第35回 Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀対談(4・最終回)
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2015年5月11日

第35回 Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀対談(4・最終回)

第35回
Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀

「男の好きなモノ」……(4・最終回)

インテリアデザイナー、Wonderwall 片山正通氏とプロダクトデザイナー、M.Y.LABEL 吉田眞紀氏の対談も、今回がいよいよ最終回。自分の好きなモノについて自由に語り合ってきたふたりですが、興味の対象にまっすぐなところはおなじでも、デザインへの取り組み方は、ずいぶんとちがうようです。

まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix

デザインにこめる情念は希薄なほうがいい(片山)

片山 眞紀さんは、アクセサリーを作るのはもういやだと思ったことなんてある? 僕はそういうことはあんまりないんだけど。仕事の進め方も常時30件くらいのデザインについて、その都度パッパッと切り替えながら、同時進行してるんだよね。

吉田 いやだって思ったことは……ないかな。でも、片山くん、よくそういうスピードでやってて壊れないよね。その切り替えの速さはすごいな。

片山 落ち着くと、かえってダメなんだよね。つねにいろいろ考えて、パッパッパッて切り替えて、デザインにこめる情念がある意味希薄じゃないと、マスになったときに重くなりすぎちゃう気がするんですよ。そのほうが、ぬける空間が出せるっていうかね……。

第35回<br>Wonderwall 片山正通×M.Y.LABEL 吉田眞紀<br><br>「男の好きなモノ」……(4・最終回)

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吉田 そうか~。デザインに対しての取り組み方は、ずいぶん違うみたいだよね。僕はけっこう、内にこもって考え続ける方が合ってるみたい。
片山くんの、情念がある意味希薄なほうがいいっていうのは、(依頼されたデザインが)自分のモノであって、自分のモノではない感じがあるからなのかな?

デザインとは、欠品している商品を棚に納品する感じ(片山)

片山 客観的にブランドを見ないといけない立場ですからね。よくいうんだけど、僕は「自然にそこにあってほしいモノを、たまたま作っている立場」っていう自分の感覚があるんだよね。説明しづらいんだけど。言い方を変えると、ブティックなら「買物に行っているような感じ」でデザインしてるんです。

吉田 買物ね……。それはまた、どういう感じなの?

片山 とても概念的な話なんだけど、買物に行ってるようなつもりでデザインするほうが、終わったあとからも楽しめるんです。買物っていうのは、僕の頭のなかに商品の棚があって、商品がポンポンと並んでるとしますよね。その棚にたまたま点線が描かれて、欠品してるところがあって、その空いてるところに僕が品物を納品してる感じ……。同時にお客さんの立場で「取り寄せられますか?」みたいな。デザイナーとクライアントと、それに消費者の視点も入ってくる感じって言えばいいですかね?

吉田 そういう感覚があるんだ。面白いね。

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デザインとは、必要な要素をどう編集するか(吉田)

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片山 究極をいうと、機能があればデザインはなくてもいいんですよ!

吉田 片山くんがすごいのは、そういうスパっとしたところだよね! 僕もデザインっていうのは、結局、編集だと思ってるけど。たとえば、ひとつの器にしても、モノが入らなければならないとか、片手で持てなければならないとか、いろいろと必要な要素(機能)をどんなふうに編集して、いかに整理していくかってことだと思うんだよね。デザインって。

片山 わかるなあ、それは。ちゃんと編集すればいいのに、元々ある機能にさらに機能を付け加えて、どっちも気持ち悪くなっちゃったモノを目にすることが、時々ありますよね……。ちょうどいい加減っていうのが必ずあるはずなのに。

吉田 そこがデザイナーとしての感覚が、試されるところだよね……。ほんと。

吉田氏お気に入りの、シトロエンDSのミニカーは、1964年の冬季オリンピックバージョン。車中の小さな人形が、ルーフに載ったスキーを履いたりと、細部まで凝ったつくり。(詳しくは「男の好きなモノ」…(2)へ)

機能的に優れているモノを持つことが楽しい

片山 いま、携帯電話は、3ヵ月でモデルチェンジして、店から消えるっていわれてるでしょ。

吉田 3ヵ月! そうなの?!

片山 ハードの機能がどんどん進化して、変わっちゃうからなんだって。眞紀さんの作ってるモノは、テクノロジーをある意味拒否しているわけですよね。それはすごく幸せなデザインだと、僕は思いますよ。

吉田 そうなのかもね。どうしても必要なモノじゃないしね。

片山 そのへんは、どう思ってます?

吉田 う~ん。その(テクノロジーを拒否している)割りには、このデザインは機能的にどうの……なんてうたったりして、かなり矛盾してるんだけどね(笑)。

片山 わかる……(笑)。でもすごい勢いで、いろいろなものが消費されていく時代だからこそ、「機能的に優れている」っていう視点にわざわざ立って考えられた商品を持つことが、楽しいって感じるんじゃないかな。

吉田 いいこというね!(笑)。そういう機能の説明を聞いて買うとうれしくて、みんなに見せびらかしたりするんだけど、実際には使ったことがなかったりね。

片山 あるよね~、そういうこと。でも、きっとそのストーリーがいいんですよ。

吉田 ストーリーね……。結局、モノが好きってそういうことなのかもしれないね。うん。きょうは片山くんのいろいろな話が聞けて、とっても楽しかった。ありがとうございました。

身近なグッドデザイン 番外編対談
Wonderwall 片山正通×M.Y. LABEL 吉田眞紀「男の好きなモノ」……了

※片山正通さんのプロフィールは「男の好きなモノ」……(1・2)をご覧ください

           
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