第13回 「食」にまつわる話 ソムリエナイフ編(1)
Lounge
2015年5月11日

第13回 「食」にまつわる話 ソムリエナイフ編(1)

第13回
「食」にまつわる話 ソムリエナイフ編(1)

Photo by Jamandfix

鳥がなにかをついばんでいるような……

これほどお酒のネタが続くと「オマエはどれだけ飲んでるんだ」という話にもなりかねませんが、振り返ればほぼ毎日飲んでいるような気がしないでもない。そんなわけでお酒に関する道具も日増しに増えるばかり……、今回はその中でも大好きな「ソムリエナイフ」にフォーカスしようと思います。

上の写真はソムリエナイフを使っていざコルクを抜こうという場面を撮影したものです。唐突ながらこのフォルム、鳥がなにかをついばんでいるところに似ていると思いませんか? 僕はそのコトに気づいた瞬間、ソムリエナイフをとても身近な愛すべきものに感じ、好きになってしまいました。気づけば手持ちがおよそ50個。でも、決してコレクターではありません。

僕がソムリエナイフを集めるようになったのには理由があります。以前アパレルブランドの企画の仕事をしていたときに、オトコの粋な小道具であるソムリエナイフをウチもつくろうではないか、ということになり、その資料となるものが必要になったのです。プロジェクトは結局「服のブランドがそんなものつくってどうするの?」ということから立ち消えになってしまったのですが、いつかデザインしたいという気持ちに変わりはありません。

フランスの王道ブランド 『ライヨール』

写真は通称 『ライヨール』 と呼ばれているフランスのブランドのソムリエナイフです。酪農が盛んな地として知られるライヨールという村がその由来ということで、プロダクトのすべてに村のシンボルであるアブのマークがついています。ちなみにブランド正式名称は 『フォルジュ・ドゥ・ライヨール』 なのですが、もうひとつライヨールの名を冠するブランドに 『シャトー・ラギオール』 というのがあって、どちらが本家か!?という牛丼屋の元祖争いのようなとりとめのない論争が湧いているようです。このブランドのものを集めてる、というわけではないのでブランドストーリーについては割愛しますが、興味がある方はライターの山口 淳さんの著書 『これは、欲しい』 に一項割いてあるあるので読んでみてください。

ワインオープナーと呼ばれるものにはいくつか種類がありますが、僕が好きなのは写真のようなコークスクリュー、ブレード、栓抜きがついていて、すべてを片手で操作できるソムリエナイフタイプです。比較的近代になってから登場したカタチということで、アンティーク品がないのも重要なポイントです。古いのから新しいのから全部買っていてはキリがないですもんね。ちなみにアレッシィの人の形を模したワインオープナーも有名ですが、ああした両ハンドルのタイプは両手を使ってコルクを引き抜かなければいけないので、おそらく家庭用だと思います。ソムリエは立ったままワインを空けなくてはなりませんからね。もちろんプロ用だからエラいというわけでもなく、むしろ両手操作型の方が垂直に引き抜けるので機能的なくらい。ただ 「そこをワザでカバーする」 というプロ意識に僕はどうも惹かれてしまうようです。

写真のソムリエナイフはライヨールの中でもクラシックなタイプばかりで、栓抜きがボトルに接する側の金具と一体化しています。フォルムや彫刻からもどことなく懐かしい雰囲気を受けますね。ちなみに左列中央のソムリエナイフのハンドルはトナカイ角製、下はライヨール村の名産ともいわれる水牛角製です。

モダナイズされた新しい 『ライヨール』

一方のこちらは、ライヨールの中でも比較的新しいモデル。滑らかにカーブしたハンドルラインにモダンさが垣間見えます。と、これらのモデルはデザインをできるだけ簡素化するためか、栓抜きがブレード (刃) の根本についています。いいアイデアだな、と最初は思ったのですが、実際に使ってみるとどうも使いにくい……。栓抜きのスペースがある分、ブレードが遠い場所にあるため、封を切るのに力が入りにくく、よろしくないんです。僕が未熟なだけで、プロのソムリエはこちらの方がいいという人がいるかもしれませんが、使ってみて初めて気づくことは多々あります。
(これも余談。左の4つはトレードマークのアブのデザインまで簡素化されていますね。最上段はハンドル部の素材にアルミを採用したモデル、最下段はスネークウッドを採用したモデル)

           
Photo Gallery