Fragrance Gymnasium
「Fragrance Gymnasium」に関する記事
第8回 「オトコ香る。」プロジェクトに迫る(1)
大ヒット“香り”ガム「オトコ香る。」プロジェクト その秘密に迫る-12007年3月19日。<伝説のガム>復活の日として、「香」史に刻まれました(中野版の勝手な歴史ですが……)。カネボウフーズのガム「オトコ香る。」が、パワーアップして市場に戻ってきた日です。初代「オトコ香る。」は、2006年7月28日、予想外の売れ行きに製造が追いつかず、販売停止になっていました。モノが売れない、と嘆く人も少なくない時代に、そんなヒット商品を開発したのはどんな人なのか。開発の背景、そして「売れた」背景にはどんな物語が秘められているのか。「ガムで香る」仕組みに対する関心もさることながら、プロジェクトの成功の秘密そのものに迫りたいと思い、カネボウフーズ株式会社にお話をうかがいに行きました。お相手をしてくださったのは、菓子事業部開発グループで主任をつとめる西 絵里香さんです。text by NAKANO Kaoriphoto by TATSUNO Rinガム棚で異彩を放つ「黒と赤」。希望小売価格150円(税...
第9回 「オトコ香る。」プロジェクトに迫る(2)
大ヒット“香り”ガム「オトコ香る。」プロジェクト その秘密に迫る-2text by NAKANO Kaoriphoto by TATSUNO Rin左/カネボウフーズ 西 絵里香さん時代を拾う感覚+研究成果の表現=10億円商品中野香織 では、少し時代をさかのぼって、「オトコ香る。」の母体になった「フワリンカ」の開発のお話を聞かせてください。西 絵里香さん 「フワリンカ」発売の3年前、社内にSWATという特命チームができたんですよ。中野 アメリカ映画にでてくる、あのSWAT (Special Weapons And Tactics)ですか? 警察の特殊部隊の。西 そうです。研究所の人間と開発の人間が、部署を越えて手を組んで、何か一つ、10億円商品を作りましょう、ということで特別に作られたプロジェクトなんです。中野 10億円商品?西 1年間で売り上げが10億円を超えると、その商品はヒット商品と呼ばれます。中野 知りませんでした……。それでSWATはどんなものを作ろうと?西 開発の人間は...
第10回 「オトコ香る。」プロジェクトに迫る(3)
大ヒット“香り”ガム「オトコ香る。」プロジェクト その秘密に迫る-3text by NAKANO Kaoriphoto by TATSUNO Rin希望小売価格150円(税込158円)店頭インパクト勝負の「都会型」ガム中野香織 その「いいコ」が店頭に並んだあとのお話を、次はお聞かせいただきたいのですが。西 絵里香さん はい。ふつう、ガムは一週間に同じ店で10個売れればいいんですよ。10個売れれば、ずいぶん売れる方だと思います。中野 1週間に10個……。すごく少ないような気もしますが、そんなものなんですか。西 ガムは嗜好品ですからね。飲料のように、せっぱつまって買うということがない(笑)。ところがね、初代「オトコ香る。」は40個以上売れた、という店もあったんです。想定シミュレーションをはるかに超えていたので、てんやわんやでした。中野 宣伝はどのように?西 それが、ほとんど宣伝費を使わずに。インターネットや朝のテレビで話題が広まったことが大きかったようです。それに、ガムってCMの効果を...
第11回 調香師は、アーティスト
パフューマー新間美也さんと、“日仏フレグランス文化” の違いを考えるその1 調香師は、アーティスト『恋は香りからはじまる』 (飛鳥新社) というエッセイを読み、フリーランスの調香師としてパリと静岡を拠点に活躍する日本女性がいることを知りました。新間美也 (しんまみや) さんです。日本ではまだ珍しいかもしれない 「調香師」 の仕事とはどのようなものなのか、フランスと日本の香水に対する認識はどうちがうのか、また自分の魅力を演出することにかけてフランスの女性が抜きん出ている理由は何なのか……。聞いてみたいこと、話し合ってみたいことを山のように抱えて、新間さんに会いにいきました。text by NAKANO Kaoriphoto by Jamandfix飛鳥新社にて。新間さんが手にしているのが自著『恋は香りからはじまる』です情熱と根気で獲得する、絶対嗅覚中野香織 はじめまして。新間さんのエッセイ、楽しく拝読しました。お目にかかれて光栄です。今日は新間さんご自身のキャリアや香水観をはじめ、パ...
