第15回 「食」にまつわる話 ソムリエナイフ編(3)
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2015年5月7日

第15回 「食」にまつわる話 ソムリエナイフ編(3)

第15回
「食」にまつわる話 ソムリエナイフ編(3)

Photo by Jamandfix

温もりあるモノとそうでないモノ

連載第4回で 「アール・デコ期のプロダクトには職人の手の温もりがあった」 という主旨のことを述べました。しかし大量生産品のすべてに職人が心血を注いでいては、世の中のありとあらゆる商品が高騰してしまうでしょう。以前紹介したライヨールのソムリエナイフなどはハンドル部が本体にカシメで留められており、そのカシメとハンドル部をならすために職人の手による磨き作業が不可欠です。一方、ダイキャスト製法による写真 (上) は、ガシャーン! と機械で組み立てられた感がムンムン。技術の先進性や精度という点ではたしかに優れているのですが、温もりに欠けるため、やはり好きになれません。

左のタツノオトシゴみたいな一品に注目してください。エルゴノミックデザインを思わせる、うねるようなフォルム。軽量化のために空けられた数々のホール……、まるでバブル期の家電のように過剰なデザインですね。「そこまでやるんだから実はすごく考えられていて使いやすいかも!」 と、ナゾを探求するような気持ちで購入してしまいましたが、その結果は……。

なんだかんだ言っても、シンプルが一番

3回に渡りソムリエナイフを紹介してきました。正統派から異色の存在までさまざまありましたが、ひとつ言えるのは 「シンプルが一番」 ということです。トップ画面でも紹介した写真のソムリエナイフは、フランス本国の金物屋へ行けばたいがい売っている、『ライヨール』 のスタンダードモデル。飾り気のない、道具だ! と言わんばかりのその潔いフォルムからは、それが町の居酒屋などで広く愛用されていることが伺えます。実際に使いやすい上に、値段もリーズナブル。それでいていくら使っていても飽きません。
ただ、欧州車のスタンダードモデルが日本に輸入されないように (輸入車はやれウッドパネルだ総革シートだと、ゴージャスに着飾る傾向がありますよね)、これも不思議と日本では見かけません。もったいないなぁ、と思います。

それはそれとして、単純な機能の道具なのにここまで多彩なデザインが存在するというのは本当におもしろい。皆さまも町の金物屋にぜひ立ち寄って、あれこれ物色してみてください。

           
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