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第49回 ファッションデザイナー RYUZO Nakata×M.Y.LABEL 吉田眞紀 対談(2)
第49回 ファッションデザイナー RYUZO Nakata×M.Y.LABEL 吉田眞紀
「デザインは瞬発力?」(2)
「ビジュー・デニム」(BIJOUX DENIM)の生みの親、フランス在住のファッションデザイナー、RYUZO Nakata氏との対談の第2回。
柔らかくて着心地がよい、RYUZO氏デザインのジャケットやデニムに縫いつけられたスパンコールやパールは、すべて手縫いによるもの。今回は、RYUZO氏が洋服をデザインするときのこだわりも語られて……。
まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix
大事にしているのは、柔らかくて気持ちがいい素材感
吉田 「RYUZO Nakata」のブランドをつくって、活動をはじめてからはどのくらい経つの?
RYUZO 5年目かな。
吉田 ほんと、RYUZO君は「ビジュー・デニム」の走りも走り。生みの親だもんね。コレクションは毎回見せてもらっています。どれもよくて羽織ってみたりするんだけど、これを着るのに勇気いるなっていうか……、まだ僕には着られないっていうか……。お花ついてるし……(笑)。
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RYUZO Nakata氏
RYUZO メンズでは、いま、エリック・ショーバンっていう、フランス人のフラワーアーティストが気に入って着てくれてる。このあいだ、彼が六本木ヒルズでショーをしたときに、白い花の刺繍がいっぱいついた、ネイビーのストライプのスーツを着たんだけど、すごく評判が良かったって。
吉田 どうも、カタギ向きじゃないんだよね(笑)。僕がこれを着て、どこの、どんな女を口説くんだ……っていう感じじゃない?(笑)
RYUZO ははは。カタギって? 最近はメンズでもオーダーが入るから、いってくれたら、いつでもジャケットにおそろいのパンツもつくるよ。
吉田 ところで、デザインをするときには、どんなこと考えてる?
RYUZO メンズは自分が着たいもの。レディースは、つくりは当然だけど、脱がしたらどうなるか……? 脱がして床に落ちても裏地(服)がきれい……とかを考えてるかな。
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大胆なデザインながら、美しく繊細な
RYUZO Nakataの「ビジュー・デニム」
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すべて手で縫いつけられるパールとレース。
気の遠くなるような細かい作業だ
吉田 脱がしたらね……(笑)。……そうなんだ。
RYUZO 素材感のほうが大事かな。同時にレディースの服の刺繍は、僕が(女性の身体で)「触るところ」についてる。
吉田 うわ~っ(笑)。そうなの?!
RYUZO デニムでもパンツでもスカートでも、刺繍を触れて……。ちょっと破けているところは、こう降りてきて、そこでちょっと手が止まる……みたいな。
吉田 なるほどなるほど……(笑)。
RYUZO 柔らかいとか、気持ちいいとか、そういうのが好きなんだよね。触りたい、触っていたいっていう感覚や感触が楽しいから、生地はツィードが多いし。ツィードって、4~5種類の素材が混じりあっているから、表面が均一じゃないでしょう。着慣れたニットのように、新品のときからクタクタで柔らかくて気持ちがいい、そういうのがいいね。
吉田 素材感がすごく大事なんだね。
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素材感が楽しいツィードのジャケットは、裏地にまでこだわりが
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繊細な手刺繍がほどこされたジャケットは、着心地のよいものばかり
裏地も「裏」ではない、着心地のよい洋服
RYUZO そう。だから、季節ごとのコレクションのテーマなんてないの。僕のテーマは、永遠に女性……。みんなが知ってる言葉に簡単に落ちるのが嫌なんだ。「今回のテーマはアフリカです」みたいなの……。
吉田 わかる(笑)。もっと自由でいたい?
RYUZO つねに「女性」という大きな永遠のテーマがあって、あとは「着心地」や「気持ちいい」っていうことを大事にしたい。だからRYUZOの裏地は「裏」じゃない。裏地用の生地じゃなくて、表地に使うシルクを使ってる。
吉田 デザインはどんなときに、どうやって描くの?
RYUZO パタンナーが来て、「次の絵型、どうしますか?」って聞かれたら、すぐパッと3分で描いてます……。
吉田 あ、それ、わかります(笑)。スイッチがパッと入るっていうか、ネタはつねに頭のなかにあって、スイッチが入ったら、パッと瞬間瞬間でアウトプットしていく感覚だよね。
RYUZO そう。ずーっとテーブルの前に座って、黙々とデザインをする……なんてことは、もうないね。考えたって、仮縫いで、どうせ直すんだから。
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吉田 いま、「RYUZO」のスタッフは何人くらい? フランス人もいるの?
RYUZO いまはほとんどが日本人で、あとロシア人がいて、総勢10数名のスタッフ。「RYUZO」の服は、スワロフスキーもビーズもパールも全部手縫いでしょ。一切、接着なんてしないから手がかかる。結局、日本人はとても器用で丁寧だし、みんな頑張ってくれていますよ。……愛情だよね。
吉田 今日はどうもありがとう。いろいろ小さいころの話もうかがえて楽しかった。またパリに行ったときは、おいしいもの食べましょう。よろしく。あ、もちろん、ますますのご活躍も期待しています。
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RYUZO Nakata(リュウゾウ・ナカタ)
デザイナー
RRR RYUZO NAKATA
8,AVENUE CONSTANT COQUELIN 75007
PARIS FRANCE
TEL +33-(0)1-4553-3412
CONTACT:rrrcc@free.fr
http://www.ryuzonakata.fr