを述べました。しかし大量生産品のすべてに職人が心血を注いでいては、世の中のありとあらゆる商品が高騰してしまうでしょう。以前紹介したライヨールのソムリエナイフなどはハンドル部が本体にカシメで留められており、そのカシメとハンドル部をならすために職人の手による磨き作業が不可欠です。一方、ダイキャスト製法による写真 (上) は、ガシャーン! と機械で組み立てられた感がムンムン。技術の先進性や精度という点ではたしかに優れているのですが、温もりに欠けるため、やはり好きになれません。左のタツノオトシゴみたいな一品に注目してください。エルゴノミックデザインを思わせる、うねるようなフォルム。軽量化のために空けられた数々のホール……、まるでバブル期の家電のように過剰なデザインですね。「そこまでやるん...