プロダクトデザインの本質を探るトビラ
「プロダクトデザインの本質を探るトビラ」に関する記事
第39回 「住」にまつわる話_筆記用具編(後編)
第39回「住」にまつわる話_筆記用具編(後編)たかが筆記用具……、されど筆記用具……。後編では、書きやすさはもちろんのこと、持っていること自体が楽しくなる、M.Y.LABELこだわりのプロダクトのいくつかをご紹介します。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix鉛筆一本を持ち歩くためのプロダクト大の鉛筆派であることは前回お話ししましたが、このロケットキャップは、鉛筆をどこでも持ち歩くためにデザインしました。鉛筆は、キャップなしでは芯がむき出しで危険ですが、だからといって始終耳の上に差して歩くわけにもいきません(笑)。しかも僕は、ジャケットを着て手ぶらで歩きたい!この由々しき問題を解決すべく、鉛筆のサイズにぴったりと合うシルバーのキャップを作ったのです。軸にキャップをクッとはめこみ胸ポケットへ。クリップで挟めば鉛筆は心地よく安定し、どこへでも出かけられます。クリップ部分は登山道具のカラビナの構造で、ワイヤーの曲げが特殊なため、バネを使わずともしっかり固定されます。板を曲げ...
第40回 「住」にまつわる話_秋の照明編
第40回「住」にまつわる話_秋の照明編あかりとは、影を愉しむもの……。影があるからこそ、光のうつくしさが際だつのものだと以前このコラムに書きましたが(第18回はこちら)、秋はこんな自然素材のやわらかなあかりが、お酒をいっそうおいしくしてくれます。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix安心するのは、ほの暗いあかり現代日本の住宅の多くは、蛍光灯のシーリングライトをはじめ、部屋のどこでも新聞が読める、まぶしいほどの明るさです。蛍光灯は昼間の明るさを再現したもの。そこには情緒も何もありません。しかし人間本来の生理はどうでしょう。自然のリズムにならって暮らした時代の人々は、日の出とともに目覚め、日が暮れれば炎のあかりのもと、ゆっくりと時間をすごしながら眠りについたはずです。仕事を終えてお酒を飲むひとときは、煌煌と照らされた照明の下ではうまくリラックスできません。やわらかなロウソクのあかりや、ほの暗い照明は、人間本来の生理にかなった、こころが鎮まる方法なのです。しかも、雰囲気の...
第41回 「食」にまつわる話_サンマ編
第41回 「食」にまつわる話_サンマ編秋はサンマのおいしい季節。店先に並ぶ艶やかなその姿を見るたびに、なんて美しい魚だろう……と思わずにはいられません。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix流線形が美しいサンマいきなりですが、食欲の秋です! 秋は松茸をはじめ、新米、新蕎麦、栗やブドウに銀杏と、おいしい食材が次々と登場する季節。しかし旬とは、その素材が一番おいしく、かつ値段も安価であってこそ。従って、僕にとって秋の味覚の四番打者といえば、断然サンマということになるのです。以前にタケノコのスタイリッシュなカタチについて語りましたが、サンマの美しい流線形も、実に理にかなった自然の造形美。目にもとまらぬ速さで海中を泳ぎまわる姿が容易に想像できます。自然界の造形は、厳しい生存競争を生き抜くための必然のグッドデザインです。合理的で無駄のないサンマの美しいラインは、余計なものをそぎ落としたデザインが信条の『M.Y.LABEL』としては、大いに学ぶべきものがあります。...
第42回 「衣」にまつわる話_巻きもの編
第42回 「衣」にまつわる話_巻きもの編朝晩の風の肌寒さに、しみじみと秋を感じるこのごろ。首の周りにくるっとひと巻きするスカーフやストールは、それだけで暖かく、気分をやわらげてくれるものです。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix機能とともに発展したデザイン秋も深まり、装うことがますます楽しくなってくる季節。冬は首のつまったタートルネックを好んで身につけますが、シャツを選ぶときも、スカーフ、ストール、マフラーなど、首に巻くいわゆる「巻きもの」が欠かせません。じつは家族にはいつも不思議がられるのですが、真夏でも鼻の下までタオルケットをかけて眠る習慣があり、首の周りに何かあるだけで妙に落ち着くのです。しかもこの巻きもの、心理的効果をもたらすだけでなく、機能的にも真に優れた侮れないアイテムです。ウールとシルク混紡のストール。リバーシブルで使いやすい本来、洋服はみな理屈の上に成り立ち、とくに男性ものは、機能が重視される軍服に由来するものが多く見られます。なかで...
