テレンス・コンランというデザインの革新者、その88年の軌跡

Exhibition view Photograph by Yasuyuki Takaki Courtesy of CONRAN SHOP JAPAN LTD.

DESIGN / INTERIOR
2024年11月20日

テレンス・コンランというデザインの革新者、その88年の軌跡

CONRAN|コンラン

デザイナーのテレンス・オルビー・コンラン卿のプロダクトや愛用品などから彼の人生に迫る「テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする」が東京ステーションギャラリーで2025年1月5日(日)まで開催中。300点以上の作品や資料を通じて、戦後イギリスのデザイン革命を牽引した一人の創造者の軌跡が明らかになる。

Text by YANAKA Tomomi

「無駄なくシンプルで機能的」なデザインをテーマにモノから社会までデザイン

1931年、ロンドン南西部のサリー州に生まれたコンラン。その創造の原点は、ブリティッシュポップアートの先駆者エドゥアルド・パオロッツィのもとでの学びにあった。若きコンランは、テキスタイルや食器のパターンデザインからキャリアをスタート。1950年代には既に、デザインを通じて人々の暮らしを豊かにするという明確なビジョンを持っていた。
コンランと彼がデザインした「コーン・チェア」、1952年撮影 、レイモンド・ウィリアムズ・エステート蔵 Photograph © Estate of Raymond Williams / Courtesy of the Conran family
1960年代、コンランは画期的なショップ「ハビタ」を創業。これは単なる店舗ではなく、新しいライフスタイルを提案する場としての革新的な試みだった。続く1970年代には「ザ・コンランショップ」を展開。デザイン性の高い日用品を手の届く価格で提供するという理念は、世界のデザイン市場に大きな影響を与えた。
コンランの創造性の核心にあったのが、18世紀後半に建てられた赤レンガの邸宅、バートン・コートだ。ここは単なる住まいではなく、コンランの理想を具現化する実験場でもあった。敷地内に設けられた家具工房「ベンチマーク」は、オリジナル家具の製作拠点として、やがてヨーロッパ随一の工房へと成長。菜園での園芸やレストランのレシピ開発など、コンランの多面的な創造活動の舞台となった。
1980年代から1990年代にかけて、コンランは日本でも精力的に活動を展開。1994年には「ザ・コンランショップ」を日本に開店。2003年には六本木ヒルズのインテリアデザインも手掛けるなど、日本のデザイン文化にも大きな影響を与えた。
「Plain, Simple, Useful(無駄なくシンプルで機能的)」なデザインが生活の質を向上させるというコンランの信念は、単なるデザイン哲学を超えて、社会を変革する力となった。彼は個人の生活空間から都市計画まで、幅広い視野を持って活動。1989年にはナイトの称号を授与され、その功績が認められている。
本展は、デザイナーとしての初期作品から、「ハビタ」や「ザ・コンランショップ」というビジネスの展開、食とレストラン事業、建築・インテリアプロジェクト、製造業としてのベンチマーク、そして創造の拠点となったバートン・コート、日本でのプロジェクトまで、8つのセクションで構成。特に注目すべきは、250万部以上を売り上げた1974年の代表的著作『The House Book』や、デザインの未来への展望を示す資料の数々だ。時代とともに進化を続けたコンランの多彩な活動の全容が、この展覧会で明らかになる。
2020年に88歳でその生涯を閉じるまで、コンランは「デザインが暮らしを豊かにすること」を追求し続けた。本展は、そんな彼の精神と創造の軌跡を、300点を超える作品と資料を通じて体感できる貴重な機会となっている。
テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする
会期|2024年10月12日(土)~2025年1月5日(日)
休館日|月曜日(ただし12/23は開館)、12/29(日)~1/1(水)
開館時間|10:00~18:00(金曜日は~20:00) ※入館は閉館の30分前まで
入館料|一般1500円、高校・大学生1300円、中学生以下無料
会場|東京ステーションギャラリー
東京都千代田区丸の内1-9-1
問い合わせ先

東京ステーションギャラリー
Tel.03-3212-2485
https://www.ejrcf.or.jp/gallery/

                      
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