鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(2)
Beauty
2015年3月18日

鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(2)

鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(2・全4回)
「人はなぜ占いをチェックしてしまうのか?」

文=中野香織Photo by Jamandfix

星占いは何のためにあるのか

中野 それにしても不思議なのは、占いが関わらない文化って、ないじゃないですか? 人類の歴史には必ず占いが寄り添っていて。なぜ人は占星術に頼ってきたのでしょう?

 占星術だけが特別というわけじゃないんですが、広い文化のなかで占星術がこれだけ陣地を占めたことがすごいと思いますね。

中野 しかも、科学が発達すればするほど占い需要も高くなるように見える。私自身、雑誌を買うと、まず最初に見るのが「今月の星占い」のページなんです。

 それはうれしいですね。

中野 で、ふむふむと読んで元気がでたり希望をもったりするんですけど、雑誌を閉じると書かれていたことを忘れちゃうんです(笑)。

 覚えてられると困るんですよ(笑)。

中野 そんな(笑)。私自身、自分のこの行動がよくわからない。すぐお告げを忘れてしまうのに、なぜ占いをチェックしてしまうのか? 星占いって何のためにあるんでしょう?

鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(2・全4回)<br><br>「人はなぜ占いをチェックしてしまうのか?」

鏡リュウジさん

 自分自身と外側の世界がつながっているという感覚を与えてくれるもの……でもありましょうか。

中野 なるほど!

 考えてみたら、占いって役に立たない情報ばっかりでしょう? 過去こうだったでしょう、ってことばかりで。これからどうなるのかということが大事なんですが、それはあまり当たらなかったりする(笑)。

中野 たしかに。でも過去のことをなにか一つでも言い当てられると「うんうん、当たってる」と満足したりして……。

 過去のことを言われても意味がないのだけど、過去は意味のない積み重ねではなく、それがなにか天体の運行、自然界の流れとシンクロしていると感じられることじたいに、おもしろさがあるんです。つながることのおもしろさ。内界と外界がつながることのおもしろさに、占星術の醍醐味があるのです。

中野 ……目からウロコの考え方です。

 理不尽な運のよしあしや偶然だらけの人生になにかきっと意味があるはずだ、と考えたときに、それを外界の動きとのつながりで説明してくれるのが、占いなのです。

中野 ものすごく納得。一種の文学的な考え方でもありますね。自分のなかで起こっていることと外界のなにかをつなげるってことから、文学でいう奇想(conceit)という手法を連想しました。意表をつく比喩でふたつのことを説明するという……。実はエッセイを書くときにもこの手法を使うことが多いんです。一見関係なさそうな2つのネタにムリヤリ相似性を見つけることで、それぞれのできごとに新しい意味を生む。そうか、やっていることは意外と似てますか? ちがうか(笑)。

占いライティングとバーナム効果

中野 そういえば、占いって書いてあることが抽象的ですよね? 誰もが今の自分のことを投影できるように書いてある。

 心理学でいう、「バーナム効果」というものです。誰にでも該当するような一般的な記述を、自分だけにあてはまる正確なものととらえてしまう心理学の現象をいいます。アメリカの興行師バーナム(Barnum)という人が実験したことにちなんでこう呼ばれます。

中野 血液型による性格判断なんてのもそうでしょうかしらね。全部自分のことが書いてある、と誰でも思うようなことが書いてあったりする。じゃあ、占い師の能力には、抽象的なことをいかに上手に書けるかというスキルも求められるわけですか?

 占いライティングの領域ではそういうこともあるかもしれませんが。

中野 占いライティング!

 でも、抽象的すぎてもおもしろくないんですよ。具体的な情報を入れ込みながらやっていくことが大事で。

中野 占い師でも鏡さんのように人気がものすごく出てカリスマになる人と、ぱっと出てすぐいなくなる人がいるじゃないですか。その違いってどこから生まれるんでしょう?

 なんでしょうね。運のよしあしですかね(笑)。

イギリスのアカデミックな占星学と日本における「占い師になりたい」ブーム

中野 鏡さんご自身は、どうして占いの世界に入られたんですか?

 10歳の頃にタロットに出会って、ぐっとそういう世界にのめりこんでいきました。魔術とかオカルトとか、ハリーポッター的世界ですね。そのなかでいちばんニーズが多かったのが、占いなんですよ。魔術やオカルトってヨーロッパでは「もうひとつの知の伝統」なんですよね。

中野 学問体系にもなってますね。

 日本では世俗的な解釈しかしませんが、イギリスではオカルティズムとつながってアカデミックにやっています。

中野 連綿と……。

 いえ、連綿とではないんです。19世紀からですね。大学でも取り扱われはじめたのはここ3、4年のことですよ。いまはカルチュラル・アストロノミー&アストロロジー(cultural astronomy and astrology、文化天文学と占星術)でMA(修士号)がとれます。ケント大学では宗教体験研究コースのひとつとしてディヴィネーション&コスモロジー(divination & cosmology、易断と宇宙論)をとりいれています。

中野 ディヴィネーションって、divineが入っているところをみると、神のお告げという感じですか? 昔は神のお告げのように何かを言えた人がまつられたりしたようですが?

 占いは神々からのメッセージだったんですよ。バビロニアの星の神々を信仰した末裔が、今の占星術です。

中野 日本ではどういう立ち位置を占めるんでしょう? 占星術の学校なんて、あるんでしょうか?

 占いの専門学校というか塾のようなものがありますね。カルチュアセンターでもやっているし。

鏡リュウジ×中野香織 2008 SPECIAL対談(2・全4回)<br><br>「人はなぜ占いをチェックしてしまうのか?」

中野 占い師になりたい、という人は多いのですか?

 困ったことに、多いんです(笑)。

中野 どういう動機からでしょう? 霊感があるとか?

 どうやらそうでもなくて、アロマセラピストやネイリストになりたいという感覚とちかいように感じられます。

中野 アロマセラピストかネイリストか占い師!?

 そういう感じがしますけど。若い女性が占い師になりたいというときにはとくに。オーラソーマも占いですから。

中野 ああ、言われてみれば。人生相談やカウンセラーのような仕事をする人たちでもある。私のいきつけのネイルサロンの方も個人的な事情をよく知っていたりしますし(笑)。

 昔はひげをはやしたおじいさんのような人が暗いところでやる仕事、というイメージだったのですが。リフレクソロジーなんてものにしても、英国式とかアロマとかがでてくる前は、あんまのおっちゃん、指圧の人が仕方なくやってらっしゃる仕事というイメージがありましたよねえ。

中野 いまでは占いもリフレクソロジーもすっかりおしゃれになって、女性の憧れの仕事。人の心に寄り添う現代的な「癒し」を与える仕事にもなってきたのですね。

鏡リュウジさんから新春プレゼント!への応募は 2008年2月15日(金)で締め切りました。
鏡リュウジさん著・監修の『ソウルフル タロット』(説話社)のサインプレゼント当選は、発送をもってかえさせていただきます。
多くのご応募ありがとうございました。(オウプナーズ編集部)

撮影協力|株式会社サイバード

鏡リュウジ公式サイト|http://www.ryuji.tv/

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