第43回 「食」にまつわる話_食品のパッケージ編
第43回 「食」にまつわる話_食品のパッケージ編それ自体が商品のプレゼンテーションともいえる、食品のパッケージ。購買意欲をそそられるもの、見かけばかりが立派なもの、昔ながらの知恵と工夫が詰まったものなどさまざまですが、あらためて食品のパッケージを眺めてみると……。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixパッケージに求められるものとは資源のリサイクルに、ゴミの分別。限られた資源と地球環境の未来を考えれば、もはや当然のことでしょう。しかしこれほどエコが叫ばれるようになっても、食品の過剰包装がいっこうに改善されないことには、正直、首をかしげざるを得ません。ご存知のように、スーパーマーケットが一般化するまでは、食品は個人商店での対面販売が基本でした。カゴや皿に盛ってある魚や野菜を、店主と世間ばなしのひとつでもしながら品定めし、お金を払って持参した買物かごに入れる。包んでもらうとしても新聞紙がせいぜいで、豆腐などは鍋をもって店まで買いに行ったものでした。現代のスー...
第44回 「住」にまつわる話_たき火編
第44回 「住」にまつわる話_たき火編冬の風物詩のひとつでもあった、晴れた空に立ち昇るひとすじの煙。最近では、落ち葉が燃える「たき火」の匂いを嗅ぐこともすっかり減り、誰もが知っている~垣根の垣根の曲がり角~♪というあのメロディさえ、あまり聴かれなくなってしまいました。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix炎が与えてくれるもの都会ではまず地面がない、燃やせる広葉樹が少ない、環境問題や密集した住宅環境など安全面の問題と、さまざまな要因から「たき火」ができる環境そのものが、贅たくになってしまったのかもしれません。自治体によっては「許可を受けていないたき火は禁止」と条例で決まっている地区もあるようです。都会というほどではないにしろ、気軽に「たき火」を楽しめる環境に住んでいない僕は、山の家を訪れると、ここぞとばかりに「たき火」をはじめます。そこらじゅうの小枝や枯れ木を集めて火を起こせば、気分はすっかり少年時代。あの薪が弾けるパチパチいう音と、ちょっと燻されるよう...
第45回 「衣」にまつわる話_機能性インナー編
第45回 「衣」にまつわる話_機能性インナー巷では日常的にからだを鍛えたり、普段からカジュアルな装いとしてスポーツウェアをとりいれてみたりと、スポーツがひとつのファッションのジャンルとなっている感がありますが、今回はスキー以外のスポーツをしない僕が、実際に着てみて感心した「機能性インナーウェア」について話してみようと思います。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix着るだけで姿勢が矯正される唐突ですが、寒さとともに街でも背中を丸めて歩くひとを多く見かけるようになりますね。持病の頸椎の椎間板ヘルニアにとっては、肩が前方に丸まる姿勢がとくによくないようで、この時期痛みが増すのが悩みのたねです。しかし困ったことにこのヘルニア、普段から姿勢をよくする以外、積極的な対策がありません。そこで一昨年の秋以来すっかり愛用しているのが、アシックスの「機能性インナーウェア」です。このシャツは見た目もシンプル。もともとはアスリートのために開発されたものだと思いますが、背中部分...