第12回 日本とフランスにおける香水の意味
パフューマー新間美也さんと、“日仏フレグランス文化” の違いを考えるその2日本とフランス、それぞれの文化における香水の意味日本とフランスのフレグランス文化の違いを調香師の新間美也さんと考える第2回。前回は新間さんのプロフィールをお聞きしましたが、今回はフランス人と日本人の国民性の違いからアプローチを試みます。text by NAKANO KaoriPhoto by Jamandfix新間さんが書かれた 『恋は香りから始まる』 と、おみやげにいただいた、新間さん調香の <さくら> の香りのハンドクリームどこにもないアリュールを求めるフランス、横並びのフェロモン好き日本中野香織 パフューマーの立ち位置が違えば、香水文化が違ってくるのも当然ですが、では新間さんの目には、日本の香水をめぐるカルチュアはどのように映りますか?新間美也さん 日本で出ている香水カタログを妹に送ってもらったりしているんですけど。う~ん、1年後2年後にはぜったいなくなっているなと思うものが並んでますね (笑)。日本独...
第13回 香水文化低迷の背景に広がる習慣の違い
パフューマー新間美也さんと、“日仏フレグランス文化” の違いを考えるその3香水文化低迷の背景に広がる、習慣の違い香りが文化として生活にしっかり根づいているフランス人と、メディアに乗せられて一過性のブームとして香りを扱う日本人。3回目の今回は、それを踏まえて、日常の習慣の違いを考察します。text by NAKANO KaoriPhoto by Jamandfix新間さんの商品の 『香り箱 (桐箱入り) 』 です耳たぶにひとしずくは、ハグ文化あってこそ!?中野香織 フランス的な香水のつけ方ってあるじゃないですか、耳たぶに一滴とか。あれね、挨拶の習慣が違う日本では有効じゃない気がするんですよ。新間美也さん どういうことですか?中野 フランス人は近づいてほおに擬似キスをしたり、ハグしたりという挨拶をふつうにするから、近づくと顔まわりからふわっとフレグランスが香ることになりますよね。でも日本人はそんなに近づくことは少ない。耳にかすかにつけても誰も気づいてくれないじゃん、っていうのがある (...
第14回 香りの雑貨、香水のトレンドの現在とこれから
パフューマー新間美也さんと、“日仏フレグランス文化” の違いを考えるその4香りの雑貨、香水のトレンドの現在とこれからさて、3回にわたって調香師の新間美也さんと香りにまつわる文化を語り合ってきました。最終回の今回は、新間さんの作品を紹介しながら、香水のこれからを見つめます。text by NAKANO KaoriPhoto by Jamandfix桜の花にインスピレーションを受けた 『香り玉・さくら』タブーをおかして新境地に挑む、フレーバーグリーンティー中野香織 新間さんは、香水以外にも、生活を味わいつくすための香りの雑貨をたくさん手がけていらっしゃるのですが……たとえば、このコロコロした真珠のような粒がたくさん入った箱はなに?新間美也さん 香りの粒子で、木の箱を開けておくと、部屋が香ります。中野 ポプリの和風バージョンのようなもの?新間 洋風と和風のあいだぐらいでしょうか (笑)。キモノ地で作ったにおい袋もあります。中野 レターセットも素敵ですね。一緒にはさむ花びらの紙に、香りがつ...
鏡リュウジ×中野香織 新春SPECIAL対談(4)
鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(4・最終回)「私は双子座なんですけど……」文=中野香織Photo by Jamandfix2008年のファッション世相、そしてこれから起こる大革命中野 では最後に、2008年を鏡さんに占っていただきましょう! たとえばファッションでは、どんなものが流行りそうですか?鏡 木星が山羊座に入るお話はいたしましたね。伝統・格式が拡大されるというイメージから、シックなもの、社会性のあるもの、黒、伝統と格式をもつもの、が出てくるのではないかと思います。中野 「マナーの年」が導かれたのと同じ論理ですね。鏡 ただ、流行って木星の星座を先取りするんですよ。だから、2008年の春夏からはみずがめ座のイメージが強く出てくると思います。中野 みずがめ座のイメージって?鏡 未来志向的だったり、人工的だったり。中野 ああ、フューチャー、テクノって感じでしょうか。最近は金属の光沢をとりいれたテクノっぽい繊維が増えていますが、それが大ブレークするというのは大いに...
鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(1)
鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(1・全4回)「2008年はマナーの年!?」縁は奇なもの。『ハーパース・バザー』の副編集長でOPENERSにもコメントを寄せている東野香代子さんから「占星術の鏡リュウジさんによれば、2008年はマナーの年ですって」と教わりました。2008年はマナーの年!? いったいなにを根拠にそうなるのか?遠回りに憶測するより、鏡さんご本人に教えてもらうのが早かろうと思い、連載をもつ共通誌というご縁で『FRaU』副編集長のWさんに仲介してもらったところ、鏡さんはたいへん親切にメールで「2008年はマナーの年」の占星術的根拠をレクチャーしてくださったのでした。<占星術はイメージの解釈という知的なゲーム>という鏡さんの、世の事象に対する解釈はあまりにもおもしろく、その一部は朝日新聞の「コロモのココロ」という欄に書いたのですが、<知的ゲーム>の豊かさすべてを伝えきれる紙幅があるはずもない。機会があればもっとじっくり占星術的発想を教わりたい……と思っていま...
鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(2)
鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(2・全4回)「人はなぜ占いをチェックしてしまうのか?」文=中野香織Photo by Jamandfix星占いは何のためにあるのか中野 それにしても不思議なのは、占いが関わらない文化って、ないじゃないですか? 人類の歴史には必ず占いが寄り添っていて。なぜ人は占星術に頼ってきたのでしょう?鏡 占星術だけが特別というわけじゃないんですが、広い文化のなかで占星術がこれだけ陣地を占めたことがすごいと思いますね。中野 しかも、科学が発達すればするほど占い需要も高くなるように見える。私自身、雑誌を買うと、まず最初に見るのが「今月の星占い」のページなんです。鏡 それはうれしいですね。中野 で、ふむふむと読んで元気がでたり希望をもったりするんですけど、雑誌を閉じると書かれていたことを忘れちゃうんです(笑)。鏡 覚えてられると困るんですよ(笑)。中野 そんな(笑)。私自身、自分のこの行動がよくわからない。すぐお告げを忘れてしまうのに、なぜ占いをチェッ...
鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(3)
鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(3・全4回)「コンピュータが及ばない領域」文=中野香織Photo by Jamandfixタロットカードの楽しみ方中野 鏡さんがお書きになった「ソウルフル タロット」は、カードもついている豪華版。10歳のころタロットにめぐりあったのがこの世界へのきっかけとおっしゃっていましたが、タロットのどういうところにのめりこまれたのでしょう?鏡 タロットは占い用のカードだと一般に思われているんですが、もとは完全にゲーム用というかギャンブル用だったんです。中野 そうなんですか!?鏡 トランプの原型になるカードが14世紀にイスラム世界からヨーロッパに入ってきて、それがトランプとタロットに分かれて進化してきたのです。15世紀のミラノでトランプに絵札を加えるということを発明した人がいて、それがタロットの原型になりました。中野 古い歴史をもつんですね。カードは全部で何枚あるんですか?鏡リュウジさん鏡 スタンダードになっているのは、78枚です。当時いろん...
番外編 スペシャル トム・フォード
番外編 スペシャル トム・フォードフレグランス道場、番外編は来年に日本でも発売されるTOM FORDの香り。12種類もが居並ぶさまは壮観です。それぞれは単体でも十分な完成度ですが、使う人が自由に「調香」して楽しむこともできるのだそう。文=中野香織Photo by JAMANDFIXこれぞラグジュアリー、という圧倒的迫力キリストの使徒の数、ギリシア・ローマ神話にでてくる主神の数、新エルサレムの門と柱の数、羅針盤の方位の数、1年の月の数……。12という数は、どこか宇宙の秩序や心霊的安心とつながるような、「完璧感」を与える。完璧主義のトム・フォードも、フレグランスコレクション「プライベート・ブレンド」を創るにあたり、12種類をいちどに出した。魔法の薬瓶のような重いラリック製のボトルの中には、濃厚で絢爛豪華な12の香り。こっくりとリッチでアグレッシブで、瓶を開けたとたん、女豹が真正面から容赦なく挑んでくる感じ。とはいえ、その後、女豹は心地よさそうに暖炉のそばで横になる……のだが。優雅な退廃...