第11回 「食」にまつわる話 タケノコ編
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2015年5月11日

第11回 「食」にまつわる話 タケノコ編

第11回 「食」にまつわる話 タケノコ編

photo by SEIJI NOMURA

スタイリッシュ・タケノコ

ビールの旨いこの季節(年中ですが……)、一緒につまみたい「旬」の食材といえばタケノコです。タケノコを漢字で書くと「筍」。まさに旬が命の食材というわけなんですね。なんでも暖冬だった今年はタケノコの当たり年らしく、アク抜きをしなくても食べられるほど柔らかく、美味。産地によっては5~6月ごろまで採れるとのことなので、それまで味わいつくさねば!

ところでこのタケノコ、眺めれば眺めるほど実にスタイリッシュなカタチをしていると思いませんか? 過保護なまでに厚い皮が重なり合いながらも、どこか整然とした佇まい。そして明日にも天を突きそうな力強いフォルム……生存競争を生き抜くために、土を突き破って一気に成長するために得たであろうその合理的なカタチに僕らは、なにかとてつもなく大切な栄養を中に秘めていることを察しないわけにはいきません。初めて食したご先祖様もきっと、そのカタチからうまそうだと手にとったのでしょう。

同じように、僕らはスポーツカーを見たとき、そのスペックを知らずとも「速そう!」と感じることができます。それはたとえエンジン性能が同じであっても、流線型である方が四角いバンよりも速いことを知っているから。ツバメとハトを見てもどちらが速く飛べるかは一目瞭然です。形状の合理性という点において我々は、自然が生み出したモノ以上に説得力のあるモチーフを知りません。プロダクトデザインの世界においても、自然の造形は最も見習うべき要素のひとつなのです。

デザインとは、制約から生まれるカタチ。タケノコはもちろん自然の産物ですが、その「土を突き破る」「身を守る」というある種の制約から生まれた形状は、デザインに置き換えることもできるでしょう。すると「うまそうだな~」とワクワクさせるような、何かを予感させるような食材のカタチも、実は身近なグッドデザインなのかもしれませんね。

           
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