第50回 「食」にまつわる話_春の豆編(前編)
第50回 「食」にまつわる話_春の豆編(前編)肌寒かった季節も過ぎ、外はすっかり春爛漫。春といえばスーパーマーケットの棚にも、青々とした豆類が顔を揃え、そのエネルギーに満ちたみずみずしさが、大いに食欲をそそります。無類の豆好きとしては、もう食べ尽くすしかないわけで……。語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix春だけの贅沢を味わい尽くす春は自然界の生命が、新しく活動をはじめる季節。春野菜のほかにも、貝類や鯛などの魚介類が旬を迎え、四季のある日本に生まれたことを感謝せずにはいられません。そんななかで毎年とりわけ注目してしまうのが、種類も豊富な「豆」です。お馴染みのインゲンやサヤエンドウはもちろんのこと、この時期、とくに旨いのは、空豆、スナップエンドウ、砂糖サヤにグリーンピース。ほどよい歯ごたえと、豆そのもののもつ控えめな甘さが絶妙で、我が家の食卓を何度となく賑わせてくれます。インゲンしかし、その食べ方はいたって単純。甘辛く煮付けたりするのは、あまり好みではな...
第22回 TERAKOYA 間 光男×M.Y. LABEL 吉田眞紀対談(1)
第22回身近なグッドデザイン対談|TERAKOYA 間 光男×M.Y. LABEL 吉田眞紀「グランメゾンとそのカトラリー」.....(1)有名無名あらゆるプロダクトに目を向け、その魅力を探るプロダクツデザイナー吉田眞紀による連載。番外編と題した今回は趣向を変え、武蔵小金井で1954年創業のフレンチレストラン『TERAKOYA』を営むオーナーシェフ、間 光男さんとの対談をとおして、料理と、料理を楽しむためのカトラリーにスポットを当てます。シリーズ第1回は間さんのレストラン哲学についてお話をうかがいます。構成と文=秦 大輔Photo by Jamandfix手間を惜しまないTERAKOYAの料理に思わず顔がほころんだ吉田 旧交詢社ビルにあったビアレストラン『ピルゼン』のパーティで紹介されたのがお付き合いのきっかけですね。間 その後はスキーにもご一緒させていただいて。吉田 じつは子供のころちょくちょくTERAKOYAさんには親に連れられて来たことはあったんですけどね。あらためて料理をい...
第23回 TERAKOYA 間 光男×M.Y. LABEL 吉田眞紀対談(2)
第23回身近なグッドデザイン対談|TERAKOYA 間 光男×M.Y. LABEL 吉田眞紀「グランメゾンとそのカトラリー」.....(2)フレンチシェフの間光男さんとプロダクツデザイナーの吉田眞紀さんとの対談、その第2回。数あるフレンチレストランのなかでも、最高に贅たくなレストランとされる『グランメゾン』。究極のレストランづくりに生涯を捧げる間さんに、グランメゾンの定義とその精神についてお聞きします。話は料理人とデザイナーの共通項にも及んで……。構成と文=秦 大輔Photo by Jamandfix究極のレストランとは何か!?吉田 この建物を維持するのは大変なのでは?間 TERAKOYAの建物のいちばん古いところは、昭和9年に建てられたものです。もともと絵描きだった私の祖父が木造の洋館を建てて、創作の場にしたんですよ。(古い建物ということもあり)毎年のように手を入れて、改装を重ねています。オリジナルを大切にすることはもちろん必要だと思うのですが、食事をする場なので機能的でないとい...
第24回 TERAKOYA 間 光男×M.Y. LABEL 吉田眞紀対談(3)
第24回身近なグッドデザイン対談|TERAKOYA 間 光男×M.Y. LABEL 吉田眞紀「グランメゾンとそのカトラリー」.....(3)フレンチの精神、料理人の哲学についてお話をうかがってきた対談もシリーズ3回め。今回からは料理に華を添えるカトラリーにフォーカスしていきます。日用品とはちょっと縁どおいグランメゾンならではの豪華なカトラリーに、プロダクトデザイナー吉田眞紀は目を輝かせているようで……。構成と文=秦 大輔Photo by Jamandfix魚用ナイフとステーキナイフ間 きょうのために埃まみれになりながら蔵から引っ張り出してきました(笑)。創生期の頃のものが多いですね。吉田 ありがとうございます。蔵、たのしいカトラリーの宝庫だろうなぁ。間 こちら(上写真左側の3本)は魚用ナイフですね。魚ですので切れ味うんぬんではなく、押して切る感じで使うものです。またこういうのは邪道なんですが『ステーキナイフ(魚用ナイフの右側3本)』といってギザギザがついているものもあるんですよ。あ...
