第12回 「住」にまつわる話 花瓶編
第12回 「住」にまつわる話 花瓶編
photo by Yuichi Sugita (BIGHE)
ガラス、透明の魔力
道ばたを見やれば軒先のチューリップやガーベラが咲き乱れる、風景も賑やかな季節になってきました。ウィンタースポーツを愛するがゆえに春嫌いな僕ですが、それでも春の花を見れば気分は高揚します。部屋に一輪あるだけで雰囲気が和らぐ、そんな不思議な力が花にはありますよね。
そんなわけで、僕は花を部屋に飾るのが好きですし、花を飾る器である花瓶も同じように好きです。自宅ではシャンパンフルートを花瓶の代わりに並べたりして楽しんでいます。細長い透明の器に一輪ずつ花がさされ顔を出している様が、何ともかわいらしく、綺麗なんですよね。写真のガラスオブジェもふだんから花瓶として使っているものです。クリアなガラスの中に、何か生き物のような浮遊物が浮かんでいるような不思議なカタチ。それをなぜ素敵だと思うのか、明確な言葉にすることはできませんが、僕はこの透明な塊に一目で惚れ込んでしまいました。
鳥がキラキラするものを巣に持ち帰りたがるように、僕はこのガラスという素材で出来たモノにどうも惹かれてしまうようです。気になると買って帰ってしまうので、カップボードにもワイングラスやリキュールグラス、ショットグラスetc.が奥までぎっしり。でも取り出すのが面倒だから手前のものばかりを使ってしまい、それで忘れた頃に奥のヤツが出てくると「ああ、そういえばこんなヤツがいた、よしよし」とふいに嬉しくなったり……。いくら持っていても飽きることがありません。グラスには、シャンパンフルートのように線の細い育ちの良さそうなヤツもいれば、それこそビールのタンブラーのような、見るからに百戦錬磨の猛者もいる。そして、そのどちらにも固有の魅力がある。決してラグジュアリーな素材というわけではありませんが、それだけに多様なプロダクトになりうるガラスという素材に、僕は果てしない表現の可能性と魅力を感じるのです。
話が思わず脱線してしまいました。写真のガラスオブジェは、奥野美果さんという気鋭のガラス造形作家による作品です。展示会でその作風に一目惚れして以来、気づけば三作品を購入していました。こちらも本当は自宅用に買ったつもりだったのですが、M.Y.LABELのショップに置いてみたところ実にしっくりハマったので、まだ一度も持ち帰れていません。ショップへお寄りの際はオブジェにも目を向けていただければ幸いです(笑)。
ガラス造形作家、奥野美果さんのHP
www009.upp.so-net.ne.jp/mica-glass