第25回 TERAKOYA 間 光男×M.Y. LABEL 吉田眞紀対談(4)
第25回身近なグッドデザイン 番外編対談|TERAKOYA 間 光男×M.Y. LABEL 吉田眞紀「グランメゾンとそのカトラリー」.....(4)番外編シリーズ最終回も引き続きカトラリー談義。機能性について進化の余地を考察するとともに、長い料理の歴史が生んだカトラリーの「モノとしての豊かさ」を再確認します。今度レストランへ行く際は、並べられた食器にも目を配るとおもしろいかもしれませんよ!構成と文=秦 大輔Photo by Jamandfixこれまでのカトラリーはちょっと大きい!?吉田 新しいカトラリーが欲しくて探しまわっているのですが、ヨーロッパのカトラリーってカッコはいいのだけど、ちょっと大仰すぎてあんまり機能的ではないな、と思ってしまうことがあるんですよ。重量にしてもサイズにしても若干おおきい気がするんです。そのあたり、間さんはどう思われますか?間 そのとおりだと思います。というのは、むかしは前菜とメイン、で、最後にデザートがつくというメニュー構成だったので、ひとつの料理の量...
第32回 Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀対談(1)
第32回Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀「男の好きなモノ」……(1)M.Y.LABELのショップデザインを手がけた、いままさに世界を股にかけて活躍するインテリアデザイナー、Wonderwall 片山正通氏と、M.Y.LABEL 吉田眞紀氏の対談です。それぞれ独自の世界観でクリエイティヴな活動をつづけ、友人でもあるふたりが「自分の好きなモノ」をもちよって、モノ選びの視点からデザインに対する思考回路に至るまでを大いに語り合いました。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixストーリーのあるものに、なんだか惹かれてしまう吉田 7~8年前に片山くんが載ってた自動車雑誌のインタビューを僕が偶然に読んで、「コイツ絶対面白い!」と思ったのが、そもそもの出会いのきっかけなんだよね。それから縁あって、この『M.Y.LABEL』ショップもデザインしてもらって……。お世話になってます。片山 いえいえ。いやぁ眞紀さん、きょうはほんと、ひさしぶり。吉田 ひさしぶりだよ...
第33回 Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀対談(2)
第33回Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀「男の好きなモノ」……(2)インテリアデザイナー、Wonderwall 片山正通氏と、プロダクトデザイナー、M.Y.LABEL 吉田眞紀氏の対談の2回めは、おたがいの好きなモノを披露しながら、その理由に感心したり、共感したり、驚いたりと、ますます盛り上がります。何気ない会話のなかには、ふたりのモノ選びの視点があちこちに……。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixなくても生きていけるけど、あると幸せを感じるモノたち片山 (ミニカーを手にして)これ、シトロエンだよね?吉田 そう。ちょっとガキっぽいんだけど。手に入れたのは20年くらい前になるんだけど、この「シトロエンDS(アバン)のミニカー」は、1964年の冬季オリンピック・インスブルック(オーストリア)大会の特別バージョンなんだ。(※1992年までは、夏季冬季ともおなじ年にオリンピックが行われていた)僕はすっごくスキーが好きだから、店で偶然これを見つけ...
第34回 Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀対談(3)
第34回Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀「男の好きなモノ」……(3)インテリアデザイナー、Wonderwall 片山正通氏と、プロダクトデザイナー M.Y.LABEL 吉田眞紀氏の「男の好きなモノ」に関する対談シリーズも、こんかいで3回目を迎えます。話題は、どんなときにインスピレーションを感じるか、デザイナーとしての芯の部分にまで迫っていきます。まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfixインスピレーションはどこからやってくるのか吉田 片山くんは外国で建築物などを見て、この手があったか! と思ったりすることなんてあるの?片山 僕は建築物そのものというより、ホテルの窓からの風景で、ビルとビルの微妙な重なりがひと塊(かたまり)で見えたときとかに、造形的に面白いなぁって感じたりします。吉田 なるほど。そういうふうに見てるのか……。僕は外国でビルの並んだ風景を眺めて、これが小さくデザインされたらどうなるかなと思ったり、飛行機のパーツを見ていいなって感じ...